LAV-R (Light Armored Vehicle – Recovery)

LAV-R (Light Armored Vehicle - Recovery)

概要と開発の背景

LAV-R(Light Armored Vehicle – Recovery)は、1980年代初頭にスイスの Mowag 社が開発した Piranha I 8×8装甲車をベースとし、カナダの General Motors Diesel Division(現 General Dynamics Land Systems-Canada)が製造・開発を手掛け、1986年よりアメリカ海兵隊(U.S. Marine Corps)に導入された8×8輪駆動の水陸両用装甲回収車である。開発の背景には、1980年代のアメリカ海兵隊における急速展開部隊(RDF)構想のもと、前線で高機動進撃を行う軽装甲偵察(LAR)部隊に追従し、不具合や行動不能におち入った車両の回収・野外修復を担う専用アセットの獲得ニーズが存在した。従来の非装甲回収車や重装軌回収車(M88等)では、自力水上航行能力を持つ LAV-25 等の前線戦闘小隊の進撃速度や渡河作戦に追従できず、過酷な前線環境での防御力や悪路走破性能にも課題を抱えていた。このため、主力戦闘車と同一の8×8輪駆動シャシーを活用し、現地での牽引・引揚げ作業やアセンブリ換装を可能にする後方整備支援専用車両として LAV-R が構築された。

構造と技術的特徴

構造上の最大の特徴は、LAV-25 の25mm砲塔を排したハイルーフ構造の車体中央に、360度全周旋回可能な油圧式ブームクレーン(吊り上げ能力約3t / 6,600lbs〜9,000lbs)を備え、車体後部に最大30,000lbs(約13.6t)の動的牽引力を発揮する高力ウインチと固定用アウトリガー、車体下部用スペード(アンカー)を統合している点にある。クレーン作業時には車体側面の側部アウトリガーを展開して車体を強力に安定させ、転倒したLAVの安全な引き起こしや、現場でのパワーパック(エンジン)吊り上げ・交換作業を迅速に行える。車体後部の作業区画には、アーク溶接機や発電機(10kW)、大型作業台、各種工具類、作業灯が整然と完備されている。パワートレインには275hpを発揮する Detroit Diesel 6V53T ディーゼルエンジンと Allison MT653 5段自動変速機、選択式8×8全輪駆動機構を踏襲し、最高速度100km/h以上の地上走破性能と車体後部プロペラによる水上航行能力(約10km/h)を備える。自衛兵装として車長ハッチ部に7.62mm M240E1/M240B機関銃1挺をピントルマウントで装備する。改修型の RA1 / RA2 では、ボルトオン増加装甲の追加による14.5mm重機関銃弾対抗防護力の強化、サスペンション強化、最新C4ISR通信機器が組み込まれている。

運用実績と評価

1986年の部隊配備開始以降、LAV-R はアメリカ海兵隊の全軽装甲偵察大隊(LAR Battalion)の本部・サービス中隊に配備(大隊あたり4両編成等)され、軽装甲部隊全体の稼働率を下支えする中核回収アセットとして集中的に運用された。実際の運用においては、1989年のパナマ侵攻(Operation Just Cause)を皮切りに、1991年の湾岸戦争(Operation Desert Storm)、2000年代のイラク戦争(Operation Iraqi Freedom)やアフガニスタン紛争へ投入された。広大な砂漠や泥濘地において、足回り損傷やスタック、横転により行動不能となった LAV-25 や LAV-AT、LAV-M 等の戦闘車両へ即座に接近し、強力なウインチとアウトリガーを用いて安全に救出・牽引した実戦実績が高く評価された。前線でのエンジン換装や溶接修理を完遂できる「野外整備工場」として高い頼もしさを実証した。現在、後継となる8×8輪駆動水陸両用車 ACV-R(回収型)や次世代装甲偵察車(ARV)構想への移行が進められているものの、各部隊で第一線での運用の歴史を刻み続けている。

Official Name (正式名称)LAV-R (Light Armored Vehicle – Recovery)
Country of Origin (開発国)イタリアのIveco社製「SuperAV」プラットフォームをベースにアメリカ合衆国で共同開発
Manufacturer (製造メーカー)BAE Systems / Iveco Defence Vehicles (IDV)
Designed (設計年)LAV-Rのベースとなる装甲車プラットフォームの設計開発およびミッション役割車(MRV)としての開発契約が締結された設計年は1981年であり、製造・試験プロセスを経て最初の機体が受領され公式に運用が開始された年は1986年である
Primary Operators (主な運用組織)アメリカ合衆国:アメリカ海兵隊(各軽装甲偵察大隊[Light Armored Reconnaissance Battalion / LAR Battalion]の本部・サービス中隊[H&S Company]および各ライン中隊に配備され、LAV-25ファミリーの戦術的回収・現場修理を担う唯一の軍種として運用)※米国陸軍にて過去に一時的な借用運用等が存在
サウジアラビア:サウジアラビア国家警備隊(Saudi Arabia National Guard / SANG:米国からの対外有償軍事援助[FMS]プログラムを介して導入。クレーンおよびヘビーウインチを備えたLAV-R完成システムを公式に受領し、機械化旅団の随伴回収車輌として運用)
オーストラリア:オーストラリア陸軍(Australian Army:ピラーニャ I / LAV-25をオーストラリア仕様にした「ASLAV(オーストラリア軽装甲車)」のファミリーとして、同一の油圧ブームクレーン、回収ウインチ、車体構造を持つ装甲回収車型「ASLAV-R」を各騎兵連隊等にて運用)
ニュージーランド:ニュージーランド陸軍(New Zealand Army:LAV IIIプラットフォーム(カナダ製仕様)をベースとした「NZLAV」ファミリーを導入。そのうち 3両の専用設計型装甲回収バリアント(LAV-R / Recovery Vehicle)を公式保有し、戦術部隊に配備・運用)
カナダ:カナダ陸軍(Canadian Army:LAV-25(LAV II)と同一の8×8輪駆動車体および同一のクレーン・ウインチコンポーネントを共有して製造された直系同型品「バイソン装甲回収車[Bison Armoured Recovery Vehicle]」を 32両保有・運用)
Crew / Capacity (乗員および兵員輸送数)3名 (Vehicle Commander、Driver、Recovery Operator) + 車体後部の作業用コンパートメントに 2名 の作業要員/乗員[Rigger / Passengers]を臨時収容して運用可能、最大搭乗可能員数は計 5名
Combat Weight (戦闘重量)27,920 lbs (12,660 kg / 12.66 metric tons)
Dimensions (寸法: 全長/全幅/全高)W: 98.4 inches (2.50 m)
L: 290.4 inches (7.37 m) ※ブームクレーン後方格納時(クレーン前方格納時の車体長は 256.0 inches / 6.50 m)
D: 109.0 inches (2.76 m) ※ブームクレーン後方格納時(クレーン前方格納時の全高は 106.0 inches / 2.69 m)
Armor (装甲の詳細: 複合装甲、ERA、APSの有無)高硬度圧延均質鋼製溶接車体(Welded rolled hard homogeneous steel armor / MIL-A-46100仕様)。基本装甲厚は 4.71 mm 〜 9.71 mm。初期型において複合装甲および爆発反応装甲(ERA)の装備はなし(※後年のA1/A2改修によりLAST等のセラミック系追加アップリケ装甲キットが適応可能となった)
Main Armament (主武装)None
Secondary Armament (副武装)1x 自衛用 M2407.62mm 機関銃(車長用キューポラ上の Pintle mount に配置、携行弾数:総計 1,000発)、2x M257 4連装煙幕弾発射機(Smoke Grenade Launchers、計8基 のディスチャージャー)
Engine (エンジン出力 hp/kW)General Motors 6V53T (6気筒2サイクル・ターボチャージャー・スーパーチャージャー付きV型ディーゼル)
出力:Gross 275 hp @ 2,800 rpm (約 205 kW)
Max Speed (最高速度: 整地/不整地)Paved (整地): 62 mph (100 km/h)
Unpaved (不整地): 不明
水上巡航速度(ツイン・プロペラ推進時): 6.5 mph (10 km/h)
Operational Range (航続距離)舗装道路巡航時において最大約 400 miles (約 640 km)

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

PR:関連商品

画像の引用元
  1. By Commander, U.S. Naval Forces Europe-Africa/U.S. 6th Fleet – 151020-N-BS486-047, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=72209705
  2. Cpl. Grant Schirmer / U.S. Marine Corps. (2024). 3rd LAR conducts reconnaissance operations during Steel Knight. DVIDS, Photo ID: 8797482. Public Domain.

上部へスクロール