
概要と開発の背景
11式装軌車回収車は、2000年代後半から2010年代初頭にかけて日本の防衛省技術研究本部(現・防衛装備庁)の要求のもと、三菱重工業(Mitsubishi Heavy Industries, Ltd.)によって開発され、2011年(平成23年)に陸上自衛隊へ制式調達が開始された装軌式の重回収・整備支援車両である。1970年代から運用されていた老朽化した「78式戦車回収車」の更新と、2010年代からの最新型「10式戦車」(全備重量約44t)の全国的な導入配備に合わせて開発がスタートした。前級の「90式戦車回収車」(約50t)は高い能力を備えていたものの、車体サイズや重量が大きく、本州や九州など全国規模での機動展開や輸送性において制約が存在した。本機は戦車のみならず、自衛隊が運用する多種多様な履帯式車両(自走砲や装甲戦闘車等)の救援・整備全般を担当することを目的としたため、「戦車回収車」ではなく「装軌車回収車」という名称が与えられた。10式戦車部隊と完全に行動をともにし、高い足回りの機動力と整備支援力を両立させる更新ニーズから制式化された。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、10式戦車の高剛性車体およびパワーパック(1,200馬力級水冷4ストロークV型8気筒ディーゼルエンジンと静油圧式無段変速機)を流用・最適化し、車体右前部に最大約23t〜25t以上の吊り上げ能力を持つ旋回式ブームクレーン、車体内蔵の最大約45tの強力な油圧ウインチを一体化統合している点にある。足回りには10式戦車と同様の全輪油気圧サスペンションを採用しており、車高調整や傾斜姿勢制御を行うことで、大重量物品の吊り上げや強力な牽引作業時における車体の接地安定性を飛躍的に高める構造となっている。車体後部にはクレーン使用時の踏ん張りを支える油圧式アウトリガーが装着されている。車体上部には自衛用として12.7mm重機関銃および8連装発煙弾発射機、レーザー検知器を配置し、最新のC4Iネットワークシステムを統合することで、前線の危険領域下においても乗員の安全を確保しながら整備作業を実行できる配慮がなされている。
運用実績と評価
2011年の調達開始以降、陸上自衛隊の10式戦車を配備する各師団・旅団の戦車直接支援隊(後方支援連隊整備大隊等)や富士教導団、陸上自衛隊武器学校などへ配備・運用されている。実際の野外演習や整備支援現場においては、10式戦車の約4t級におよぶ一体型パワーパックを現地で即座に吊り上げて交換・整備する作業実効性や、悪路や泥濘地で行動不能となった40t〜50t級の装軌車両を安全かつ迅速に脱出・牽引できる高い引き揚げ能力が具体的に高く評価された。従来の78式戦車回収車からの更新を確実に進めるとともに、日本全国の日本本土・島嶼部における機動展開に対応する高い道路交通適合性と走破性能を実証した。10式戦車をはじめとする各種装軌式装備の第一線部隊と行動をともにし、現代自衛隊の地上機動戦力における稼働率の維持と後方整備体制を支える主要なプラットフォームとして不可欠な存在となっている。
| Official Name (正式名称) | 11式装軌車回収車 / Type 11 Armored Recovery Vehicle |
| Country of Origin (開発国) | 日本 |
| Manufacturer (製造メーカー) | 三菱重工業 |
| Designed (設計年) | 2000年代後半に10式戦車支援用として開発が進められ、2011年に陸上自衛隊で制式化・運用開始された装甲回収車 |
| Primary Operators (主な運用組織) | 日本:陸上自衛隊(戦車連隊・機甲科部隊・後方支援連隊戦車直接支援隊など) |
| Crew / Capacity (乗員および兵員輸送数) | 3名 |
| Combat Weight (戦闘重量) | 43.0 t |
| Dimensions (寸法: 全長/全幅/全高) | W: 3.24 m, L: 7.70 m, D: 3.10 m |
| Armor (装甲の詳細: 複合装甲、ERA、APSの有無) | Nano-crystal steel and modern composite modular armored protection (ナノ結晶鋼および現代的な複合モジュラー装甲防護を採用、爆発反応装甲(ERA)は非装着だが、脅威度に応じて前面・側面の装甲モジュールを取り外し・アップグレード可能な先進設計) |
| Main Armament (主武装) | なし (戦車砲などの主砲は非搭載。車体右前部に最大吊上荷重約25tのブーム・クレーン、および最大牽引力約38tクラスの強力な回収ウインチを装備) |
| Secondary Armament (副武装) | M2HB 12.7mm Heavy Machine Gun(車長キューポラに配備、自衛用)) |
| Engine (エンジン出力 hp/kW) | Mitsubishi 4VA water-cooled 4-stroke V-type 8-cylinder電子制御コモンレール式付直接噴射ターボチャージャー付ディーゼル, 1,200 hp / 883 kW (※10式戦車と共通の超小型・高出力パワーパックを搭載) |
| Max Speed (最高速度: 整地/不整地) | Paved: 70 km/h, Unpaved: Approx. 40–45 km/h (※水圧無段階変速機(HMT)と無限軌道(履帯)により、10式戦車と完全に同等の猛烈な急加速・スラローム・不整地追従性を誇る) |
| Operational Range (航続距離) | 350 km |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
PR:関連商品
画像の引用元
- By Rikujojieitai Boueisho (陸上自衛隊 / Japan Ground Self-Defense Force) – http://www.mod.go.jp/gsdf/fan/photo/equipment/index.html, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=55171963










