UH-1N Iroquois (Twin Huey)

UH-1N Iroquois (Twin Huey)
ベトナム戦争時の塗装を再現したアメリカ空軍のUH-1N Iroquois (Twin Huey)

概要と開発の背景

ベル UH-1N イロコイ(Bell UH-1N Iroquois、通称:ツインヒューイ)は、1960年代末にアメリカの Bell Helicopter(現 Bell Textron Inc.)が開発し、1971年よりアメリカ軍およびカナダ軍へ配備された双発多用途ヘリコプターである。開発のきっかけは、ベトナム戦争で多用された単発エンジンの初期型ヒューイシリーズ(UH-1D/H等)における洋上・ジャングル越え運用時のエンジン故障に対する冗長性不足と、高標高・高気温環境下での出力不足の解消ニーズであった。特にカナダ軍(CUH-1Nとして要求)およびアメリカ海兵隊・空軍・海軍から、片方のエンジンが停止しても飛行を継続できる高い安全性と離陸能力を備えたツインエンジン仕様の強化型軽輸送ヘリコプターの調達要求が出されたことで、単発のモデル205(UH-1H)の胴体をベースに双発パワープラントを統合した発展型として開発がスタートした。

構造と技術的特徴

構造上の最大の特徴は、カナダの Pratt & Whitney Canada 製 T400-CP-400(民間名:PT6T Twin-Pac)と呼ばれる2基のターボシャフトエンジンを1つの減速ギアボックスに結合した双発パワープラント機構を採用している点にある。これにより合計約1,800馬力の出力を発生させ、片方のエンジンに不具合が生じた場合でも自動的にもう一方のエンジンが緊急最大出力を発揮して飛行を維持できる極めて高い生存性と信頼性を実現した。メインローターには伝統的な2翔半固定ステビライザーバー付ローターシステムを継承し、堅牢でシンプルな構造と独特の打撃音(ブレードスラップ音)を特徴とする。キャビン部は全長が引き伸ばされたモデル205の胴体を基礎とし、両側面に配置された大型スライドドアにより最大13名の乗員や傷病者用担架6床、過酷な環境下での大型貨物の積み下ろしを容易にしている。全全候・夜間計器飛行(IFR)に対応するアビオニクスも統合された。

運用実績と評価

1970年代の制式採用以降、UH-1N はアメリカ空軍、アメリカ海兵隊、アメリカ海軍、カナダ軍(CUH-1N / CH-135)をはじめ、世界数十カ国の軍事・政府機関で広く導入された。実際の運用においては、ベトナム戦争末期から湾岸戦争、アフガニスタン紛争、イラク戦争に至るまで、前線での要員輸送、緊急患者後送(MEDEVAC)、機雷・基地警備、ならびに核ミサイルサイロ網(ICBM基地)の警戒監視ミッションへ投入された。単発機と比較して劇的に高まった機械的安全性と高い耐候性、過酷な環境下における抜群の維持耐久性が具体的に評価された。さらに、本機の双発成功は民間型 Bell 212 や4翔ローター型 Bell 412、ならびに米海兵隊の最新型 UH-1Y Venom への発展の技術的基盤となった。近年は後継の MH-139A Grey Wolf 等への交代が進む一方、現在においても米空軍の地球規模攻撃軍団(AFGSC)や各種救難飛行隊で現役運用が続けられている。

Official Name (正式名称)UH-1N Iroquois (Twin Huey)
米軍による正式名称は「イロコイ(Iroquois)、現場の兵士たちが使い始めた俗称が「ツイン・ヒューイ」(初期型が単発エンジンのヒューイであったため、双発となったUH-1Nは呼び分けのためツインがついたとされる)。なお、この俗称があまりにも有名になりすぎたため、のちに型式名自体が「HU-1」から「UH-1」に逆変更され、ベル社も公式にヒューイの名を使うようになった。
Country of Origin (開発国)アメリカ合衆国 / カナダ
Manufacturer (製造メーカー)Bell Helicopter Company
Designed (設計年)1968年にカナダ政府との協力のもと開発が承認されて設計プロジェクトが開始、1969年4月に初飛行を行った。運用開始年は1970年であり、同年にアメリカ空軍に導入されて実戦部隊への配備が開始された。
Primary Operators (主な運用組織)アメリカ合衆国:アメリカ空軍(各ミサイル航空団や救難飛行隊などでUH-1Nを現役運用)、国土安全保障省(DHSにおいてUH-1Nを現役運用)
オーストリア:オーストリア空軍(第3飛行連隊所属の軽輸送ヘリコプター飛行隊において、ライセンス生産品であるAgusta-Bell 212を現役運用)
サウジアラビア:サウジアラビア空軍(第14飛行隊において、ライセンス生産品であるAgusta AB-212を現役運用)
イタリア:イタリア海軍(海軍航空隊において、派生品であるライセンス生産の対潜・対艦仕様機AB 212ASWを現役運用)、イタリア陸軍(陸軍においてライセンス生産機AB 212を現役運用。なお、イタリア空軍のHH-212Aは2024年2月に退役)
ギリシャ:ギリシャ海軍(海軍航空コマンド所属の第1海軍ヘリコプター飛行隊において、派生品であるライセンス生産の対潜・対艦仕様機AB 212ASWを現役運用)
スペイン:スペイン海軍(海軍航空隊において、近代化改修されたライセンス生産機AB 212を現役運用)、スペイン陸軍(陸軍航空隊において、ライセンス生産機AB 212を現役運用)
ペルー:ペルー海軍(海軍航空隊において、派生品であるライセンス生産の対潜・対艦仕様機AB 212ASWを現役運用)
トルコ:トルコ海軍(海軍航空隊において、派生品であるライセンス生産の対潜・対艦仕様機AB 212ASWを現役運用)
ベネズエラ:ベネズエラ海軍(海軍航空隊において、派生品であるライセンス生産の対潜・対艦仕様機AB 212ASWを現役運用)
イラン:イラン海軍(海軍航空隊において、派生品であるライセンス生産の対潜・対艦仕様機AB 212ASWを現役運用)
Crew (乗員)3名(パイロット、コパイロット、フライトエンジニア)
任務や運用組織により4名(パイロット 2名、クルーチーフ 1名、空中銃手 1名)
積載能力として兵員を最大 13 -14名、または 6 – 8名の戦闘装備兵員、あるいは担架患者6名の輸送が可能
Dimensions (寸法):全長、全幅(翼幅)、全高L (全長): 17.44 m (57 ft 3 in) (メインローターおよびテールローターを含まない機体長ボディとしては 12.69 m (41 ft 8 in))
W (全幅): 2.87 m (9 ft 5 in) (メインローター直径を全幅とする場合は 14.63 m (48 ft))
H (全高): 3.90 m (12 ft 10 in) (資料により 4.40 m (14 ft 5 in) とするデータも存在)
Empty / Max Takeoff Weight (自重 / 最大離陸重量)自重: 約 2,722 kg (6,000 lb)
最大離陸重量: 4,763 kg (10,500 lb)
Powerplant (エンジン):型式、推力型式: 1x Pratt & Whitney Canada T400-CP-400 ターボシャフトエンジン (2基のエンジンコアで1つの複合ギアボックスを駆動する PT6T-3 / T400 Turbo Twin-Pac パワープラントシステム)
推力: 総出力 1,250 shp (資料により総出力 1,800 shp とするデータも存在)
Max Speed (最大速度):マッハ表記、高度別の速度高度別の速度: 130 knots (149 mph / 240 km/h) 海面高度時 (巡航速度は 90-100 knots または 103-115 mph、高度別の詳細な速度規定データはなし)
Combat Range (戦闘行動半径) / Ferry Range (航続距離)Combat Range: 約 250 nm (288 miles / 463 km) ※空中給油なしでの作戦半径
Ferry Range: 248 nm (459 km) または 300 miles (482 km) 以上 ※最大航続距離
Service Ceiling (実用上昇限度)4,572 m (15,000 ft) (総重量が 10,000 lb を超える場合は 3,048 m (10,000 ft)、資料により 5,273 m (17,300 ft) とするデータも存在)
Hardpoints (ハードポイント):ミサイルや爆弾の搭載能力None (最大 5,000 lb (2,268 kg) の外部貨物を吊り下げるスリング能力や、キャビン両脇にドアガン用のマウント兵装架を備える)
Fixed Armament (固定武装):機関砲の口径、弾数None(固定武装は非搭載。ただし任務に応じてドアガン用に 7.62mm GAU-17 ミニガン、7.62mm M240 機関銃、.50口径 GAU-18 機関銃、または 2.75インチロケット弾ポッドなどを取り外し可能な形で装備可能。任務ごとに弾薬箱の積載量が変わるため、標準規定の固定弾数データはなし)

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

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画像の引用元
  1. By Airman Allison Martin – USAF UH-1N, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=138453287

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