
概要と開発の背景
UH-60JAは、1990年代半ばに日本の防衛庁(当時)の要求のもと、三菱重工業(Mitsubishi Heavy Industries, Ltd.)がアメリカのSikorsky Aircraft(シコルスキー・エアクラフト)とのライセンス契約に基づき開発・生産した中型双発多用途ヘリコプターである。陸上自衛隊では従来、UH-1HやUH-1Jなどの小型〜中型単発ヘリコプターが部隊輸送や野外連絡の主力として運用されていた。しかし、単発エンジン機は航続距離や積載量に制限があり、山岳地帯や夜間・悪天候下における運用上の安全確保や広域機動展開力に限界が存在した。特に島嶼部を含む日本全国への迅速な部隊即応展開や、夜間・荒天時の空中機動・救難作戦を単一の機体で高度に遂行できる新世代アセットの獲得が強く求められた。このような更新ニーズに応えるため、アメリカ陸軍のUH-60Lをベースに日本独自の全天候航法装置や暗視装備を統合した新型多用途ヘリコプターとして開発がスタートし、1998年より部隊配備が開始された。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、アメリカ陸軍のUH-60Lを母体としつつ、日本独自の過酷な運用環境や夜間・全天候飛行に適合する高度な航法・防護アビオニクスを統合している点にある。パワートレインには、IHI Corporation(株式会社IHI)がライセンス生産するGeneral Electric Company製「T700-IHI-401C」ターボシャフトエンジン(1,662SHP)を2基搭載し、万が一の片発停止時でも飛行を維持できる高い冗長性と強力な推力余裕を獲得している。機首部には大型の気象航法レーダーおよび赤外線暗視装置(FLIR)を標準装備し、視界不良時や夜間における超低空飛行の安全性を格段に向上させた。さらに、胴体両脇に外部増槽を懸架できる小翼(ESSS)を装着可能であり、航続距離を通常の約470kmから約1,295kmへと大幅に延伸できる構造を持つ。キャビン側面ドア部には12.7mm重機関銃や5.56mm機関銃MINIMIをドアガンとして選択装着できるほか、赤外線サプレッサーやワイヤーカッターを備え高い防護能力を発揮する。
運用実績と評価
1998年の部隊配備開始以降、陸上自衛隊の各方面航空隊に属する飛行隊や第1ヘリコプター団、陸上自衛隊航空学校など全国の主要拠点へ導入・運用されている。実際の野外演習や空中機動訓練においては、操縦士を含む乗員のほかに完全武装の隊員最大12名や偵察用オートバイを素早く目的地域へ一括輸送できる高い輸送実効性や、長距離進出能力が高く評価された。また、高い全天候・夜間飛行性能を生かし、東日本大震災をはじめとする大規模災害や豪雪による孤立地域の救援活動においても即座に投じられ、夜間や悪天候下での緊急患者搬送や支援物資輸送に大きな実効性を発揮した。自衛隊が運用するヘリコプターの中で唯一、陸上・海上・航空の3自衛隊で同系機(60系)が導入されている高い信頼性を誇り、現代自衛隊の空中機動展開と災害対応力を陰で支える主要な中核機体として運用が進められている。
| Official Name (正式名称) | UH-60JA / Mitsubishi UH-60JA |
| Country of Origin (開発国) | アメリカ合衆国 / 日本 (米国製UH-60Lをベースに日本独自の規格で再開発) |
| Manufacturer (製造メーカー) | 三菱重工業株式会社 (航空宇宙システム製作所にてライセンス生産・独自の仕様改修を実施) |
| Designed (設計年) | 1980年代末から1990年代初頭にかけて日本向け仕様の開発が進められ、1995年に陸上自衛隊で運用が開始された多用途ヘリコプター |
| Primary Operators (主な運用組織) | 日本:陸上自衛隊(各方面航空隊・ヘリコプター隊・飛行隊・特殊作戦群支援部隊など) |
| Crew (乗員) | 2名 (操縦手、副操縦手) + 2名 (機上整備員/ドアガンナー等) + 10名 (後部キャビン・完全武装の隊員輸送時) |
| Dimensions (寸法):全長、全幅(翼幅)、全高 | L: 19.76 m (メインローター回転時。胴体長:15.26 m), W: 16.36 m (メインローター直径。ESSSウイング装着時全幅:5.43 m), D: 5.13 m (テールローター回転時最高部。ローター折畳時全高:3.76 m) |
| Empty / Max Takeoff Weight (自重 / 最大離陸重量) | Empty Weight (自重): Approx. 5,443 kg (12,000 lb) / Max Takeoff Weight (最大離陸重量): Approx. 9,979 kg (22,000 lb) |
| Powerplant (エンジン):型式、推力 | 2 × 石川島播磨重工業株式会社(現:IHI / ライセンス生産)T700-IHI-701C ターボシャフトエンジン, Output: 1,800 shp × 2基 (計3,600 shp / 片肺停止時のワン・エンジン不作動(OEI)緊急最大出力は1,940 shp) |
| Max Speed (最大速度):マッハ表記、高度別の速度 | Max Speed: 135 knots (Approx. 250 km/h) |
| Combat Range (戦闘行動半径) / Ferry Range (航続距離) | Combat Range: Approx. 250 – 300 km (作戦仕様・Payloadによる) / Ferry Range: Approx. 1,295 km (最大航続距離 ※機体両脇のESSS外部燃料タンク(230ガロン×2本)およびキャビン内予備タンクを満載した最大転送仕様時) |
| Service Ceiling (実用上昇限度) | Approx. 5,790 m (19,000 ft) |
| Hardpoints (ハードポイント):ミサイルや爆弾の搭載能力 | 2ヵ所または4ヵ所 (外装式複式サポート・システム(ESSS)を機体両脇に装着可能。最大約2.2トンの吊り下げ能力を持つパイロンベースを形成し、通常は長距離進出用の大型ドロップタンク(外部燃料タンク)を搭載するが、海外の同型仕様ではヘルファイア対戦車ミサイルやロケット弾ポッドの搭載プロファイルも物理的に拡張可能) |
| Fixed Armament (固定武装):機関砲の口径、弾数 | なし (基本固定武装は非搭載。ただし、左右のガンドアおよびキャビンドアに5.56mm機関銃MINIMIや12.7mm重機関銃M2などを専用マウントを介して据え付け、強力な両側面ドアガン制圧射撃・自衛運用を行うプロファイルが標準化されている) |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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画像の引用元
- By Toshinori baba – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=42628161












