LC-90

LC-90

概要と開発の背景

LC-90は、1980年代後半にアメリカのBeech Aircraft Corporation(現:Textron Aviation)が開発した双発ターボプロップビジネス機「King Air C90(C90A)」をベースに導入され、1989年(平成元年)より海上自衛隊で運用されている連絡機である。海上自衛隊では、全国に点在する各航空基地や本部相互間における主要幹部の急速移動、緊急を要する各種書類・小口装備品の輸送、ならびに部隊間の連絡業務を日常的に行っている。従来はレシプロ(ピストン)エンジンを搭載した「Beechcraft B-65」などが連絡業務に充てられていたが、機体の老朽化や性能限界が課題となっていた。また、同隊で既に導入されていた計器飛行練習機「TC-90」と機体プラットフォームを共通化することで、整備基盤の統合や部隊運用効率の飛躍的な向上が見込まれた。これを受け、高い信頼性と良好な巡航性能を備えるKing Air C90Aが次期連絡機として制式導入された。

構造と技術的特徴

構造上の最大の特徴は、計器飛行練習機TC-90と同系のBeechcraft King Air C90シリーズの優れた全金属製低翼双発構造を踏襲しつつ、幹部・人員輸送や小口貨物搬送に最適化されたキャビン構造とインテリアを備えている点にある。推進機関には信頼性の高いPratt & Whitney Canada製「PT6A-21」ターボプロップエンジン2基を搭載しており、与圧キャビン構造と相まって高高度での安定した巡航飛行を可能にしている。TC-90との機体構造およびエンジン・主要アビオニクスの高い部品共通性(コンポ―ネント互換性)を有するため、部品調達や定期整備ラインの共通化が実現されており、機体維持コスト(ライフサイクルコスト)の削減と高い部隊稼働率を両立させる合理的な設計思想が体現されている。キャビン内には最大5名から6名の乗員・乗客が搭乗でき、快適な移動環境と効率的な搬送メカニズムを兼ね備えている。

運用実績と評価

1989年の配備開始以降、海上自衛隊厚木航空基地に所在する第61航空隊をはじめ、全国各地の航空基地・連絡部隊に配備・運用されてきた。実際の運用においては、厚木、鹿屋、八戸、岩国、徳島など全国の基地間を結ぶ主要幹部の連絡輸送や、部隊運用の維持に必要な緊急補給部品・小型資材の輸送任務において、極めて高い即応性と確実な輸送能力を具体的に証明した。TC-90との高い整備互換性による優れた運用コストパフォーマンスと、悪天候下でも全天候航法装置および与圧キャビンにより安全かつ迅速に巡航できる点が具体的に高く評価されている。大規模演習や日々の部隊運用を水面下で支える「連絡・輸送の足」として確固たる信頼を獲得しており、現代の海上自衛隊における基地間ネットワークおよび兵站線を維持する不可欠な実用的アセットとして重要な立ち位置を占めている。

Official Name (正式名称)LC-90
Country of Origin (開発国)アメリカ合衆国(日本で自衛隊向け無線機器や人員・物資輸送用の機内改修)
Manufacturer (製造メーカー)Beechcraft(原設計・製造。現在はTextron Aviation傘下)
Designed (設計年)1960年代に開発されたBeechcraft King Air系列機を基に、1980年代前半に海上自衛隊向け連絡輸送機として導入が進められ、1982年に海上自衛隊で運用が開始
Primary Operators (主な運用組織)日本:海上自衛隊(航空集団直轄の「第61航空隊(厚木航空基地)」を主力として、全国の主要航空基地間の連絡・軽物資輸送、要人空輸、災害時の緊急輸送任務用としてLC-90を運用。また、各航空群の基地隊などにも連絡機として分散配備)
Crew (乗員)5名〜6名(操縦士2名に加え、後部キャビンに連絡輸送用の要員や乗客を最大3〜4名搭乗可能)
Dimensions (寸法):全長、全幅(翼幅)、全高全長: 10.82 m × 全幅(翼幅): 15.32 m × 全高: 4.34 m(または4.2 m)
Empty / Max Takeoff Weight (自重 / 最大離陸重量)約 2,590 kg / 最大離陸重量:約 4,377 kg(9,650 lb)
Powerplant (エンジン):型式、推力2x Pratt & Whitney Canada PT6A-20A または PT6A-21(ターボプロップ)、出力:各基 約 580 馬力(shp)
Max Speed (最大速度):マッハ表記、高度別の速度マッハ表記:約 Mach 0.35(高高度)、高度別の速度:216 kt(約 400 km/h)(高度4,900mにおける最大巡航速度。公式の標準巡航速度は196 kt / 約363 km/h)
Combat Range (戦闘行動半径) / Ferry Range (航続距離)戦闘行動半径:非公開(日本国内の主要航空基地間を迅速に結ぶ連絡・輸送任務に最適化) / 航続距離:約 2,150 km(最大燃料時)
Service Ceiling (実用上昇限度)約 8,560 m(28,100 ft)
Hardpoints (ハードポイント):ミサイルや爆弾の搭載能力なし(純粋な要人・人員連絡、軽物資輸送用の機体であり、兵装搭載能力はなし)
Fixed Armament (固定武装):機関砲の口径、弾数なし

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

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画像の引用元
  1. By 海上自衛隊, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=144530496

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