F-16C/D Fighting Falcon

F-16C/D
F-16C Fighting Falcon

概要と開発の背景

F-16C/D ファイティング・ファルコン(General Dynamics / Lockheed Martin F-16C/D Fighting Falcon)は、1980年代前半にアメリカの General Dynamics Corporation(1993年以降は Lockheed Martin Corporation が事業継承)が開発し、1984年より部隊配備が開始された単座(C型)および複座(D型)の全天候型多用途軽戦闘機(マルチロール機)である。開発の背景には、1970年代末に登場した初期型 F-16A/B における昼間制空戦闘・視界内格闘戦中心の運用限界と、急激に進展する夜間・全天候下での精密対地打撃ニーズや視界外(BVR)空対空戦闘能力の獲得要求が存在した。老朽化した F-4 Phantom II や F-105 Thunderchief などの各種戦術攻撃機の更新を進めつつ、小型・軽量かつ低コストな機体構造を維持しながら、夜間暗視・精密誘導兵器の運用力や先進的電子戦システムを大幅に強化した次世代の決定版マルチロール戦闘機として開発がスタートした。

構造と技術的特徴

構造上の最大の特徴は、初期型 F-16A/B で確立された静安定緩和(RSS)設計とデジタル・フライ・バイ・ワイヤ(FBW)操縦系統、フレームレスの全周バブルキャノピー、および高G旋回時の操縦士の負担を軽減する30度後傾シートを踏襲しつつ、アビオニクスと火器管制システムを全面的に刷新した点にある。機首レーダーには AN/APG-68 パルスドップラーレーダーが統合され、視界外空対空誘導弾 AIM-120 AMRAAM の運用能力や精密な対地マッピング機能を確立した。コクピットには広視野ヘッドアップディスプレイ(HUD)や多機能カラーディスプレイ(MFD)が配置され、パイロットの状況把握能力を劇的に向上させた。また、Block 30/32 以降では General Electric 製 F110 と Pratt & Whitney 製 F100 の両ターボファンエンジンを選択・搭載可能な「オルタネイト・ファイター・エンジン(AFE)」構造が採用され、機首エアインテーク形状の変更や最大離陸重量の飛躍的増大(約19.2t)など、ライバル機と比較して圧倒的な拡張性と高い運動性能の両立を実現している。

運用実績と評価

1984年の Block 25 配備開始以降、アメリカ空軍(現役航空隊および空軍州兵)をはじめ、イスラエル航空宇宙軍、トルコ空軍、エジプト空軍、ギリシャ空軍、韓国空軍、台湾空軍など世界20か国以上の安全保障機関で主力マルチロール機として制式採用・運用された。1991年の湾岸戦争(砂漠の嵐作戦)において多数の機体が投入され、昼夜を問わない精密誘導爆撃や SEAD(敵防空網圧殺)任務で卓越した戦術効果を発揮した。その後のコソボ紛争、アフガニスタン紛争、イラク戦争、さらには近年の各種地域紛争においても第一線の要として重用された。特筆すべき派生型として、イスラエルの精密打撃型 F-16I Sufa や、コンフォーマル・フューエル・タンク(CFT)を備えた Block 52+ / Block 60、さらには AN/APG-83 AESAレーダーを標準搭載する最新の Block 70/72(F-16V Viper)へ進化を遂げた。傑出した汎用性と高い稼働率から第4世代多用途戦闘機の金字塔として評価されており、現在においても世界中で基幹戦力として現役運用が続けられている。

Official Name (正式名称)F-16C/D Fighting Falcon
Country of Origin (開発国)アメリカ合衆国
Manufacturer (製造メーカー)General Dynamics Corporation (1993年以降の航空機部門売却にともない、現在は Lockheed Martin Corporation)
Designed (設計年)多国籍段階的性能向上計画(MSIP Stage II)に基づく全天候マルチロール化への機能拡張要求から1981年に「F-16C/D」として正式に基本設計型式が定義され、最初の量産機(Block 25)としての開発・設計が進められた。その後、C型(単座型)の量産初号機が1984年6月15日に初飛行を完了し、翌月の1984年7月よりアメリカ空軍への実機デリバリーが開始され、同年12月には生産ラインへの本格的な統合と公式な部隊配備・初期運用が開始された。
Primary Operators (主な運用組織)アメリカ合衆国:アメリカ空軍(アクティブデューティの各戦闘航空団、空軍州兵(ANG)、空軍予備役軍(AFRC)など多数の部隊にて運用中)、およびアメリカ海軍(戦闘機兵器学校(トップガン)等のアグレッサー(仮想敵)部隊にて、米空軍から移管された機体を含む「F-16C/D」を運用中
ウクライナ:ウクライナ空軍(欧州同盟国(オランダ、デンマーク等)から公式供与され、C/D型と同等の能力を持たせた近代化改修派生品「F-16AM/BM MLU」を複数の作戦戦術航空旅団にて運用中
イスラエル:イスラエル航空宇宙軍(複数の飛行隊において「F-16C/D Barak(バラク)」、およびF-16Dをベースにコンフォーマル燃料タンクや独自電子戦システムを完全統合した独自発展派生品「F-16I Sufa(スーファ)」を運用中
トルコ:トルコ空軍(多数の戦術航空部隊において、TUSAŞ(TAI)による現地ライセンス生産機および独自近代化パッケージを適用した「F-16C/D Block 30/40/50/50+ / Özgür(オズギュル)」を運用中
ギリシャ:ギリシャ空軍(各戦闘航空団において、米国から調達した「F-16C/D Block 30/50/52+」、およびこれらをさらにAPG-83 AESAレーダー搭載仕様へとアップグレードした最新派生品「F-16V Block 72(Viper)」を運用中
大韓民国:大韓民国空軍(各戦闘飛行隊において、米国からの直接導入機である「F-16C/D Block 32」、および韓国航空宇宙産業(KAI)でライセンス生産された「KF-16C/D」、ならびにこれらを近代化換装した「KF-16U」を運用中
台湾(中華民国):中華民国空軍(各戦術戦闘航空団において、F-16A/B Block 20をベースに、最新のAPG-83 AESAレーダー等を搭載してC/D型の最新仕様(Viper)と同等に完全近代化改修した派生品「F-16V」を大規模に運用中
シンガポール:シンガポール空軍(本国の各飛行隊および米国内の訓練派遣部隊において、コンフォーマル燃料タンクを備えた独自の「F-16C/D Block 52 / 52+」、およびこれらをAESAレーダー等で近代化アップデートした改修派生品を運用中
エジプト:エジプト空軍(複数の戦術戦闘航空団において、対外有償軍事援助(Peace Vector計画)により米国から導入され、主に砂漠域の防空・対地攻撃を担う「F-16C/D Block 32/40」を運用中
パキスタン:パキスタン空軍(複数の飛行隊において、黎明期から維持されるA/B型に加え、追加調達した先進仕様の「F-16C/D Block 52+」を運用中
ポーランド:ポーランド空軍(各戦術航空基地の飛行隊において、NATOの統合防空・精密打撃要件を満たすために導入されたコンフォーマル燃料タンク(CFT)付きの「F-16C/D Block 52+」を運用中
チリ:チリ空軍(第1飛行隊において、オランダ空軍から中古調達したA/B型改修機(AM/BM MLU)の他に、米国から直接新規製造で購入した先進仕様の「F-16C/D Block 50+」を運用中
モロッコ:モロッコ王立空軍(ベン・ゲリル航空基地の各飛行隊において、米国からFMS経由で新規調達した北アフリカ地域最精鋭の「F-16C/D Block 52+」を運用中
イラク:イラク空軍(バラド空軍基地の第9飛行隊において、新生空軍の再建アセットとして米国から調達し、対テロ・ISIL掃討作戦に投入されている「F-16C/D Block 52(F-16IQ)」を運用中
バーレーン:バーレーン王立空軍(イーサ航空基地の戦闘航空団において、既存の「F-16C/D Block 40」、および新規製造ラインから受領を開始した最新鋭派生品「F-16C/D Block 70(Viper)」を運用中
ヨルダン:ヨルダン王立空軍(各飛行隊において、米国および欧州同盟国から順次購入・移管され、独自の戦術データリンク等の改修が施された「F-16C/D(およびF-16AM/BM MLU)」を運用中
オマーン:オマーン王立空軍(スンマイト航空基地の第18飛行隊において、中東・湾岸域の防空網および領海警備のために米国から調達されたコンフォーマル燃料タンク仕様の「F-16C/D Block 50/52+」を運用中
インドネシア:インドネシア空軍(各飛行隊において、初期導入のF-16A/B型に加え、米空軍の余剰防衛装備品(EDA)から供与を受け、構造強化とアビオニクスをC/D Block 52規格相当へアップデートした「F-16C/D Block 25+(F-16C/D ID)」を運用中
タイ:タイ王国空軍(各航空団の飛行隊において、保有する既存のF-16A/B型を近代化し、C/D型に匹敵する中距離空対空ミサイル運用能力や先進データリンクを付与した改修派生品を運用中
アラブ首長国連邦:アラブ首長国連邦空軍(アル・ダフラ空軍基地の戦闘飛行隊において、AN/APG-80 AESAレーダーや内蔵型前方赤外線照準システムを統合して新規製造された、C/D型の最高峰・独自発展派生品である「F-16E/F Block 60 Desert Falcon(デザートファルコン)」を大規模に運用中
ルーマニア:ルーマニア空軍(各航空基地の戦闘飛行隊において、ポルトガルおよびノルウェーから中古調達したA/B型に、C/D Block 50/52と同等の視程外射程ミサイル(AMRAAM)運用能力やグラスコックピットを付与した近代化改修派生品「F-16AM/BM MLU」を運用中
ポルトガル:ポルトガル空軍(モンテ・レアル空軍基地の第5航空群傘下・第201戦闘飛行隊(”Falcões”)および第301戦闘飛行隊(”Jaguares”)において、自国のOGMA社による近代化キット適用を経て、C/D Block 50/52に匹敵するAIM-120中距離空対空ミサイル運用能力やJHMCS(統合ヘルメットマウンティングシステム)を完全統合した「F-16AM/BM MLU」を運用中
ベルギー:ベルギー空軍(新型機F-35Aへの全面刷新スケジュールを進行中であるが、2026年現在も現役フリートとして多数の機体を維持しており、2026年から2029年にかけて段階的にウクライナへ全53機を移転・引き渡す計画を実行しながら、それまでのNATO標準防空任務において「F-16AM/BM MLU」を運用中
スロバキア:スロバキア空軍(MiG-29の全面退役に伴い米国Lockheed Martin社へ発注していた最新仕様14機(単座C型12機、複座D型2機)について、2026年4月末までに全機の受領と作戦デリバリーを完全に完了し、国家防空の新たな要として「F-16V Block 70(Viper)」を運用中
Crew (乗員)F-16C:1名、F-16D:1名または2名
Dimensions (寸法):全長、全幅(翼幅)、全高L (全長): 49 ft 5 in (14.8 m)
W (全幅(翼幅)): 32 ft 8 in (9.8 m) ※主翼翼端のミサイルランチャー含む仕様、ランチャー除く主翼単体幅は31.0 ft (9.45 m)
H (全高): 16 ft (4.8 m)
Empty / Max Takeoff Weight (自重 / 最大離陸重量)Empty (自重): 19,700 lb (8,936 kg) ※Block 25/30/32基準、構造強化が施されたBlock 50/52等では最大 20,300 lb 領域まで増加
Max Takeoff Weight (最大離陸重量): 37,500 lb (16,875 kg) 〜 39,000 lb (17,690 kg) ※搭載エンジンおよびBlock/補強プログラムの適用ステータスに準じる
Powerplant (エンジン):型式、推力型式: 1x Pratt & Whitney F100-PW-200/220/229 または General Electric F110-GE-100/129 (アフターバーナー付きターボファンエンジン)
推力: 1基あたり 27,000 lbf 〜 29,000 lbf 以上 (120 kN 〜 129.4 kN クラス)
Max Speed (最大速度):マッハ表記、高度別の速度マッハ表記: Mach 2.0
高度別の速度: 高高度(約 40,000 ft 領域)において 約 1,500 mph (約 2,414 km/h)、低高度(海面高度付近の濃密大気圏内)においては機体保護および空力限界の関係から 約 915 mph (約 1,460 km/h / マッハ1.2クラス) に制限される
Combat Range (戦闘行動半径) / Ferry Range (航続距離)Combat Range (戦闘行動半径): 約 500 miles (約 860 km / 460 n.mi) ※標準的な対地攻撃ミッションプロファイル時、装備構成(ドロップタンクの数やミサイル重量)にともない最大 865 n.mi (1,605 km) まで拡張可能
Ferry Range (航続距離): 2,002 miles 以上 (1,740 n.mi 以上 / 約 3,222 km 以上) ※外部増槽(ドロップタンク)をフルに装着した最大航行時
Service Ceiling (実用上昇限度)50,000 ft 以上 (15,240 m 以上)
Hardpoints (ハードポイント):ミサイルや爆弾の搭載能力ハードポイント:11カ所
主翼翼端ランチャー(ステーション1および9)、主翼下パイロン左右各3カ所(計6カ所)、胴体下コーナー左右各1カ所(LANTIRNやSNIPER等の照準・航法ポッド専用マウントポイント計2カ所)、および胴体中心線下パイロン1カ所(大型ドロップタンクまたはECMPod用)で構成され、最大 17,200 lb (7,800 kg) の空対空ミサイル(AIM-9、AIM-120)、各種精密誘導爆弾(JDAM)、対艦・対レーダーミサイル(HARM)を柔軟に統合・マウント可能
Fixed Armament (固定武装):機関砲の口径、弾数1x 20mm M61A1 Vulcan (左側主翼付け根前縁にマウントされた6砲身ガトリング砲)、弾数:500発

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

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画像の引用元
  1. By U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Zachary Jakel – This image was released by the United States Air Force with the ID 250718-F-ZJ681-2123 (next).This tag does not indicate the copyright status of the attached work. A normal copyright tag is still required. See Commons:Licensing.العربية ∙ বাংলা ∙Bahaso Jambi ∙Deutsch ∙ Deutsch (Sie-Form) ∙ English ∙ español ∙ euskara ∙ فارسی ∙ français ∙ italiano ∙ 日本語 ∙ 한국어 ∙ македонски ∙ മലയാളം ∙ Plattdüütsch ∙ Nederlands ∙ polski ∙ پښتو ∙ português ∙ русский ∙ slovenščina ∙ svenska ∙ Türkçe ∙ українська ∙ 简体中文 ∙ 繁體中文 ∙ +/−, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=171286237

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