
概要と開発の背景
TH-135は、2000年代末から2010年代にかけて日本の防衛省(海上自衛隊)が導入した双発の回転翼練習機(ヘリコプター)である。ベースとなった機体は、ドイツとフランスの複合航空機メーカーであるEurocopter(現:Airbus Helicopters)が1990年代に開発した多用途双発ヘリコプター「EC 135 T2+」である。海上自衛隊では長年、ヘリコプター操縦士の基礎教育に単発・小型の「OH-6D/DA」、計器飛行教育に固定翼の「TC-90」を用いて個別に訓練を実施していた。しかし、OH-6Dの機体減勢・老朽化への対応に加え、最新の大型・双発哨戒ヘリコプター(SH-60KやMCH-101等)への移行をスムーズに行うため、基礎操縦教育から高度な計器飛行(IFR)教育までを単一機種で統合運用できる最新鋭練習機の導入が求められた。これを受け、高い操縦性と安定した飛行性能を備えたEC 135 T2+が選定され、自衛隊仕様の練習機「TH-135」として導入がスタートした。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、Eurocopter独自のアダプティブデザインに基づくダクテッドファン型テールローター「フェネストロン(Fenestron)」と、完全デジタルエンジン制御(FADEC)を備えたツインエンジン構造にある。10枚のブレードを不等間隔に配置したフェネストロン構造により、従来の露出型テールローターと比較して静音性が大幅に向上したほか、地上作業時の障害物接触リスクが抑えられ教育訓練上の高い安全性が獲得された。メインローターハブにはベアリングレス・ローター・システムが採用され、構造の簡略化による高い整備性と軽快な操縦応答性を両立している。コックピットには大型液晶ディスプレイを集成したグラスコックピット機能が統合されており、各種飛行データやシステム状態を操縦教官と学生が同時に視覚把握できる。前級のOH-6D(単発アナログ計器機)と比較して、夜間や悪天候下での計器飛行訓練を安全かつ直感的に実施できる最新のアビオニクス構造が具現化されている。
運用実績と評価
2009年(平成21年)12月に初号機が納入されて以降、2015年11月までに全15機の調達が完了し、鹿児島県鹿屋基地に所在する海上自衛隊第211教育航空隊へ集中配備された。実際の教育運用においては、単発のOH-6Dと固定翼機TC-90に分かれていた訓練工程をTH-135の1機種に集約したことで、訓練期間の短縮と教育体系の合理化が具体的に達成された。さらに、出力余裕のあるSafran Helicopter Engines(旧:Turbomeca)製「Arrius 2B2」エンジンの採用により、片発不調時(OEI)の安全な帰還性能や優れた耐候性が示された。原型であるEC 135シリーズはドクターヘリ、警察機、ならびにドイツ軍、スイス軍、スペイン軍等の軍用訓練機としても世界各地で幅広く導入されており、最新のH135へ至るまで高い信頼性と運動性能が高く評価されている。海上自衛隊においても、次世代の艦載・陸上ヘリコプター操縦士を養成する中核アセットとして確固たる地位を確立している。
| Official Name (正式名称) | TH-135 / EC 135 T2+ |
| Country of Origin (開発国) | ドイツ / フランス(欧州共同開発) |
| Manufacturer (製造メーカー) | Airbus Helicopters (旧 Eurocopter。原設計・製造) / 川崎重工業(日本における輸入・整備およびサポート・部品供給) |
| Designed (設計年) | 1990年代に開発されたEurocopter EC135を基に、2000年代後半に海上自衛隊向け練習ヘリコプターとして導入が進められ、2011年に海上自衛隊で運用が開始 |
| Primary Operators (主な運用組織) | 日本:海上自衛隊(教育航空集団傘下の「小月教育航空群 第211教育航空隊(小月航空基地)」にて、回転翼(ヘリコプター)操縦士の基礎教育から計器飛行課程までのパイロット養成用練習機としてTH-135を集中運用中) |
| Crew (乗員) | 2名(教官1名、訓練生1名。または操縦士2名)※後部座席にさらに最大3名搭乗可能 |
| Dimensions (寸法):全長、全幅(翼幅)、全高 | 運用時(ローター回転時):W: 10.2 m × D: 12.2 m × H: 3.5 m / 機体胴体のみ:W: 2.0 m × D: 10.2 m × H: 3.5 m |
| Empty / Max Takeoff Weight (自重 / 最大離陸重量) | 自重(空虚重量):約 1.5 t / 最大離陸重量:約 2.9 t |
| Powerplant (エンジン):型式、推力 | 2x Pratt & Whitney Canada PW206B2 (ターボシャフト)、出力:各基 約 620 shp(離陸最大出力) |
| Max Speed (最大速度):マッハ表記、高度別の速度 | マッハ表記:約 Mach 0.21(低高度)、高度別の速度:140 kt(約 259 km/h)(海面高度における最大速度。巡航速度は約120kt / 約222km/h) |
| Combat Range (戦闘行動半径) / Ferry Range (航続距離) | 戦闘行動半径:非公開(訓練空域における数時間の連続フライトが可能な性能を保持) / 航続距離:約 635 km |
| Service Ceiling (実用上昇限度) | 約 6,095 m(20,000 ft) |
| Hardpoints (ハードポイント):ミサイルや爆弾の搭載能力 | なし(純粋な基本操縦・計器飛行教育用の練習機であり、攻撃兵装を搭載するハードポイントはなし) |
| Fixed Armament (固定武装):機関砲の口径、弾数 | なし |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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画像の引用元
- By 海上自衛隊, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=51682262












