
概要と開発の背景
T-5は、1980年代後半に日本のFuji Heavy Industries, Ltd.(富士重工業株式会社 / 現:株式会社SUBARU)によって開発され、1989年(平成元年)より海上自衛隊へ導入された単発ターボプロップ初等練習機である。海上自衛隊では長年、Beech Aircraft Corporation(ビーチ・エアクラフト社)の「T-34A」をベースにしたレシプロ(ピストン)エンジン練習機「KM-2」を初等操縦訓練に用いていた。しかし、KM-2機体の老朽化が進んだことに加え、海上自衛隊が運用する主要な固定翼機(P-3C等)や回転翼機(SH-60等)のエンジンがターボプロップ化・ターボシャフト化されたため、初等段階からレスポンスや取り扱い特性の異なるターボプロップ機による訓練体系への移行が急務となった。これを受け、富士重工業がKM-2のエンジンをターボプロップ化した社内試験機「KM-2D」を試作・飛行させ、そのデータを基にキャノピーやコックピットを刷新した「KM-2改(後のT-5)」が海上自衛隊の次期初等練習機として制式採用された。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、教官と学生が左右に並んで座る「サイド・バイ・サイド(並列複座)」座席配置と、軽量かつ広大な視界を提供する一体型大型キャノピーを採用している点にある。航空自衛隊の初等練習機(T-3やT-7)が前後席の縦列配置を採用しているのに対し、大型哨戒機や各種ヘリコプターなどマルチクルー(多座席)運用機を多数保持する海上自衛隊の運用体系に合わせ、教官による手元指導や直接の状況把握が容易な並列配置が選択された。キャノピーは後方スライド式となり、従来のドア構造を廃止したことで機体強度の向上と整備性・軽量化が達成されている。推進機関にはRolls-Royce plc(旧:Allison Engine Company)製の「250-B17D」ターボプロップエンジン1基を搭載し、Hartzell Propeller製3枚羽プロペラを駆動させる。エンジン本来の定格出力(約420shp)に対し、初等訓練における扱いやすさと機体耐久性を考慮して約350shpへ制限(フラットレート)をかける工夫が施されている。
運用実績と評価
1988年に初号機が納入され、1989年3月より山口県下関市の小月航空基地に所在する第201教育航空隊へ順次配備された。制式採用以降、固定翼機・回転翼機を問わず、海上自衛隊における全操縦士および戦術航空士の初等飛行訓練を担う唯一の機体として導入されている。実際の教育現場においては、ターボプロップ化による優れた加速応答性と高い静粛性、および並列複座による教官からの直感的な直接操縦指導が高く評価された。また、本機は小月基地所属の海上自衛隊公式アクロバット飛行チーム「ホワイトアローズ(White Arrows)」の運用機としても使用されており、軽快な運動性能と優れた旋回能力を具体的に展示・証明している。初期製造機の経年化に伴い、近代化仕様(一部計器のLCD液晶化)を施した追加製造や再調達が実施されており、現代の海上自衛隊における航空要員育成の出発点を支える不可欠な基幹アセットとして確固たる地位を維持している。
| Official Name (正式名称) | T-5 / Fuji T-5 |
| Country of Origin (開発国) | 日本 |
| Manufacturer (製造メーカー) | 富士重工業(現:SUBARU) |
| Designed (設計年) | 1990年代後半にKM-2D後継の初等練習機として開発が進められ、2000年に初飛行、2001年に海上自衛隊で運用が開始された国産初等練習機 |
| Primary Operators (主な運用組織) | 日本:海上自衛隊(教育航空集団傘下の「小月教育航空群 第201教育航空隊(小月航空基地)」にて、固定翼・回転翼問わず、すべての海上自衛隊パイロット候補生が最初に航空機の基本操縦技術やアクロバット飛行を学ぶための初等練習機としてT-5を集中運用中) |
| Crew (乗員) | 2名(教官1名、訓練生1名 ※座席配置は並列(サイド・バイ・サイド)座席。最大4名まで搭乗可能) |
| Dimensions (寸法):全長、全幅(翼幅)、全高 | 全長: 8.44 m × 全幅(翼幅): 10.04 m × 全高: 2.96 m |
| Empty / Max Takeoff Weight (自重 / 最大離陸重量) | 自重(空虚重量):約 1,070 kg / 最大離陸重量:1,805 kg |
| Powerplant (エンジン):型式、推力 | 1x Rolls-Royce Allison 250-B17D(ターボプロップ)、出力:最大 350 shp(機体強度等に合わせて本来の420shpから制限運用) |
| Max Speed (最大速度):マッハ表記、高度別の速度 | マッハ表記:約 Mach 0.29(低高度)、高度別の速度:193 kt(約 357 km/h)(海面高度における最大速度) |
| Combat Range (戦闘行動半径) / Ferry Range (航続距離) | 戦闘行動半径:非公開(基本操縦訓練およびアクロバット訓練の実施に十分な滞空性能を保持) / 航続距離:約 945 km(約 510 nm) |
| Service Ceiling (実用上昇限度) | 約 7,620 m(25,000 ft) |
| Hardpoints (ハードポイント):ミサイルや爆弾の搭載能力 | なし(純粋な初等飛行教育用の練習機であり、兵装用のハードポイントはなし) |
| Fixed Armament (固定武装):機関砲の口径、弾数 | なし |
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画像の引用元
- By 海上自衛隊, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=57301664












