曳船58号型 / YT-58 class Yard Tag boat

YT-58 class Yard Tag boat
曳船92号と曳船94号

概要と開発の背景

曳船58号型は、1970年代末より日本の防衛庁(現・防衛省)主導のもと、横浜ヨット株式会社や前畑造船株式会社、株式会社栗之浦ドックなどの国内造船所によって開発・連続建造され、1978年(昭和53年)より海上自衛隊へ導入された現有最大級の第1種支援船(公称船型「260トン型曳船」)である。海上自衛隊では、昭和期に整備された旧式の港内曳船「曳船53号型」などが主力として運用されていた。しかし、昭和後期以降における護衛艦や補給艦、輸送艦などの各種艦艇の大型化に伴い、従来の小型曳船では牽引力や旋回支援能力に限界が生じつつあった。また、各地方隊の基地や港湾における大型自衛艦の安全かつ迅速な離着岸作業、回頭、非自走支援船の洋上曳航、ならびに港内における防災・初期消火能力の向上が急務とされた。これを受け、高い操縦性能と強大な推力を兼ね備えた最新の港内作業用アセットとして開発がスタートした。

構造と技術的特徴

構造上の最大の特徴は、強固な鋼製船体に、シュラウドリング(ノズル)付きの全周旋回プロペラ2軸を組み合わせた高運動性推進システムを採用し、360度全方向への即応旋回や横移動を可能にした点にある。船橋上部には高圧放水銃2基と自衛散水装置を備え、港内消火支援艇としてのメカニズムも統合されている。初期型(ネームシップ「曳船58号」等)は全長28.4m、出力1,800馬力であったが、平成22年(2010年)建造のYT-95以降(後期改設計型)では主機出力を2,600馬力へパワーアップし、全長を31.0mへと拡大した。さらに、視界拡大と上部作業性の向上のため船橋直後の排気煙突を排して船尾左右排気方式へ変更したほか、橋桁や大型艦のオーバーハングを回避する起倒式マスト、大型ヘリ搭載護衛艦(DDH)の横抱き支援用防舷物を追加するなど、最新の大型艦に対応する優れた設計が採用された。

運用実績と評価

1978年10月に1番船「曳船58号」が就役して以降、横須賀、呉、佐世保、舞鶴、大湊の各地方隊港務隊へ制式配備され、数十隻に及ぶ同型船が順次運用に投入されてきた(番号使い切りに伴いYT-01等へ再付与)。実際の運用においては、汎用護衛艦(DD)の離着岸において2隻体制で押し引き作業を行うほか、基準排水量1万トンを超える「いずも型」護衛艦や「ましゅう型」補給艦などの超大型艦艇に対しては、3隻から4隻体制で直接押し引きや管制支援を担い、極めて精密な操船支援実効性を具体的に証明した。また、船内に小型居住設備を完備しているため、他港への遠征支援や防衛装備庁の標的船洋上曳航試験支援など、多様な後方任務に従事した。数多くの艦艇が出入港する自衛隊基地の安全を水上から支え続ける極めて信頼性の高い基幹ワークホースとして、現在に至るまで極めて重要な役割を果たしている。

Official Name (正式名称)曳船58号型 / YT-58 class Yard Tag boat
Country of Origin (開発国)日本
Manufacturer (製造メーカー)栗之浦ドックや前畑造船など、国内の複数造船所
Designed (設計年)昭和53年度(1978年度)計画において基本設計・建造予算が計上され、同計画に基づく1番艦「曳船58号(YT-58)」が1978年10月31日に竣工・就役したことで運用を開始
Primary Operators (主な運用組織)日本: 海上自衛隊 各地方隊隷下 港務隊および基地隊等
Displacement (排水量):基準排水量 / 満載排水量基準排水量(公称船型):260 t / 実質排水量:262 t
満載排水量:非公開
Dimensions (寸法):全長、最大幅、喫水初期型(YT-58〜YT-94):全長 28.4 m × 最大幅(W) 8.6 m × 深さ(H) 3.5 m × 喫水(D) 2.5 m
後期型(YT-95以降):全長 31.0 m × 最大幅(W) 8.6 m × 深さ(H) 3.6 m × 喫水(D) 2.3 m
Propulsion (機関):初期型(YT-58〜YT-94):新潟鉄工 6L25BX ディーゼルエンジン 2基、2軸駆動(プロペラ構造)、総出力 1,800 PS
後期型(YT-95以降):ディーゼルエンジン 2基、2軸駆動、総出力 2,600 PS
Speed (速力):11 kt
Range (航続距離):非公開(港湾内運用のための支援船(第1種支援船)であるが、簡易的な居住区を備えており他地方隊への回航能力を有す)
Complement (乗員数):7名
Sensors and Processing Systems (センサー・レーダー):航海用レーダー 1基
Armament (兵装):港湾内での消火活動(消防船機能)を想定し、泡沫原液タンク1基と、船橋(ブリッジ)天井の両舷に計2基の放水銃を装備
Aircraft Carried (艦載機)、
Carrying capacity(積載能力):
なし

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

PR:関連商品

楽天ブックス
¥4,620 (2026/10/26 09:31時点 | 楽天市場調べ)
画像の引用元
  1. By 海上自衛隊, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=144640316
  2. By Sengoku2501 – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=97987872
  3. By 海上自衛隊, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=144640317
  4. By Hunini – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=32618325
  5. By Hunini – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=32618329

上部へスクロール