
概要と開発の背景
M1150 ABV(Assault Breacher Vehicle)は、2000年代初頭にアメリカ合衆国のAnniston Army Depot(ANAD)およびPearson Engineeringが開発し、2008年にアメリカ海兵隊へ配備されたM1A1エイブラムス主力戦車のシャーシをベースとする重装甲強襲突破車である。1990年代までアメリカ海兵隊やアメリカ陸軍では、M60戦車ベースのM728戦闘工兵車(CEV)やM9装甲戦闘トラクター(ACE)が地雷原処理や障害物除去を担っていた。しかし、これら旧式車両は防御力と機動力の面でM1エイブラムス戦車に追従できず、激しい敵火砲や簡易爆発装置(IED)が敷設された強襲突破ゾーンでの作業に著しい危険が伴っていた。さらに、M1ベースのGrizzly(M104)強襲突破車計画がコスト高騰により1999年にキャンセルされたため、海兵隊は余剰となったM1A1戦車の車体を流用し、低コストで高い生存性と重装甲突破能力を両立した専用車両の開発を開始した。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、M1A1エイブラムスの1,500馬力を誇るHoneywell製AGT1500ガスタービンエンジンと車体を流用し、主砲砲塔を撤去して複合装甲および爆発反応装甲(ERA)で強化された全溶接製工兵砲塔を搭載している点にある。車体前部には、Pearson Engineering社製の全幅マインプラウ(FWMP)、マインローラー、またはドーザーブレードを作戦に応じて迅速に交換・装着できる統合インターフェースを備えている。後部砲塔上には2基のM58 MICLIC(地雷原爆破薬包射出装置)が装備されており、ロケットで爆薬入りラインチャージを投射して約100メートルの長さ、幅8メートルの安全通路を瞬時に爆破開拓するメカニズムを有する。旧型のM728 CEVと比較して、1,500馬力の高出力とM1同等の装甲防御力を獲得したことで、敵の直接射撃を受けながらも制圧下の地雷原や複合障害物を高速で破砕・突破できる点が決定的な技術的優位性となっている。
運用実績と評価
2008年のアメリカ海兵隊への初期配備および2012年からのアメリカ陸軍への配備以降、オーストラリア陸軍やウクライナ陸軍などの同盟国でも導入された。実戦における初投入は2009年〜2010年のアフガニスタン紛争(モシュタラク作戦等)であり、タリバンが埋設した広大なIED地雷原に対しMICLICとマインプラウを用いて即座に安全な進行ルートを開拓し、歩兵および戦車部隊の損害を激減させた実証成果が得られた。ウクライナ紛争においてもロシア軍の強固な「スロヴィキン・ライン」地雷原に対する突破車両として投入された。一方で、戦闘重量が約72トンに達するため、架橋能力の制限や野外回収車(M88A2等)の支援が不可欠である点、ガスタービンエンジンによる極めて高い燃料消費率と過酷な砂塵環境でのエアフィルター交換など、前線ロジスティクスへの高負荷が運用上の具体的な課題として挙げられている。
| Official Name (正式名称) | M1150 ABV (Assault Breacher Vehicle) |
| Country of Origin (開発国) | アメリカ合衆国 |
| Manufacturer (製造メーカー) | Anniston Army Depot (ANAD), General Dynamics Land Systems (GDLS), Pearson Engineering |
| Designed (設計年) | 2002年ごろに設計・開発が開始、その後アメリカ海兵隊の要求を受けて開発が進み、2008年頃から配備 |
| Primary Operators (主な運用組織) | アメリカ合衆国:アメリカ陸軍(アメリカ海兵隊は2023年退役) ウクライナ:ウクライナ軍 |
| Crew / Capacity (乗員および兵員輸送数) | 2名(Commander, Driver) |
| Combat Weight (戦闘重量) | 約55,000 kg〜64,410 kg (約121,250 lbs〜142,000 lbs / 約55 tons〜72 tons) ※各種アタッチメント装備時最大約72 short tons (約65,300 kg) |
| Dimensions (寸法: 全長/全幅/全高) | W (全幅):約3.66 m (144 in / 12 ft) ※FWMP (Full Width Mine Plough) マインプラウ装備時 約4.57 m (180 in / 15 ft) L (全長):約7.92 m (312 in / 26 ft) ※マインプラウ含む全長 約12.19 m (480 in / 40 ft) D (全高):約2.44 m (96 in / 8 ft) ※CROWS / 電子戦アンテナ等含め全高 約3.05 m (120 in / 10 ft) |
| Armor (装甲の詳細: 複合装甲、ERA、APSの有無) | M1A1 Abrams Chassis Composite Armor (複合装甲)、Welded Steel Superstructure (溶接鋼鉄製上部構造)、Explosive Reactive Armor (ERA) Tiles (爆発反応装甲) ※ERAパネル装着仕様あり |
| Main Armament (主武装) | 2x M58 MICLIC (Mine Clearing Line Charge) Rocket Launcher System (ロケット投射型爆破索発射機、C-4爆薬付き線状爆破索2系出) |
| Secondary Armament (副武装) | 1x 12.7mm M2HB Heavy Machine Gun (50 caliber / 12.7x99mm NATO、OGPKまたはCROWS経由運用)、M257 Smoke Grenade Launcher (81mm煙幕弾発射機) |
| Engine (エンジン出力 hp/kW) | Honeywell AGT1500 Multi-Fuel Gas Turbine Engine 出力:1,500 hp (約1,120 kW) |
| Max Speed (最高速度: 整地/不整地) | Paved (整地):約72 km/h (約45 mph) Unpaved (不整地):約48 km/h (約30 mph) |
| Operational Range (航続距離) | 約500 km (約310 miles) ※アタッチメント装着および作業時 約240 km〜400 km (約150 miles〜250 miles) |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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画像の引用元
- By Spc. Tyler Kingsbury – https://www.dvidshub.net/image/1634774, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=39477397












