
FIM-92 スティンガーは、アメリカが開発した歩兵携帯式地対空誘導弾(MANPADS)システムである。主として低空を飛行する敵のヘリコプターや航空機、ドローンなどを迎撃する目的で運用される。 本兵器は、発射前に標的の排気熱などの赤外線シグネチャーをロックオンした後は、ミサイルが自律して追尾・飛行する「撃ち放し(ファイア・アンド・フォーゲット)」能力を備えている。これにより、射手は発射直後に素早く安全な場所へ退避・遮蔽することが可能である。冷戦期のソ連によるアフガニスタン侵攻において、現地のムジャヒディンに供給され多数のソ連軍機を撃墜したことでその高い実戦能力と信頼性が世界的に証明された。その後も数多くの近代化改修が重ねられており、マイクロプロセッサの刷新や赤外線・紫外線(IR/UV)の二波長シーカーの採用により、欺瞞用のフレアなどの妨害(カウンターメジャー)を識別して正確に目標を破壊する能力が向上している。歩兵による肩掛け発射だけでなく、車両やヘリコプター、艦艇など、幅広いプラットフォームに搭載可能な対空防御アセットとして、現在もアメリカ軍をはじめとする世界30カ国以上で第一線での運用が広く継続されている。
| Official Name (正式名称): | FIM-92 Stinger |
| Country of Origin (開発国): | アメリカ合衆国 |
| Manufacturer (製造メーカー): | RTX (旧 Raytheon Missiles & Defense、基本設計は General Dynamics) ※欧州生産コンソーシアム(独 Airbus Defence and Space 等)やトルコ Roketsan 社による正規ライセンス生産モデルを含む |
| Designed (設計年): | アメリカ陸軍の要請を受けたジェネラル・ダイナミクス社を中心に1967年からFIM-43 レッドアイの改良計画(レッドアイ II)として設計・開発が開始され、1971年の計画承認と1972年3月の「スティンガー」への改称、1978年の量産契約締結を経て、1981年にアメリカ軍において公式に初期作戦能力(IOC)を獲得したことで運用が開始 |
| Primary Operators (主な運用組織): | アメリカ合衆国:アメリカ陸軍(各防空砲兵部隊、第82空挺師団等の空挺・軽歩兵部隊において通常型を運用。近接防空プラットフォームとして「AN/TWQ-1 アベンジャー」車載システム、前方展開型ストライカー装甲車に統合された「DE M-SHORAD」、さらに戦闘ヘリ搭載用の空対空仕様「ATAS(Air-to-Air Stinger)」を全軍で大規模運用中)、アメリカ海兵隊(各低空防空(LAAD)大隊においてMANPADS型を運用)、アメリカ海軍(艦艇自衛用の臨時の防空アセットとして限定運用) ウクライナ:ウクライナ陸軍、ウクライナ空中襲撃軍、ウクライナ空軍、ウクライナ海軍(ロシアによる全面侵攻に対抗するため、アメリカ、リトアニア、ラトビア、オランダ、ドイツなど欧米多数の国々から軍事支援として数千発規模を受領。歩兵携帯の迎撃ユニットや、巡航ミサイル・ドローンを狙う「機動防空グループ(Mobile Air Defense Groups)」において通常型および各近代化バリアントを大規模に実戦運用中) ドイツ:ドイツ陸軍(陸軍歩兵部隊・装甲部隊の防空アセット、および「EC665 ティーガー」攻撃ヘリへの空対空仕様「ATAS」を配備運用中。自国アイルブス社がライセンス生産を担当し、自国仕様を「Fliegerfaust 2」の制式名で主力運用。さらにNATO共同枠組みで最新の「FGM-92K Block I」の追加調達契約を公式締結) イタリア:イタリア陸軍(陸軍の歩兵部隊、および第12次対空砲兵連隊などの防空専門ユニットにおいて通常型を運用。近年、ドイツおよびオランダと共同で、NATO調達局(NSPA)を介した最新モデル「FIM-92K Stinger Block I」の大規模な複数年調達・更新契約を公式に締結し運用を進行中) オランダ:オランダ王立陸軍、オランダ王立海軍(陸軍の統合地上防空司令部(DGLC)下の防空部隊において運用中。「フェネック」軽装甲車にアベンジャーに類する車載発射機を統合した独自の自走防空派生システム「Fennek Stinger Weapon Platform(SWP)」を公式配備・現役運用中。イタリア・ドイツ同様に最新の「FIM-92K」共同調達を進行中) ポルトガル:ポルトガル陸軍、ポルトガル海軍陸戦隊(陸軍の対空砲兵連隊(RAA)や各種機械化旅団の野戦防空ユニット、および海軍陸戦隊部隊において、標準的な携帯式低空対空防御ミサイルアセットとして通常型・近代化バリアントを公式配備・現役運用中) デンマーク:デンマーク陸軍(野戦防空および防空抑止能力の維持を目的に通常型を公式調達。陸軍の各歩兵・防空ユニットにおいて分隊携行型空対空防衛アセットとして長期にわたり現役運用中) クロアチア:クロアチア陸軍(本土防衛およびNATO基準への野戦防空能力適合を目的として通常型を調達。各歩兵旅団の野戦防空小隊等において公式配備・現役運用中) スロベニア:スロベニア軍(地上防衛部隊および航空防空旅団の野戦防空セクションにおいて、自国の主要な携帯式地対空ミサイル(MANPADS)アセットとして通常型を公式調達・第一線で現役運用中) チャッド:チャッド国家軍(1980年代のリビア・チャッド紛争期に、リビア軍航空機に対抗するため米国より緊急軍事援助として通常型を公式調達。現在も陸軍の対空防衛アセットとして公式保有・長期運用中) アンゴラ:アンゴラ軍(冷戦期のアンゴラ内戦時、反政府武装組織UNITAが米国から秘密裏に大量の通常型を供与され運用。内戦終結後、政府軍(アンゴラ軍)がこれらを回収・統合し、現在は正規軍の公式対空備蓄・防空アセットとして保有運用中) バングラデシュ:バングラデシュ陸軍(陸軍の野戦防空部隊および特定の歩兵ユニットにおいて、低空空襲脅威への対抗および平和維持活動(PKO)時の自衛防空能力担保を目的として公式調達・保有運用中) 日本:陸上自衛隊(1980年代より米国の有償軍事援助(FMS)等を通じて通常型(地対空誘導弾 stinger)を公式に調達。地上部隊が運用する歩兵携帯(肩掛け)型は、国産の後継システムである「91式携帯地対空誘導弾(SAM-2・SAM-3)」および「91式改」への更新が大部分で完了し実質的に退役。ただし、対戦車ヘリコプター部隊などが運用する戦闘ヘリ「AH-64D アパッチ・ロングボウ」の自衛用アセットとして、空対空仕様の派生型である「ATAS(Air-to-Air Stinger)」を現在も公式に現役維持・運用中) 台湾(中華民国):中華民国陸軍、中華民国海軍陸戦隊、中華民国憲兵隊(陸軍の各野戦防空部隊、海兵隊、および要人警護・拠点防衛を担う憲兵部隊において主力MANPADSとして公式配備。さらに、車載型の「AN/TWQ-1 アベンジャー」システムや、近代化艦艇に搭載される2連装発射機「DMS(Dual Mount Stinger)」、およびAH-64Eアパッチ戦闘ヘリ用の空対空仕様「ATAS」を島嶼防衛の中核として大量運用中) イギリス:イギリス陸軍、イギリス海軍(フォークランド紛争期にSAS(特殊空挺部隊)が極秘裏に受領して以降、限定的に通常型を公式保有。さらに海軍の補助艦艇や精鋭の王立海兵隊部隊において、低空空爆やUAVに対抗する緊急近接防空用アセットとして公式運用中) トルコ:トルコ陸軍、トルコ海軍(自国の防衛大手ロケトサン(Roketsan)社が欧州生産コンソーシアムの下で主要なライセンス生産を担い、自国軍の主要歩兵旅団へ通常型および近代化型を大量配備。また、自国製T129 ATAK攻撃ヘリコプター等への空対空仕様の統合同様、装甲車載型の独自防空システム等のコンポーネントとしても広く公式運用中) ギリシャ:ギリシャ陸軍、ギリシャ空軍(欧州生産コンソーシアムの加盟国として通常型・近代化RMP型を公式に大量調達。陸軍の野戦防空ユニットや、空軍の主要基地防空警備部隊において第一線の主力MANPADSとして公式運用中) リトアニア:リトアニア陸軍(バルト三国の防衛能力近代化の核心として通常型を公式に調達・運用中。2022年には自軍の防空備蓄からウクライナ軍へ直接的な緊急軍事支援として一部を公式供与した実績を持つ) ラトビア:ラトビア陸軍(リトアニア同様、国境防衛および歩兵部隊の低空対空防御アセットとして通常型・近代化バリアントを公式に調達・現役運用中。ウクライナへの公式軍事援助実績あり) モロッコ:モロッコ王立陸軍(北アフリカ地域における防空近代化パッケージとして、米国政府(DSCA)による公式な対外有償軍事援助(FMS)の承認に基づき、最大600発規模の最新型「FIM-92K Stinger Block I」および関連の地上サポート装備を公式調達・全部隊配備に向けて運用中) サウジアラビア:サウジアラビア陸軍、サウジアラビア国家警備隊(SANG:各機械化歩兵部隊の防空小隊等において、イエメン国境付近でのドローン迎撃やインフラ防衛を目的として、通常型および近代化バリアントを公式に大量調達・現役運用中) エジプト:エジプト陸軍(陸軍の主要機械化歩兵師団、および野戦防空軍の歩兵携行ユニットにおいて、低空目標に対抗する軽量低コスト防空アセットとして通常型を公式調達・長期にわたり現役運用中) イスラエル:イスラエル国防軍(IDF:陸軍および空軍の戦術防空ユニットにおいて通常型を調達・保有運用。イスラエル軍では自国制式名を「バカン(Barkan)」と呼称。なお、近年の戦術防空は独自の「アイアンドーム」や「アイアンビーム」等への依存度が高いが、歩兵分隊レベルの即応防空アセットとして保有継続中) 大韓民国:大韓民国陸軍、大韓民国海兵隊(1980年代から90年代にかけて米国から多数の通常型を公式調達。前方展開の各歩兵師団や、西北離島を防御する海兵隊の防空ユニットにおいて現役運用。なお、現在は国産の「新弓(KP-SAM)」へのリプレイスが並行進行中) パキスタン:パキスタン陸軍(過去の紛争期より、米国から公式に調達された通常型を陸軍歩兵部隊の戦術野戦防空アセットとして公式に保有・長期運用中) インド:インド陸軍、インド空軍(近年、米国から導入したAH-64Eアパッチ戦闘ヘリコプターの自衛・空対空武装アセットとして、専用の空対空仕様「ATAS(Air-to-Air Stinger)」を公式調達し第一線で現役運用中) チリ:チリ陸軍、チリ海軍(陸軍の特科防空部隊および海兵隊ユニットにおいて、南米地域における標準的な最高水準の携行型低空対空ミサイルアセットとして通常型を公式調達・配備運用中) コロンビア:コロンビア陸軍(国内の反政府武装勢力や不法航空機・ドローンの監視・迎撃を目的として、通常型を公式調達・保有運用中) スイス:スイス陸軍(陸軍の歩兵部隊および防空部隊において、1980年代後半からの公式なライセンス生産合意に基づき、自国内RUAG社等で組み立てられた通常型・近代化バリアントを国境・拠点防衛用として公式配備・現役運用中) |
| Type (種類): | Man-portable air-defense system (MANPADS) (携帯式地対空誘導弾) ※攻撃ヘリ搭載用の空対空ミサイル(ATAS:Air-to-Air Stinger)や、車両載せ型近接防空システム(アベンジャー等)としての派生運用も広く行われている |
| Caliber / Diameter (口径/ミサイル直径): | ミサイル本体(弾体直径): 70 mm (2.75 インチ) ランチャー外径: 約 90 mm |
| Guidance System (誘導方式): | Passive infrared homing / Negative ultraviolet guidance (赤外線/紫外線二波長パッシブ誘導方式) ※初期型(A型)は赤外線(IR)画像誘導のみでしたが、B型(Stinger POST)以降は赤外線と紫外線(IR/UV)の二波長シーカーを同時採用し、敵航空機が放出する欺瞞用フレア(熱源カウンターメジャー)を正確に識別・排除して追尾する能力が備わっている、最新のK型では外部データリンクによる中間誘導を併用 |
| Overall Length (全長/キャニスターサイズ): | ミサイル単体の全長: 1,370 mm (1.37 m) ランチャー(発射・保管筒)収納時の全長: 1,520 mm (1.52 m) |
| Wingspan (翼幅): | 展開時: 137 mm 〜 140 mm (※一部マニュアル値およびフィンを含む最大幅は 160 mm) 折り畳み時: 70 mm (※発射筒内部では弾体直径に密着して密閉収納され、射出直後にスプリングによって自動展開される) |
| Weight (重量/総システム重量): | ミサイル単体重量: 10.1 kg 運用状態の総システム重量(グリップストック発射機・即応弾含む一式): 15.2 kg 〜 15.7 kg |
| Flight Speed (飛翔速度): | Max Mach 2.2 〜 2.54 (秒速 約 745 m 〜 864 m) |
| Effective Range (有効射程): | 最小射程: 160 m 〜 200 m 最大有効射程: 4,800 m 〜 5,000 m (約 5 km) 最大交戦高度: 3,500 m 〜 3,800 m |
| Warhead & Propulsion (弾頭/推進方式): | 弾頭: High-explosive fragmentation (HE-FRAG) warhead (爆風破片効果弾頭) ※総重量 3 kg(爆薬本体は 1.02 kg のHTA-3、またはヘキソーゲン等)の炸薬が、 pyrophoric titanium(自然発火性チタン)スリーブに覆われており、目標の航空機外殻を貫通した直後に内部で遅延衝撃起爆(Impact fuze)し、強烈な破片と火災を飛散させる 推進方式: Two-stage solid-fuel rocket motor (2段階式固体燃料ロケットプロペラントシステム) ※射手の安全を確保するため、初めに低圧の「射出用ブースター(固体燃料)」によって発射筒から押し出され、射手から十分に離れた空中で「主飛行ロケットモーター(固体燃料)」が点火し、高亜音速から最高超音速(マッハ2超)へと一気に加速する |
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- By U.S. Marine Corps photo by Sgt. Scott Jenkins – This image was released by the United States Marine Corps with the ID 240906-M-QP496-1467 (next).This tag does not indicate the copyright status of the attached work. A normal copyright tag is still required. See Commons:Licensing.العربية ∙ বাংলা ∙Bahaso Jambi ∙Deutsch ∙ Deutsch (Sie-Form) ∙ English ∙ español ∙ euskara ∙ فارسی ∙ français ∙ italiano ∙ 日本語 ∙ 한국어 ∙ македонски ∙ മലയാളം ∙ Plattdüütsch ∙ Nederlands ∙ polski ∙ پښتو ∙ português ∙ русский ∙ slovenščina ∙ svenska ∙ Türkçe ∙ українська ∙ 简体中文 ∙ 繁體中文 ∙ +/−, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=156124270








