
概要と開発の背景
AH-64D Apache Longbow(アパッチ・ロングボウ)は、1990年代初頭にアメリカ合衆国のMcDonnell Douglas(現Boeing)が開発し、1997年にアメリカ陸軍へ配備された全天候型攻撃ヘリコプターである。1980年代から運用されていた初期型AH-64A Apacheは高い攻撃力を備えていたものの、夜間や悪天候下、あるいは視界を遮る煙幕や霧などの環境下における標的探知・追尾能力に限界が存在した。さらに、従来のレーザー誘導方式AGM-114 Hellfireミサイルは射撃後に目標へレーザーを照射し続ける必要があり、射撃中の機体曝露による生存性の低下が深刻な課題であった。冷戦末期から湾岸戦争にかけての運用教訓を踏まえ、光学センサーのみに依存せず、多次元の戦場において多数の敵装甲目標を短時間で同時処理できる強力な全天候型火力打撃システムとして、AH-64Aの大規模近代化改修モデルであるAH-64Dの開発がスタートした。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、メインローターマスト頂部に搭載されたドーム状のAN/APG-78 Longbowミリ波火器管制レーダー(FCR)と、それに統合された高度な射撃統制メカニズムを採用している点にある。このミリ波レーダーは、遮蔽物や樹木からレーダー部のみを出して全周360度の標的を即座に走査し、最大128個の目標を同時追尾して重要度別に16個の目標を自動抽出・優先順位付けする機能を有する。これにより、ミリ波レーダー誘導方式のAGM-114L Longbow Hellfireミサイルを用いた「打ち放し(Fire-and-Forget)」射撃が可能となり、自機を隠蔽したまま短時間で複数の敵装甲車輌を安全に撃破できる。前級AH-64Aと比較して、デジタル通信データリンク(IDM)を介して非レーダー搭載機へ目標情報をリアルタイムで共有する高度なチームネットワーク機能が追加された。パワートレインには1基あたり1,890 shpを発揮するGeneral Electric製T700-GE-701Cターボシャフトエンジン2基を搭載している。
運用実績と評価
1997年のアメリカ陸軍への初期配備以降、イギリス陸軍(WAH-64 / Apache AH1仕様)、陸上自衛隊、オランダ空軍、イスラエル空軍、シンガポール空軍、エジプト空軍など世界多数の国々で制式採用された。実戦における初投入となったアフガニスタン紛争やイラク戦争(2003年〜)では、ミリ波レーダーとデータリンクを活用した広域索敵、および30mm M230チェーンガンやHellfireミサイルによる精密な地上火力支援において圧倒的な戦闘能力を示した。一方で、高標高・酷暑環境(ハイ・アンド・ホット)下での出力不足や、精密電子機器およびレーダーシステムの維持整備コストの高騰、機体重量増加に伴う機動性の制約が現場での具体的な課題となった。陸上自衛隊においては調達価格の高騰により13両で調達が打ち切られる結果となった。しかし、その革新的な火器管制機能とネットワーク戦能力は現代攻撃ヘリコプターの基準を確立し、後の最新改修型AH-64E Apache Guardianへと発展する確固たる技術基盤となった。
| Official Name (正式名称) | AH-64D Apache Longbow |
| Country of Origin (開発国) | アメリカ合衆国 |
| Manufacturer (製造メーカー) | Boeing (McDonnell Douglas) |
| Designed (設計年) | 設計・開発は1990年開始、1997年にアメリカ陸軍へ配備 |
| Primary Operators (主な運用組織) | アメリカ合衆国:アメリカ陸軍 ― AH-64D Apache Longbowを運用 オランダ:オランダ空軍 ― AH-64Dを運用 日本:陸上自衛隊(戦闘ヘリコプター隊など) ― AH-64Dを運用 韓国:大韓民国陸軍 ― AH-64Dを運用 シンガポール:シンガポール空軍 ― AH-64Dを運用 ギリシャ:ギリシャ陸軍 ― AH-64DHAを運用 クウェート:クウェート空軍 ― AH-64Dを運用 エジプト:エジプト空軍 ― AH-64Dを運用 アラブ首長国連邦:アラブ首長国連邦空軍 ― AH-64Dを運用 サウジアラビア:サウジアラビア陸軍 ― AH-64Dを運用 台湾:中華民国陸軍 ― AH-64E導入前にAH-64D Block III相当機を運用 イスラエル:イスラエル空軍 ― AH-64D “Saraf” を運用 インド:インド空軍 ― AH-64D系導入評価・訓練運用歴あり イギリス:イギリス陸軍(陸軍航空隊) ― WAH-64/AH Mk.1(AH-64D派生型)※現在は退役済み、AH Mk.2を運用中 |
| Crew (乗員) | 2名 |
| Dimensions (寸法):全長、全幅(翼幅)、全高 | L: 17.73m / W: 14.63m / H: 4.05m (w/ Radar) |
| Empty / Max Takeoff Weight (自重 / 最大離陸重量) | 5,165 kg / 10,100 kg |
| Powerplant (エンジン):型式、推力 | 2x T700-GE-701C/D turboshafts (1,890 shp each) |
| Max Speed (最大速度):マッハ表記、高度別の速度 | Mach 0.23 / 284 km/h |
| Combat Range (戦闘行動半径) / Ferry Range (航続距離) | 480 km / 1,900 km |
| Service Ceiling (実用上昇限度) | 15,850 ft(4.831km) |
| Hardpoints (ハードポイント):ミサイルや爆弾の搭載能力 | 4x Pylons (Hellfire, Hydra 70) |
| Fixed Armament (固定武装):機関砲の口径、弾数 | 30mm M230 Chain Gun (1,200 rounds) |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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画像の引用元
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