

概要と開発の背景
91式携帯地対空誘導弾(改)(きゅういちしきけいたいちたいくうゆうどうだん かい / SAM-2B)は、2002年度(平成14年度)より防衛省技術研究本部(現:防衛装備庁)と株式会社東芝によって開発が進められ、2007年度(平成19年度)に調達・部隊配備が開始された自衛隊の個人携帯式地対空ミサイルシステム(MANPADS)である。部隊内では「91式SAM(改)」「SAM-2B」、広報向け愛称は「ハンドアロー」と呼ばれる。本火器は、陸上・海上・航空自衛隊の共通装備として1991年に制式化された「91式携帯地対空誘導弾(SAM-2)」のフォローアップ事業(能力改修)として着手された。初期型の91式は可視光画像と赤外線の複合誘導を採用していたが、可視光に依存する構造上、夜間における目標対処能力に制限が存在した。さらに、近隣諸国の航空戦力の近代化や低空侵攻技術の発達、ならびに装備全体のライフサイクルコスト抑制のニーズに対応するため、夜間戦闘能力の獲得と耐妨害性能の向上、低コスト化を兼ね備えた後継火器として開発がスタートした。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、ミサイルシーカーの誘導方式を従来の「可視光画像+赤外線レティクル誘導」から、最新の「赤外線画像(IIR)」誘導方式へ刷新した点にある。これにより、可視光が得られない完全な夜間や悪天候下であっても、目標航空機が発する熱画像を精密に識別・追尾し、確実に着射・無力化する構造が確立された。また、敵が放出するフレアなどの赤外線妨害手段(IRCM)に対する耐電子妨害能力(ECCM)も大幅に向上した。システムは射出用コールド・ブースターで発射筒から飛翔体を射出した後、射手から十分離れた安全な位置で飛翔用ロケットモーター(サステナー)へ点火する「Soft Launch(無煙二段階推進)」機構を踏襲しており、発射時の風圧や位置暴露のリスクを低減している。前級の初期型91式と比較して、夜間暗視装置との親和性が高まったほか、93式近距離地対空誘導弾(SAM-3)の発射装置やOH-1観測ヘリコプターの空対空ミサイルランチャーとの共用性・互換性試験も実施され、単体携行だけでなく車載・機載システムへ多角的に適用可能な柔軟性を備えている。
運用実績と評価
2007年度の調達開始以降、陸上自衛隊の各普通科連隊や特科部隊、機甲部隊の対空自衛火器として幅広く配備されたほか、航空自衛隊や海上自衛隊の基地防空隊・警備部隊へも順次導入された。実地演習においては、北海道の静内対空射撃場などにおける実弾射撃訓練へ投入され、夜間・薄暮時における低空高速標的やヘリコプター標的対して高い着射能力が証明された。前級の初期型91式と比較して、夜間・視界不良環境下における即応対処能力と命中精度が飛躍的に高まった点が具体的に実証された。現代の安全保障環境においては、従来の有人機や攻撃ヘリコプターにとどまらず、低高度で侵入する自爆ドローンや小型無人航空機(UAV)、巡航ミサイルといった新たな脅威に対処可能な可搬型防空アセットとして重宝されている。現在においても自衛隊のあらゆる展開部隊や重要拠点の足元を守る主力MANPADSとして現役運用が続けられている。
| Official Name (正式名称): | 91式携帯地対空誘導弾(改) / Type 91 Kai surface-to-air missile |
| Country of Origin (開発国): | 日本 |
| Manufacturer (製造メーカー): | 東芝(誘導弾システム主契約) |
| Designed (設計年): | 開発設計は、防衛省技術研究本部(現・防衛装備庁)と東芝によって2002年度(平成14年度)から開発経費約26億円を投じて本格的な試作や設計が開始され、2007年度(平成19年度)の防衛予算において初めて23セットの予算が計上され調達(取得)が開始されたことで正式に運用を開始 |
| Primary Operators (主な運用組織): | 日本:陸上自衛隊(全国の普通科連隊の高射中隊、特科部隊、戦車連隊(機甲科)、偵察隊などの対空自衛火器として広く実戦配備・部隊運用されているほか、対戦車ヘリコプター隊等の航空部隊において観測ヘリコプター「OH-1」の空対空自衛武装としても統合運用中)、海上自衛隊、航空自衛隊(主要な航空基地やレーダーサイト、防空が必要な重要拠点の防護を担う「基地防空隊(空自の第101基地防空隊など)」や「航空警備隊」などの警備・防空武装組織において現役運用中) |
| Type (種類): | 携帯式防空ミサイルシステム (MANPADS) |
| Caliber / Diameter (口径/ミサイル直径): | 80mm |
| Guidance System (誘導方式): | 赤外線画像誘導(IIR)方式 (初期型の可視光/赤外線複合誘導から刷新され、夜間戦闘能力や低熱源目標への対処能力を強化) |
| Overall Length (全長/キャニスターサイズ): | ミサイル単体全長 1,430mm 発射機(ランチャー外筒)全長 約1,470mm |
| Wingspan (翼幅): | 約90mm (キャニスター格納時の全幅。前翼・後翼ともに折り畳み式であり、展開時の詳細な翼幅は非公表) |
| Weight (重量/総システム重量): | ミサイル単体重量 約9kg (使い捨ての発射筒(キャニスター)封入状態では11.5kg) 総システム重量(肩上重量・戦闘重量)約17.0kg (発射機、外部電源、敵味方識別装置(IFF)を組み合わせた運用状態) |
| Flight Speed (飛翔速度): | 最大速度マッハ1.9 |
| Effective Range (有効射程): | 最大射程 約5,000m |
| Warhead & Propulsion (弾頭/推進方式): | 指向性爆風破片効果弾頭 (着発信管付き) 推進方式:2段式固体燃料ロケット・モーター(射出用ブースター + 無煙推進薬採用の飛翔用サステイン・モーター) |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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画像の引用元
- By U.S. Air Force Photo/Airman 1st Class Jonathan Snyder – JASDF stingers adds more realism to the combat scenarios at RED FLAG-Alaska (USAF Eielson AFB HP) Photo No.2http://www.eielson.af.mil/shared/media/photodb/photos/080613-F-4127S-018.jpg, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=19416055
- By US Air Force Airman 1st Class Jonathan Snyder – http://www.defenseimagery.mil/index.html, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5795475












