Martlet / LMM (Lightweight Multirole Missile)

Martlet / LMM (Lightweight Multirole Missile)
ウクライナ空中機動軍(DShV)の兵士

概要と開発の背景

Martlet(LMM: Lightweight Multirole Missile)は、2000年代後半にイギリスのThales Air Defence(現 Thales Group)が開発に着手し、2020年代よりイギリス軍などで本格配備が進められている13kgクラスの軽量多目的誘導ミサイルシステムである。「Martlet(マートレット)」はイギリス海軍における制式名称である。開発の背景には、従来運用されてきた大規模な対艦ミサイル(Sea Skua等)や大型地対空ミサイルでは対応が困難な、現代の非対称戦における新しい脅威の台頭が存在した。具体的には、沿岸域や洋上における小型高速艇(FIAC)の群れによる強襲攻撃(スウォーム攻撃)や不審船、不審な無人航空機(UAV)、さらには地上で交戦する軽装甲車両などが挙げられる。これら小型・高機動な目標に対し、大型ミサイルを投入するのはコストパフォーマンスが悪く、同時対処数にも限界があった。これらを解決し、低コストで高精度、かつ多種多様なプラットフォームから発射可能な多目的アセットの獲得を目指して開発がスタートした。

構造と技術的特徴

構造上の最大の特徴は、全備重量約13kg、全長1.3mという極めてコンパクトな単一ボディでありながら、空対地・空対空・地対空・地対水上のあらゆる射撃モードに対応する柔軟な設計思想にある。推進器には2段階固形燃料ロケットモーターを採用し、発射後に安全距離を確保してから加速して最高速度マッハ1.5以上を発揮する。主要な誘導方式には、海面の波や雨・霧など環境の乱れ、各種電子妨害(ECM)および熱源デコイ(フレア)の影響を一切受けない「レーザービームライディング(Laser Beam Riding)」誘導を採用しており、状況に応じて半アクティブレーザー(SAL)や赤外線(IR)シーカーの統合も可能である。弾頭には約3kgの爆風破砕・成形炸薬(HEAT)複合弾頭と高精度レーザー近接フューズを搭載し、軽装甲車両から小型艇、低空を飛翔する飛行目標まで確実な無効化能力を獲得している。超高速の単一運動エネルギー弾頭を用いるStarstreak等と比較して、低反動で小型砲塔やヘリコプター、肩掛け発射機へ容易に統合できる汎用性が大きな工夫となっている。

運用実績と評価

2020年以降の本格導入を経て、Martlet / LMMはイギリス海軍のWildcat HMA2海洋哨戒ヘリコプターやDS30M Mk2 30mm艦載機関砲統合型発射機、イギリス陸軍、ならびに軍事支援を通じて供与されたウクライナ軍で制式運用されている。実際の運用においては、イギリス海軍の哨戒ヘリコプターから5連装ポッド(最大20発搭載)で発射される洋上・沿岸防衛火力を担うほか、ウクライナ紛争では地上発射型(MANPADS/LML)やStormer自走発射機に統合されて実戦投入された。ロシア軍の観測用・攻撃用無人航空機(UAV)や低空侵入する攻撃ヘリコプター、巡航ミサイルに対する高精度な迎撃ミッションにおいて、高い命中率と強靱な耐妨害性能を実証した。単一のミサイルで陸・海・空のあらゆる小規模目標へ精密打撃を加えられるコストパフォーマンスに優れたマルチロール火器として、現代の多層防空および近接打撃において極めて重要な地位を占めている。

Official Name (正式名称):Martlet / LMM (Lightweight Multirole Missile)
Country of Origin (開発国):イギリス
Manufacturer (製造メーカー):Thales Air Defence
Designed (設計年):開発・設計は2008年に開始され、2021年に初期運用能力(IOC)を獲得して正式に運用が開始された(2025年10月に完全運用能力を宣言)
Primary Operators (主な運用組織):イギリス:イギリス海軍(AW159 Wildcatヘリコプター等)、イギリス陸軍(第12王立砲兵連隊、第106王立砲兵連隊/Stormer自走発射機、三脚式、肩打ち等)、イギリス海兵隊(第30情報開拓群空防小隊等)、イギリス空軍(王立空軍連隊)
ウクライナ:ウクライナ軍(ウクライナ陸軍等/英国供与品、MANPADS肩打ち発射機およびStormer装甲防空車にて運用)
インドネシア:インドネシア陸軍(第14防空砲兵大隊「Yonarhanud 14」)
サウジアラビア:サウジアラビア軍(Shikra防空システム構成品として導入・運用)
Type (種類):多目的誘導ミサイル (Precision Strike Missile / Lightweight Multirole Missile – 対地・対水上・対空・空対地)
Caliber / Diameter (口径/ミサイル直径):76 mm (3.0 in)
Guidance System (誘導方式):レーザービームライディング方式 (Laser beam riding)
Overall Length (全長/キャニスターサイズ):1.3 m (4 ft 3 in / 51.2 in)
Wingspan (翼幅):260 mm (10.2 in)
Weight (重量/総システム重量):ミサイル単体重量 13 kg (28.6 lb / 29 lb)
Flight Speed (飛翔速度):最大速度 マッハ 1.5 以上 (More than Mach 1.5 / 約 1,150 mph)
Effective Range (有効射程):最小射程 400 m (437 yd / 0.25 mi) 〜 最大射程 6 km – 8 km (3.7 mi – 5.0 mi)
Warhead & Propulsion (弾頭/推進方式):成形炸薬・破片効果複合弾頭 3 kg (6.6 lb / 105.8 oz)(レーザー近接信管 / Laser proximity fuze) / 2段階固形燃料ロケットモーター (Two-stage solid propellant rocket motor)

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

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画像の引用元
  1. By АрміяInform – https://web.archive.org/web/20221219121704/https://armyinform.com.ua/2022/12/19/oficzer-zsu-rozpoviv-z-chogo-efektyvnishe-znyshhuvaty-vorozhi-povitryani-czili/, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=128011151
  2. By АрміяInform – https://web.archive.org/web/20221219121704/https://armyinform.com.ua/2022/12/19/oficzer-zsu-rozpoviv-z-chogo-efektyvnishe-znyshhuvaty-vorozhi-povitryani-czili/, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=128011152
  3. By Ministry of Defence – https://www.defenceimagery.mod.uk/, OGL v1.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=111378841

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