
概要と開発の背景
シコルスキー HH-60W ジョリー・グリーン II(Sikorsky HH-60W Jolly Green II)は、2010年代半ばから末にかけてアメリカの Sikorsky Aircraft(Lockheed Martin Company 傘下)が開発し、2019年に初飛行、2022年に初期作戦能力(IOC)を獲得したアメリカ空軍向け戦闘捜索救難(CSAR)ヘリコプターである。開発の背景には、ベトナム戦争期から湾岸戦争、アフガニスタン紛争に至るまで長年戦闘捜索救難の中核を担ってきた前級 HH-60G Pave Hawk の著しい機体構造老朽化とシステム陳腐化が存在した。高脅威・悪天候下の敵陣深くへ進出し、孤立した搭乗員や要員を迅速に捜索・回収するCSAR任務において、航続距離の不足、ホバリング能力の向上、最新の電子戦自衛能力およびデータリンク統合が強く求められた。これに応えるため、アメリカ陸軍の最新型多用途ヘリコプター UH-60M Black Hawk をベースにした次世代CSAR機として開発・調達がスタートした。愛称の「Jolly Green II」は、ベトナム戦争で活躍した伝説的救難機 HH-3E / HH-53 Jolly Green Giant に敬意を表して命名された。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、UH-60M の広範なシステムを継承しつつ、機内燃料タンク容積を前級 HH-60G の360ガロン(約1,362リットル)から644ガロン(約2,438リットル)へと大幅に拡大した新設計の内部燃料システムにある。これにより外部ドロップタンクに依存することなく航続距離と滞空時間が格段に伸び、機首空中給油プローブを用いた長距離進出能力と組み合わさることで高度な長距離救難ミッションを可能にしている。推進システムには General Electric Company 製 T700-GE-701D ターボシャフトエンジン2基(各約1,940馬力)と耐弾性に優れた広弦ブレード(ワイドコード・ローターブレード)を採用し、高温・高標高環境でのホバリング性能および揚力を大幅に向上させた。コクピットには多機能ディスプレー(MFD)を網羅した統合デジタル・グラスコクピット、高度なミッションデータリンク、高解像度赤外線・光学センサー(EO/IR)、ならびに新設計の12.7mm GAU-21重機関銃や7.62mm GAU-2/Aミニガンを支える外部銃架システムおよび最新のキャビン装甲が標準装備されている。
運用実績と評価
2020年11月からの空軍基地への納入開始、および2022年9月の初期作戦能力(IOC)獲得以降、HH-60W はアメリカ空軍(空戦コマンド[ACC]、空軍予備役コマンド[AFRC]、空軍州兵[ANG]、太平洋空軍[PACAF]、欧州空軍[USAFE]等)において制式採用され、従来の HH-60G Pave Hawk を順次代替・更新している。イタリアのアヴィアーノ空軍基地や日本の嘉手納基地、ムーディ空軍基地など、世界各地の主要拠点への配備が進められた。実際の訓練や展開運用においては、従来の Pave Hawk と比較して飛躍的に向上した燃料航続力、敵味方の戦闘情報をリアルタイム共有する二重戦術データリンク(Link 16等)による高い状況認識能力、ならびに過酷な環境下での高い機体信頼性と機動性が具体的に評価されている。戦闘捜索救難(CSAR)任務にとどまらず、傷病者後送(MEDEVAC)、人道支援・災害救援、ならびに特殊部隊の進出・回収ミッションを幅広く担う最新鋭救難アセットとして第一線で現役運用が続けられている。
| Official Name (正式名称) | HH-60W Jolly Green II |
| Country of Origin (開発国) | アメリカ合衆国 |
| Manufacturer (製造メーカー) | Lockheed Martin Sikorsky Aircraft Corporation |
| Designed (設計年) | ベース機であるUH-60Mからの開発・製造契約が2014年6月26日に締結され、同年11月24日に「HH-60W」と公式指定されて2019年5月17日に初飛行を行った。運用開始年については、2020年11月5日に最初の実戦配備機がアメリカ空軍へ引き渡され、2022年10月4日に初期作戦能力(IOC)を獲得して正式に運用が開始された。 |
| Primary Operators (主な運用組織) | アメリカ合衆国:アメリカ空軍(航空戦闘コマンドの第41救難飛行隊、太平洋空軍の第33救難飛行隊、空軍教育訓練コマンド、空軍装備コマンド、ニューヨーク州空軍の第101救難飛行隊などの各部隊で現役運用。またVIP輸送および政府継続性任務向けとして空軍ワシントン地区隊への導入・改修計画を進行中) ノルウェーによるFMSでの購入計画が一度承認されたが、その後の調達計画は中止 |
| Crew (乗員) | 4名 (パイロット 2名、特別任務航空兵(銃手) 2名) 積載能力として担架患者4名の設置や追加の空挺隊員の輸送が可能(最大搭乗人数は6 – 12名とされ任務によって変動) |
| Dimensions (寸法):全長、全幅(翼幅)、全高 | L (全長): 19.72 m (64.7 ft) (資料により 19.79 m (64 ft 11 in) とするデータも存在) W (全幅): 16.34 m (53.6 ft) (資料により 53 ft 8 in とするデータも存在、全幅はメインローター直径) H (全高): 5.10 m (16.7 ft) (資料により 5.16 m (16 ft 11 in) とするデータも存在) |
| Empty / Max Takeoff Weight (自重 / 最大離陸重量) | 自重: 不明 (運用重量として 10,206 kg (22,500 lb) のデータはあるが、空虚重量としての自重は公式データに記載がなく不明) 最大離陸重量: 10,297 kg (22,700 lb) (貨物積載時 10,659 kg (23,500 lb)、資料により最大総重量 10,206 kg (22,500 lb) とするデータも存在) |
| Powerplant (エンジン):型式、推力 | 型式: 2x General Electric T700-GE-701D ターボシャフトエンジン 推力: 各1,940 shp (資料により各1,857 shpとするデータも存在) |
| Max Speed (最大速度):マッハ表記、高度別の速度 | 高度別の速度: 176 mph (283 km/h / 153 knots) 海面高度時 (資料により最大対気速度 176 knots とするデータも存在) |
| Combat Range (戦闘行動半径) / Ferry Range (航続距離) | Combat Range: 195 nm (361 km) ※作戦半径 Ferry Range: 599 nm (1,110 km / 690 miles) ※空中給油なしでの最大航続距離(空中給油対応、資料により 450 nm または 480 nm とするデータも存在) |
| Service Ceiling (実用上昇限度) | 6,096 m (20,000 ft) (資料により 4,267 m (14,000 ft) とするデータも存在) |
| Hardpoints (ハードポイント):ミサイルや爆弾の搭載能力 | None |
| Fixed Armament (固定武装):機関砲の口径、弾数 | 固定武装は非搭載。ただし銃手席用に 2x 7.62mm ミニガン または .50口径機関銃 を装備可能 |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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画像の引用元
- By Acroterion – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=119876888












