
概要と開発の背景
中距離多目的誘導弾(ちゅうきょりたもくてきゆうどうだん / MMPM)は、2004年度(平成16年度)から開発が開始され、2011年(平成23年)に陸上自衛隊へ制式導入された自走式の中距離多目的誘導弾システムである。主契約者は川崎重工業株式会社(Kawasaki Heavy Industries, Ltd.)が務めた。当時、陸上自衛隊で運用されていた87式対戦車誘導弾(87中MAT)や79式対舟艇対戦車誘導弾(79重MAT)は老朽化が進んでおり、後継火器の導入が急務となっていた。また、超遠距離攻撃を可能とした96式多目的誘導弾システム(96MPMS)は極めて高度な性能を備えていたものの、6両で1個分隊を構成する大型かつ高額なシステムであったため、全土への大量配備には制約が存在した。これを受け、87中MATや79重MATの運用枠組みを統合・刷新し、高機動車1両に全システムをコンパクトに集約した自走機動型のアセットとして開発が進められた。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、高機動車(トヨタ自動車株式会社 / Toyota Motor Corporation製派生車体)の車台に、6連装発射機、光学・赤外線センサー、車載射撃指揮装置を1両へオールインワンで搭載した点にある。これにより、1両単独で目標の索敵から照準、発射までを完結できる高機動な即応構造が確立された。誘導方式には赤外線画像(IIR)誘導とセミアクティブ・レーザー(SALH)誘導を組み合わせた方式を採用している。発射前に目標を捕らえて発射する発射前ロックオン(LOBL)に加え、遮蔽物の陰から発射した後に誘導を行う発射後ロックオン(LOAL)や同時多目標対処能力を実現した。さらに、前級システムと比較して自走化と軽量小型化が達成されたことで、C-130HやC-2輸送機、CH-47JA大型輸送ヘリコプター等による空輸性が大きく向上したほか、発射機を車上から取り外して地上に据え付け、離隔射撃を行う運用構造も組み込まれている。
運用実績と評価
2011年の導入以降、陸上自衛隊の各師団・旅団に所属する普通科連隊直轄の対戦車小隊や重迫撃砲中隊、第1空挺団、水陸機動団などへ順次配備された。実地演習においては、北海道の矢臼別演習場や富士総合火力演習、米国ヤキマトレーニングセンターでの実弾射撃演習等に投入され、優れた走破性と迅速な展開能力、多目標に対する精密な着射性能が証明された。従来の87中MATや79重MATを置き換える基幹対戦車火器として着実に定着した。1両で独立した即時対処が可能なシステム構成と、自衛隊の戦術データリンク(ネットワーク)接続による遠距離目標情報の共有能力が高く評価されている。現代における島嶼部防衛や機動展開部隊の核心的支援火器として配備・運用が続けられている。
| Official Name (正式名称): | 中距離多目的誘導弾 / Middle-range multi-purpose missile |
| Country of Origin (開発国): | 日本 |
| Manufacturer (製造メーカー): | 川崎重工業 |
| Designed (設計年): | 開発設計は2004年(平成16年)度から本格的に開始され、技術試験や各種評価を経て2009年(平成21年)度に開発が完了、2011年(平成23年)度から陸上自衛隊への納入および普通科部隊・対戦車専門部隊等への配備が始まったことで正式な運用を開始 |
| Primary Operators (主な運用組織): | 日本:陸上自衛隊(全国の普通科連隊に属する普通科中隊・対戦車小隊を中心に、79式重MATや87式中MATを更新・統合する形で広く配備。特に離島防衛の要となる西部方面隊の「第8普通科連隊(米子駐屯地)」や「西部方面普通科連隊(現・水陸機動団)」、第1空挺団などの快速展開部隊・普通科部隊に重点配備され、空中投下や軽快な陣地転換運用を行っている。) |
| Type (種類): | 対戦車誘導弾 / 対舟艇誘導弾 (車載式多目的ミサイルシステム) |
| Caliber / Diameter (口径/ミサイル直径): | 約140mm |
| Guidance System (誘導方式): | 光波ホーミング誘導方式 (赤外線画像誘導 IIR + セミアクティブ・レーザー・ホーミング方式 SALH の併用方式) |
| Overall Length (全長/キャニスターサイズ): | 約1,400mm |
| Wingspan (翼幅): | 約330mm (十字型に展開するポップアップ式の誘導翼・安定翼を装備) |
| Weight (重量/総システム重量): | ミサイル単体重量約26kg / 総システム重量は高機動車ベースの車体(全備重量3.9t)に発射装置(約2.7t)および射撃指揮装置等を統合した高機動車両1両に自己完結 |
| Flight Speed (飛翔速度): | 非公表 (レーザーおよび赤外線による追尾・シーカー特性から亜音速とされる) |
| Effective Range (有効射程): | 非公表 (一般に数km〜10km未満の中距離域とされ、前代の87式対戦車誘導弾(2,000m以上)を超える射程を保有) |
| Warhead & Propulsion (弾頭/推進方式): | 成形炸薬弾頭(HEAT/対戦車・対舟艇・対人など多様な標的に対応する多目的弾頭) / 推進方式:固形燃料ロケット・モーター |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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