TC-90

TC-90

概要と開発の背景

TC-90は、1970年代前半にアメリカのBeech Aircraft Corporation(現:Textron Aviation)が開発した双発ターボプロップビジネス機「King Air C90(キングエア C90)」をベースに改修され、1974年(昭和49年)より海上自衛隊へ導入された計器飛行練習機である。海上自衛隊では従来、大型多発機(P-2V-7やS2F-1等)の操縦士育成や航法教育用として「Beechcraft B-65」などを運用していた。しかし、主要哨戒機や輸送機のターボプロップ化に伴う飛行速度の向上、全天候下における計器飛行(IFR)教育の高度化、ならびに旧式訓練機の老朽化対応が急務となった。これを受け、信頼性の高いベストセラー双発機であったKing Air C90に自衛隊独自の各種無線・航法アビオニクスを統合した「TC-90」が制式採用され、徳島教育航空群(徳島航空基地)の第202教育航空隊への配備がスタートした。

構造と技術的特徴

構造上の最大の特徴は、高い信頼性と優れた燃料効率を誇るPratt & Whitney Canada製「PT6A-20」または「PT6A-135A」ターボプロップエンジン2基を搭載した全金属製低翼双発構造と、高度な計器飛行訓練に対応するコックピット設計にある。機体には与圧キャビンが備わっており、高高度における安定した巡航飛行が可能で、過酷な天候変化や悪天候下でも安定した訓練環境を提供する。コックピットは教官と学生が左右に並んで座る「サイド・バイ・サイド(並列複座)」配置であり、大型哨戒機P-3CやP-1、各種多発ヘリコプターへ進むパイロットに必要なマルチクルー(多座席)の相互連携、チェックリスト運用、および計器のみに頼る操縦手順を体得しやすい設計思想となっている。キャビン内には教官や他の学生が搭乗して航法訓練や観察を行える十分な容積を備え、効率的な訓練体系を実現している。

運用実績と評価

1974年の導入開始以降、計28機が海上自衛隊の徳島航空基地に配備され、半世紀近くにわたり海上自衛隊におけるすべての多発機操縦士(固定翼・回転翼)に対する計器飛行課程の基幹アセットとして運用されてきた。長年の運用において、連続離着陸訓練に耐える優れた耐久性とPT6Aエンジンの高い作動信頼性が具体的に証明された。さらに2016年以降、安全保障協力の一環として海上自衛隊で余剰となったTC-90がフィリピン海軍へ移管・供与された。フィリピン海軍では本機を練習機にとどまらず、自国周辺海域の洋上哨戒機・警戒監視機(ISR)として即応配備し、南シナ海での領海警戒監視において高い運用実効性を実証・評価された。日本国内でのパイロット育成のみならず、防衛装備・技術協力における重要な実績を兼ね備えたアセットとして特別な立ち位置を占めている。

Official Name (正式名称)TC-90
Country of Origin (開発国)アメリカ合衆国(日本で自衛隊向け無線機器等の搭載改修)
Manufacturer (製造メーカー)Beechcraft(原設計・製造。現在はTextron Aviation傘下)
Designed (設計年)1960年代に開発されたBeechcraft King Airを基に、1970年代初頭に海上自衛隊向け練習機として導入が進められ、1973年に海上自衛隊で運用が開始
Primary Operators (主な運用組織)日本:海上自衛隊(教育航空集団傘下の「徳島教育航空群 第202教育航空隊(徳島航空基地)」にて計器飛行訓練用の練習機としてTC-90を運用。また、各航空群や第61航空隊等で連絡輸送機仕様のLC-90も現役運用中)
フィリピン: フィリピン海軍(環境・作戦上の軍種は「フィリピン艦隊」直轄の「海軍航空ウイング(Naval Air Wing / 旧海軍航空グループ)」にて、日本から無償譲渡された元海自のTC-90を海洋監視・領海哨戒用のC-90として運用中)
Crew (乗員)2名(教官1名、訓練生1名。または操縦士2名)※後部座席にさらに訓練生等を追加搭乗させての運用も可能
Dimensions (寸法):全長、全幅(翼幅)、全高全長: 10.82 m × 全幅(翼幅): 15.32 m × 全高: 4.34 m
Empty / Max Takeoff Weight (自重 / 最大離陸重量)自重(空虚重量):約 2,590 kg / 最大離陸重量:約 4,378 kg(9,650 lb)
Powerplant (エンジン):型式、推力2x Pratt & Whitney Canada PT6A-21(ターボプロップ)、出力:各基 約 550 shp
Max Speed (最大速度):マッハ表記、高度別の速度マッハ表記:約 Mach 0.35(高高度)、高度別の速度:216 kt(約 400 km/h)(高度4,900mにおける最大巡航速度。海面高度での巡航速度は約180kt)
Combat Range (戦闘行動半径) / Ferry Range (航続距離)戦闘行動半径:非公開(訓練空域での数時間に及ぶ連続タッチアンドゴーや計器飛行訓練に十分な性能を保持) / 航続距離:約 2,150 km(最大燃料時)
Service Ceiling (実用上昇限度)約 8,560 m(28,100 ft)
Hardpoints (ハードポイント):ミサイルや爆弾の搭載能力なし(純粋な飛行操縦・計器飛行教育用の練習機であり、兵装搭載能力はなし)
Fixed Armament (固定武装):機関砲の口径、弾数なし

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

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画像の引用元
  1. 航空自衛隊ホームページ, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=57180723による
  2. By 海上自衛隊, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=57301051
  3. By Amayagan – Own work, CC0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=68688559
  4. By Hunini – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=63706017
  5. By Hunini – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=63706018

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