MQ-8C Fire Scout

MQ-8C
MQ-8C

概要と開発の背景

MQ-8C Fire Scout(ファイアスカウト)は、2010年代初頭にアメリカ合衆国のNorthrop Grummanが主契約者となり、Bell Helicopter(現Bell Textron)の商用ヘリコプター機体をベースに共同開発した艦載型無人回転翼警戒監視機である。アメリカ海軍では2000年代より、小型ヘリコプター(Schweizer 333)を母体とする前型のMQ-8Bを沿海域戦闘艦(LCS)や水上艦に配備し、視界外の状況把握や警戒監視を行ってきた。しかし、過酷な洋上環境下において小型のMQ-8Bはペイロード(搭載重量)や航続時間、拡張性に限界があり、大型レーダーの追加や長時間におよぶ哨戒ミッションへの対応が困難であった。こうした背景から、より優れた輸送能力と高い滞空性能を備えた次世代機への更新ニーズが急速に高まった。これに応えるため、実績ある民間多目的ヘリコプター「Bell 407」のエアフレームを活用し、MQ-8Bで培われた自律飛行システムと統合した最新の無人機として開発が進められ、2013年に初飛行を達成、2019年に初期作戦能力(IOC)を獲得した。

構造と技術的特徴

構造上の最大の特徴は、世界中で多数の運用実績を誇るBell 407の堅牢な全金属製フライトフレームと4枚ブレードのメインローター機構を採用し、高度な自動化アビオニクスと統合している点にある。パワートレインにはRolls-Royce製250-C47Eターボシャフトエンジン(最高出力約700軸馬力)を1基搭載し、前型のMQ-8Bと比較して約2倍以上となる700ポンド(約318kg)を超える最大ペイロード容量を実現した。機体アビオニクスには、固定アンテナパネルで全周360度をカバーする軽量型のAN/ZPY-8 Osprey 30 AESA(アクティブ・フェーズドアレイ)レーダーが統合されており、広大な海域に浮遊する小型船艇から水上艦までの正確な連続追尾を可能にしている。さらに、マルチスペクトルEO/IR(電子光学/赤外線)照準ポッドや自動船舶識別装置(AIS)受信機を備え、過酷な海洋気象下でも安全かつ高精度な自律離着艦と自動警戒飛行を完遂する技術的工夫が盛り込まれている。

運用実績と評価

2019年の初期作戦能力獲得以降、アメリカ海軍のインディペンデンス級沿海域戦闘艦(LCS)などに順次配備され、第21ヘリコプター海上攻撃飛行隊(HSC-21)や第23ヘリコプター海上攻撃飛行隊(HSC-23)において本格的に運用された。有人ヘリコプターであるMH-60S Seahawkとの統合連携(MUM-T)を実施し、最大12時間に及ぶ連続滞空性能とAESAレーダーによる広域捜索網を生かした視界外(Over-The-Horizon)ターゲティング支援で極めて高い評価を獲得した。前型のMQ-8Bと比較して航続能力や滞空性能が著しく向上した反面、LCS艦内の弾薬庫スペース制限などの運用上の理由から、当初構想されていたAPKWS誘導ロケット弾等の武装統合は見送られ、情報収集・警戒監視(ISR)に特化した機体として整理された。同盟国等への輸出事例はなく、アメリカ海軍が独占的に保有・運用する基幹艦載無人航空機として、遠征水上作戦の足元を支える重要な立ち位置を築いている。

Official Name (正式名称)MQ-8C Fire Scout
Country of Origin (開発国)アメリカ合衆国
Manufacturer (製造メーカー)Northrop Grumman(システム統合・自律システム開発) / Bell Helicopter(機体フレーム・ローターシステム製造)
Designed (設計年)2000年代初頭にNorthrop Grummanが無人艦載偵察ヘリコプターとして設計・開発を進め、試験運用を経て、2011年にアメリカ海軍で本格運用が開始された。なお、後継のMQ-8C型は2019年頃から実戦運用体制へ移行
Primary Operators (主な運用組織)アメリカ合衆国:アメリカ海軍(「Helicopter Sea Combat Squadron 23(HSC-23)」や「Air Test and Evaluation Squadron One(VX-1)」、およびかつて運用した「HSC-22 Detachment 5」などの部隊において、沿海域戦闘艦[LCS]や各種水上戦闘艦に艦載する自律型情報収集・警戒監視・偵察・ターゲット捕捉[ISR&T]用空中プラットフォームとして運用中。なお、米海軍は本機を2026年度末までに完全退役[Sundown]させるフリート計画を公式に提示している)
Crew (乗員)なし(完全無人機。艦船または地上に設置された「ミッション・コントロール・システム(MCS)」から遠隔管制および自動自律飛行を行う)
Dimensions (寸法):全長、全幅(翼幅)、全高W: 11.2 m(メインローター直径。ローター折りたたみ時幅:約 2.4 m) × D: 10.6 m(全長) × H: 3.3 m(全高)
Empty / Max Takeoff Weight (自重 / 最大離陸重量)自重(空虚重量):約 1,474 kg(3,250 lb) / 最大離陸重量:2,721 kg(6,000 lb)
Powerplant (エンジン):型式、推力1x Rolls-Royce 250-C47B(またはC47E) ターボシャフト、出力:813 shp
Max Speed (最大速度):マッハ表記、高度別の速度マッハ表記:約 Mach 0.20(低高度)、高度別の速度:135 kt(約 250 km/h)(海面高度における最大速度。巡航速度は約110〜115kt)
Combat Range (戦闘行動半径) / Ferry Range (航続距離)戦闘行動半径:150 nm(約 278 km)(データリンクの視線範囲に準拠。進出先で最大7〜8時間の連続警戒監視が可能) / 航続距離・進出性能:最大滞空時間 12〜15時間(ペイロード重量による)
Service Ceiling (実用上昇限度)約 4,870 m 〜 6,100 m(16,000 ft 〜 20,000 ft ※機体重量による変化)
Hardpoints (ハードポイント):ミサイルや爆弾の搭載能力装備可能(機体両脇のスタブウイングに最大2基のハードポイントを設定可能。ただし、現在は米海軍の沿岸域戦闘艦(LCS)等の限られた武器庫スペースや任務の特性上、兵装搭載をせずAN/ZPY-8 AESAレーダー等を用いた「超水平線(OTH)ターゲット指定・偵察監視任務」に完全特化して運用されている)
Fixed Armament (固定武装):機関砲の口径、弾数なし(※ハードポイント装着時は、過去の試験に基づき7連装APKWSレーザー誘導ロケット弾ポッドやAGM-114 ヘルファイア、AGM-175 グリフィン等の各種精密誘導ミサイルを運用可能な能力自体は設計・検証されている)

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

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画像の引用元
  1. US Navy – navair.navy.mil, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=74816134による
  2. By Anonymous United States Navy photographer – https://news.usni.org/2018/07/09/34961 Eckstein, Megan, “MC-8C Fire Scout Completes IOT&E Event; Pierside Testing to Continue This Summer,” United States Naval Institute, July 9, 2018, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=156444506
  3. By U.S. Navy – cnrsw.cnic.navy.mil, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=130865059

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