
概要と開発の背景
M320 Grenade Launcher Module(GLM)は、2000年代半ばにドイツのHeckler & Koch社(Heckler & Koch GmbH)が自社のAG36(AG-C/EGLM)をベースに開発し、アメリカ陸軍に制式採用された40x46mm低速擲弾を使用する単発式擲弾発射器である。1960年代末から長年にわたり運用されてきた前級のM203擲弾発射器は、M16やM4カービンの銃身下に固定装着して運用される優れた面制圧火器であったが、前方スライド開閉機構による装弾長の制限、シングルアクション構造による不発時の再撃発の手間、独立した単体運用(スタンドアロン)への対応力不足、照準器の精度維持といった課題を抱えていた。2004年にアメリカ陸軍が市販オフザシェルフ(COTS)製品を活用した新世代の40mm擲弾発射器調達要件を発表し、比較試験を経て2005年にHeckler & Koch社の提案モデルが選定された。2006年からの試作型(XM320)試験評価を経て、2008年に正式採用され、老朽化したM203を順次置換する新型擲弾発射器として配備が推進された。
構造と技術的特徴
本機の設計上における最大の強みは、従来機M203の課題を補完したサイドオープニング方式(側方開閉式薬室)のブレイクアクション機構と、単体運用と小銃装着の両立を可能にした柔軟なシステム設計にある。薬室が左側面に横開きする構造を採用したことで、従来のスライド式では装填できなかった全長が長い最新型の非致死性弾薬や長尺の特殊擲弾を制限なく装填することが可能となった。作動機構にはダブルアクション方式の撃発メカニズムを導入しており、万が一不発(ミスファイア)が発生した場合でも、スライドを手動で操作し直すことなくトリガーを再度引くだけで再撃発を試みることができる。さらに、小銃下部へ装着して運用するだけでなく、専用の着脱式伸縮ストックと折りたたみ式フォアグリップを装着することで独立した単体火器としても迅速に組換運用できる構造を備えている。照準系にはInsight Technology社製の昼夜間照準器(DNS)やレーザー測距儀(AN/PSQ-18A等)との連携機能が配備されており、夜間や過酷な環境下における初弾命中精度を向上させている。
運用実績と評価
2008年の正式採択以降、2009年にアメリカ陸軍の第82空挺師団(第1旅団戦闘団)へ最初に配備されたのを皮切りに、アメリカ陸軍全体で大規模な調達・配備が行われた。さらに2017年にはアメリカ海兵隊でもM4カービンの改修計画に合わせてM320A1の全面配備が開始されたほか、アメリカ空軍や海軍、同盟国であるウクライナ軍などへも幅広く配備された。アフガニスタン紛争やウクライナでの実戦環境に投入され、従来のM203と比較してサイドオープニング機構による多種多様な40mm擲弾の運用能力、ダブルアクションによる動作信頼性と安全性の高さ、単体運用時の機動性が高く評価された。単体重量はベース状態の約1.5kg(ストック装着時約2.2kg)とM203(約1.36kg)よりわずかに加重されたものの、正確な照準能力と優れた運用柔軟性を兼ね備えた現代軍用擲弾発射器の最新標準モデルとして第一線で運用され続けている。
| Official Name (正式名称) | M320 Grenade Launcher |
| Country of Origin (開発国) | ドイツ |
| Manufacturer (製造メーカー) | Heckler & Koch |
| Designed (設計年) | アメリカ陸軍が示した高信頼性・安全性・高人間工学要件に基づき、2004年にピカティニー・アーセナル(米陸軍兵器研究開発センター)主導の共同開発・選定プログラムが始動して2005年5月にヘッカー&コッホ社のプロトタイプが選定され、追加改修設計とテストを経て2008年に最終制式設計が完了して製造が開始された。その後、2009年6月にアメリカ陸軍第82空挺師団(第1旅団戦闘チーム)へ最初の機体が実戦部隊配備・支給されたことで公式に運用を開始 |
| Primary Operators (主な運用組織) | アメリカ合衆国:アメリカ陸軍(各歩兵旅団戦闘チームの歩兵分隊)、アメリカ海兵隊(各海兵遠征部隊の火力チーム)、およびアメリカ空軍(空軍治安部隊)、アメリカ海軍(海軍特殊戦コマンド(NSWC / SEALs)、遠征治安部隊・基地防衛部隊(NECC))にて、小銃下部搭載の「M320/M320A1」および独立運用型(スタンドアローン構成)を主力現役運用中 オランダ:オランダ王立陸軍(各機械化・軽歩兵旅団)およびオランダ海兵隊にて、主力小銃(C7/C8)のアンダーバレルマウントおよびスタンドアローン単体火器として、米国共通仕様に準拠した「M320」を分隊標準火力として現役運用中 ウクライナ:ウクライナ陸軍(各独立突撃旅団・空中強襲旅団)およびウクライナ海軍(海軍歩兵部隊)にて、対ロシア実戦の安全保障安全援助パッケージとしてアメリカ合衆国政府から公式寄贈・大量供与された「M320」フリートを前線で大量現役運用中 マレーシア:マレーシア陸軍(第10空挺旅団「10 Briged Para」)およびマレーシア海軍特殊部隊(PASKAL)にて、高機動・特殊作戦時のM4カービンやHK416との結合兵装、および単体スタンドアローン装備として「M320」を現役運用中 フィリピン:フィリピン陸軍(各歩兵師団・普通科大隊)およびフィリピン海兵隊にて、米国からの防衛援助および軍近代化調達プログラムに基づき、旧型M203を刷新する主力40mm火器として公式引き渡された「M320」を現役運用中 ノルウェー:ノルウェー陸軍(王立親衛隊および北部旅団普通科大隊)にて、標準装備であるHK416アサルトライフルの下部結合型、および専用ストックを用いた独立運用型として、ヘッカー&コッホ社から直接調達した「M320(GLM)」フリートを現役運用中 ハンガリー:ハンガリー陸軍(第5歩兵旅団等の各地上戦闘部隊)にて、NATO相互運用性基準に適合する軍近代化プログラムの一環として公式導入され、M4カービン等とシステム統合された「M320」を現役運用中 ドイツ:ドイツ連邦陸軍(各機械化歩兵・軽歩兵部隊)および特殊部隊(KSK)にて、基本型AG36の長年の運用実績に加え、現在全軍配備が進む新型主力小銃「G416(G95A1)」のシステム構成品として最新仕様の「M320(GLM)」を現役運用中 イギリス:イギリス陸軍(各王立歩兵連隊)および特殊空挺部隊(SAS)にて、主力L85用のL123A3(AG36)のほか、新規制式化されたM4系発展型小銃(L403A1等)のマウント用として米国共通ピカティニー・レール規格の「M320」を現役運用中 フランス:フランス陸軍(各歩兵・空挺連隊)にて、旧型FAMASから新型のHK416Fアサルトライフルへの全面更新プログラムに伴い、その下部に完全統合マウント可能な40mm分隊支援アセットとして、H&K社製の「M320(GLM/HK269)」を大量現役運用中 タイ:タイ王国陸軍(歩兵旅団および各即応部隊)にて、米国からのFMS(対外有償軍事援助)調達ルートを通じて公式導入された「M320」フリートを、既存のM16A4やM4カービンと統合して分隊間接火力として現役運用中 |
| Type (種類) | 擲弾発射器 |
| Caliber (口径) | 40×46mm |
| Action (作動方式) | Single-shot(),Double-action(ダブルアクション) |
| Overall Length (全長) | 約350mm(13.8 in) |
| Barrel Length (銃身長) | 約229mm(9 in) |
| Weight (重量) | 1.5 kg |
| Rate of Fire (発射速度) | 5–7 rpm |
| Effective Range (有効射程) | 150 m (point) / 350 m (area) |
| Feed System (給弾方式) | Breech-loaded, single shot |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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画像の引用元
- By Photo Courtesy of PEO Soldier – https://www.flickr.com/photos/peosoldier/3758687841/in/set-72157621946887368/, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=9852848







