
概要と開発の背景
LVSR MKR15(Logistics Vehicle System Replacement Wrecker Vehicle)は、2000年代半ばにアメリカの Oshkosh Defense 社が開発し、2009年よりアメリカ海兵隊へ導入された10×10輪駆動の大型戦術重回収車である。開発の背景には、1980年代から海兵隊の重車輌回収を担ってきた前級 LVS(Logistics Vehicle System)の MK48/MK15 重回収ユニットの老朽化と、過酷な戦場環境における各種過重車輌の牽引・救出能力不足という切実な更新ニーズが存在した。特に、耐爆性能向上に伴い重量化が進んだ各種装甲車輌(MRAP、MTVR、LVS、LVSR等)を泥濘地や過酷な悪路から迅速に救出し、即座に牽引・回収できる強力な現場整備アセットが求められた。海兵隊は、優れた悪路走破速度と卓越した回収・牽引能力、耐爆装甲対応力を兼ね備える次世代の基幹重回収プラットフォームとして LVSR MKR15 の調達を開始した。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、10×10輪全輪駆動の強固な単一リジッドフレームに、Oshkosh Defense 社独自の TAK-4 全輪独立懸架サスペンションと、極めて強力な多機能回収メカニズム群を統合している点にある。車体後部には、2基統合で複合直線引き揚げ定格78,000lbs(約35,380kg)を発揮する回収ウインチと、最大110,000lbs(約49,895kg)の平地牽引(Flat Tow)および最大96,000lbs(約43,545kg)の吊り上げ牽引(Lift & Tow)に対応する油圧アンダーリフト機構を備える。車体中央部には IMT(Iowa Molding Tool Co. Inc.)製屈曲ブームクレーン(吊り上げ能力最大18,000lbs / 約8,165kg)と、10,000lbs 容量の補助カーゴデッキが配置され、予備パワーパック等の自力載せ降ろしを可能にしている。さらに車体前部には定格20,000lbs(約9,072kg)の自己回収ウインチと、強力な引き揚げ作業時に車体を地面へ固定する定格78,000lbsの油圧リアスペード(アンカー)を標準装備する。
運用実績と評価
2009年の部隊配備開始以降、MKR15 はアメリカ海兵隊の各海兵物流グループや物流大隊へ計160両以上が配備され、アフガニスタン紛争をはじめとする主要な海外派遣ミッションへ集中的に投入された。実際の運用においては、砂漠地帯や激しい泥濘地、雪上において足回り損傷やスタック、横転により行動不能となった HMMWV、FMTV、5トン車輌、MTVR、各種 MRAP(耐地爆装甲車)、さらには自車と同等重量の LVSR 貨物型やトラクター型に至るまで、あらゆる重車輌を即座に救出・引き揚げ・牽引回収する卓越した回収力を実証した。また、油圧リアスペードと2基の強力ウインチを駆使した自力アンカー固定引き揚げ性能は、従来の回収車では困難であった極限状態からの脱出作業において絶大な能力を発揮した。Plasan 社製の B-Kit 装甲パッケージを統合できる設計により、即席爆発装置(IED)の脅威が潜む危険地帯でも高い乗員生存性を確保した。アメリカ海兵隊の全戦術車輌艦隊の稼働率を下支えする現役最高峰の重回収アセットとして、現在も第一線で現役運用が続けられている。
| Official Name (正式名称) | LVSR MKR15 (Wrecker) |
| Country of Origin (開発国) | アメリカ合衆国 |
| Manufacturer (製造メーカー) | Oshkosh Defense |
| Designed (設計年) | LVSRファミリーにおける重レッカー(回収仕様)仕様のバリアントであるMKR15(Wrecker)の開発フェーズとなるシステム開発・デモンストレーション契約締結(設計確定)年は2004年であり、開発段階での各種検証および試作プロトタイプの製造を経て、実車試作機による技術検証・初期運用試験へと移行したプロトタイプ試験開始年は2008年(4月より試作プロトタイプ検証が開始)である。量産先行および低率初期量産試験等を経て部隊への初期配備が実行され、実戦フィールド(アフガニスタン等)において部隊運用能力が正式に開始された運用開始年は2009年である。 |
| Primary Operators (主な運用組織) | アメリカ合衆国:アメリカ海兵隊(地上戦闘エレメント[GCE]、航空戦闘エレメント[ACE]、および兵站・ロジスティクス戦闘エレメント[LCE]である各海兵兵站群[Marine Logistics Group / MLG]の自動車輸送・整備回収部隊を中心に総計 162 両のMKR15レッカー型を正規配備・現役運用。HMMWV、MTVR、MRAP、あるいは同型のLVSRシリーズにいたる各種重量車両の不整地引き揚げ・戦術回収システムとして稼働している) |
| Crew / Capacity (乗員および兵員輸送数) | 2名(※基本座席定員はドライバー含む2名仕様。ただし、オプションの銃手用シートとして3人目のスペース拡張に対応) |
| Combat Weight (戦闘重量) | Curb Weight (自重):67,600 lbs (30,663 kg) Gross Vehicle Weight Rating (車両総重量 GVWR):101,000 lbs (45,813 kg) |
| Dimensions (寸法: 全長/全幅/全高) | W (全幅):98 in (2,489 mm) L (全長):458 in (11,633 mm) D (全高):122 in (3,099 mm) [※輸送時準備解体(Reducible Height):102 in (2,591 mm)] |
| Armor (装甲の詳細: 複合装甲、ERA、APSの有無) | 米陸軍の長期装甲戦略(LTAS:Long Term Armor Strategy)に準拠。設計段階からキャビン構造に工場設置型の防護設計(Factory-installed armor)が施されており、生存性を高めるための追加装甲パッケージの統合に対応(複合装甲、爆発反応装甲[ERA]は非搭載) |
| Main Armament (主武装) | None |
| Secondary Armament (副武装) | キャビン上部のルーフマウントハッチ(MCTAGS:Marine Corps Transparent Armored Gun Shield等に対応)に、M2 12.7mm重機関銃またはMk 19 40mm自動グレネードランチャーなどの各種機関銃および弾薬をオプション装備として搭載可能 |
| Engine (エンジン出力 hp/kW) | Caterpillar (CAT) C15 15.2-liter, inline-six water-cooled, turbocharged electronic control diesel engine 出力:600 hp (447 kW) @ 1,800 rpm / トルク:2,508 Nm @ 1,200 rpm |
| Max Speed (最高速度: 整地/不整地) | Paved (整地):65 mph (105 km/h) Unpaved (不整地):不明(※30%の舗装路面・70%の非舗装路面という運用プロファイルに基づき、積載する総重量[オンロード22.5トン / オフロード16.5トン]および中央タイヤ空気圧調整システム[CTIS]のモード制御に依存する) |
| Operational Range (航続距離) | 300 mi (483 km) |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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