MBDA Enforcer

MBDA Enforcer
上段:Enforcer 中段:RGW 110 下段:CarlGustaf M4

概要と開発の背景

MBDA Enforcer(ドイツ軍制式名称:Leichtes Wirkmittel 1800+ / LWM 1800+)は、2010年代半ばよりヨーロッパのミサイルメーカーであるMBDA社(開発主体:MBDA Deutschland GmbH)が開発し、2019年にドイツ連邦軍から制式調達調印が行われた歩兵用超軽量小型誘導ミサイルシステムである。開発の背景には、市街地戦闘や過酷な前線で活動する歩兵部隊や特殊部隊(KSK等)において、従来運用されてきた無誘導対戦車ロケット弾(RGW90等)では有効射程(数百m程度)が短く、一方で大型の対戦車ミサイル(JavelinやSPIKE等)ではシステム重量が大きく高価格であり、単一の兵士による迅速な携帯・即応展開に制約があるという課題が存在した。これらを克服し、無誘導ロケット弾に匹敵する軽量さ(システム全備重量12kg未満)を維持しつつ、2,000m超の遠距離に位置する敵の軽装甲車両や陣地・構造物内部の目標を正確に無効化できるスタンドオフ精密火力の獲得を目指して開発がスタートした。

構造と技術的特徴

構造上の最大の特徴は、高強度カーボンファイバー製使い捨て発射筒と、昼夜間対応の画像赤外線(IR)/TVカメラシーカーを搭載した「打ちっ放し(Fire-and-Forget / LOBL: Lock-On Before Launch)」誘導ミサイルを統合している点にある。作動方式には二段階推進機構を採用しており、超小型の射出用モーターで筒外へ低圧射出した後にメインロケットモーターが点火するため、後方爆風を極限まで低減させ、容積の小さな室内や密閉空間からの安全な射撃(Launch from enclosed space)を可能にしている。照準システムにはHensoldt社製Dynahawk等の再利用可能な多目的火器管制照準器(FCS)を採用し、レーザー測距と目標自動追尾を実施する。弾頭には多目的爆砕(EFP)弾頭が組み込まれており、瞬発・遅延・空中炸裂(Air-burst)を選択可能なマルチモード信管により、遮蔽物の陰に潜む目標や軽装甲車両へ柔軟に対応する。無誘導ロケット並みの軽量性と、重対戦車ミサイルに匹敵するピンポイント精度を両立した設計思想を誇る。

運用実績と評価

2019年のドイツ連邦軍による制式採用(Leichtes Wirkmittel 1800+)以降、Enforcerはドイツ陸軍特殊部隊(KSK)をはじめとする精鋭部隊へ配備が進められ、さらに欧州各国の防衛機構や海外の顧客からも制式発注・導入が行われている。実際の運用においては、歩兵分隊や特殊部隊が手軽に携行可能なスタンドオフ精密火力として、市街地戦闘や非対称戦における軽装甲目標・不審拠点の遠隔処理ミッションへ投入されている。操作が極めて直感的で訓練負担が少なく、発射後の即時退避(Fire-and-Forget)による安全性が前線部隊から高く評価された。本プラットフォームをベースに、タンデム成形炸薬弾頭を備えた本格対戦車型の「Enforcer X」、無人機搭載型の「Enforcer Air」、対ドローン用の「Enforcer SADM」など多彩な派生展開が進められており、歩兵用超軽量ミサイルの代表格として現代戦で重要な立ち位置を占めている。

Official Name (正式名称):Enforcer
Country of Origin (開発国):ドイツ
Manufacturer (製造メーカー):MBDA Deutschland
Designed (設計年):設計・開発は基本バリアントプログラムが発足した2011年7月から試作・検証、量産体制の確立を完了する2023年にかけて行われ、最初の導入国であるドイツ連邦軍への公式な運用開始(量産初期型の部隊引き渡しおよび配備)は2024年
Primary Operators (主な運用組織):ドイツ:ドイツ連邦軍(最初のローンチカスタマーとして「Leichtes Wirkmittel 1800+」の仕様で正式発注し、陸軍の歩兵部隊や特殊部隊等で初期シリアル生産モデルを受領し現役運用中)
Type (種類):軽量個人携帯式精密誘導ミサイルシステム(主に軽装甲車両、ソフトスキン車両、遮蔽物裏の標的を対象とした多目的誘導弾。派生型として対戦車特化の Enforcer X や対空・対ドローン仕様も存在)
Caliber / Diameter (口径/ミサイル直径):89 mm 〜 90 mm(約3.5 in)
Guidance System (誘導方式):赤外線画像誘導(IIR)およびTV光学シーカー搭載、発射前ロックオン(LOBL)能力を有する打ち放し(ファイア・アンド・フォーゲット)方式
Overall Length (全長/キャニスターサイズ):1.0 m 未満(約3 ft 3 in 未満 / ※ミサイル単体の全長)
Wingspan (翼幅):不明
Weight (重量/総システム重量):ミサイル単体重量:7 kg 未満(約15.4 lb 未満)
チューブ(保管容器)含む弾薬重量:10 kg(約22.0 lb)
照準器および弾薬2発を含む総システム重量:20 kg 未満(約44.1 lb 未満)
Flight Speed (飛翔速度):非公開
Effective Range (有効射程):最大 2,000 m 以上(約1.2 mi 以上)
Warhead & Propulsion (弾頭/推進方式):可変設定式マルチエフェクト弾頭(多目的破片・爆風効果弾頭、Enforcer X の場合はタンデム成形炸薬[HEAT]弾頭) / 2段式固形燃料ロケットモーター(閉所からの安全な発射[Confined space firing]が可能な低シグネチャーの射出用および飛翔用推進機構)

PR:関連商品

画像の引用元
  1. By Admiralis-generalis-Aladeen – Own work, CC0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=146655373

上部へスクロール