NLAW(Next-generation Light Anti-tank Weapon) / MBT LAW (Main Battle Tank Light Anti-Armor Weapon)

NLAW
イギリス陸軍パラシュート連隊 第2大隊(2 PARA)

概要と開発の背景

NLAW(Next Generation Light Anti-tank Weapon / MBT LAW)は、1990年代末から2000年代初頭にかけてスウェーデンのSaab Bofors Dynamics(現 Saab Dynamics AB)が開発し、イギリスのThales Air Defence等との国際提携下で2009年より量産配備が進められた12.5kgクラスの使い捨て式軽量対戦車ミサイルシステムである。開発の背景には、イギリス陸軍のLAW 80やスウェーデン軍のAT4などの無誘導対戦車ロケットの老朽化と、爆発反応装甲(ERA)や複合装甲を備えた現代主力戦車(MBT)に対する貫通性能不足が存在した。従来の大型対戦車ミサイル(FGM-148 Javelin等)は高い誘導精度と長射程を誇る一方で、システム重量が大きく高価格であり、歩兵単独での迅速な携行運用に制限があった。これらを解決し、歩兵1名で容易に運搬・即応射撃でき、近接戦闘領域(20m〜800m)で主力戦車の薄い上面装甲を確実に破砕する軽量かつ低コストな次世代歩兵用対戦車火器の獲得を目指して開発がスタートした。

構造と技術的特徴

構造上の最大の特徴は、高精度ながら高額となってしまう熱画像シーカーを必要としない「予測照準線誘導(PLOS: Predicted Line of Sight)」方式と、密閉空間からの発射を可能にするソフト発射(Soft-Launch)機構を統合している点にある。射手は移動目標を光学照準器で約3秒から5秒間追尾(トラッキング)するだけで、内蔵されたジャイロセンサーと慣性計測装置(IMU)が目標の移動速度と角速度を自動計算し、発射後は自動で予測飛行経路を自律飛翔する。攻撃モードには、磁気・光学近接センサーにより目標戦車の上面装甲を真上から見下ろす形で成形炸薬(HEAT)弾頭を炸裂させる「トップアタック(OTA: Overfly Top Attack)」と、軽装甲車両や構造物、低空のヘリコプターへ直接命中させる「ダイレクトアタック(DA: Direct Attack)」の2種類を備える。室内や車内ハッチなどの狭小空間からでも安全に射撃できるソフト発射構造を有し、市街地戦闘(CQB)における高い生存性と作戦柔軟性を獲得している。複雑なシーカーの冷却やロックオン待機時間が不要で、発射までのタイムラグが極めて短く、赤外線妨害装置等の対抗手段に左右されない高い耐妨害性能を誇る。

運用実績と評価

2009年の制式配備開始以降、NLAWは開発国であるイギリス陸軍(MBT LAW)およびスウェーデン軍(Robot 57)をはじめ、フィンランド軍、ルクセンブルク軍、マレーシア軍、スイス軍、インドネシア軍、ウクライナ軍など、世界各国の防衛組織で主力軽量対戦車ミサイルとして導入された。実際の運用においては、2022年以降のウクライナ紛争においてイギリス等から数千基規模が迅速に軍事支援として供与され、首都防衛戦をはじめとする激しい市街地戦や野外での遊撃戦へ投入された。近距離(最低射程20m)から長距離(800m)までわずか数秒の準備で即応発射でき、高価な主力戦車(T-72、T-80、T-90等)の上面装甲を単一の歩兵が遠距離から破砕した実績から、現代の対戦車戦における高い制力と機動性を実証した。現在も製造メーカーにおいて大規模な増産体制が敷かれ、歩兵携行型対戦車火器の世界的スタンダードとして第一線で運用が続けられている。

Official Name (正式名称):NLAW(Next-generation Light Anti-tank Weapon)※NLAWはイギリス軍の「調達計画名」がルーツの一般公称
製品名:MBT LAW (Main Battle Tank Light Anti-Armor Weapon)
Country of Origin (開発国):スウェーデン / イギリス
Manufacturer (製造メーカー):Saab Bofors Dynamics (最終アセンブリ組み立て:Thales Air Defence)
Designed (設計年):設計・開発は、1999年にイギリス国防調達庁(DPA)が新型携帯式対戦車兵器の入札を開始し、同年にスウェーデンのBofors社(現Saab Bofors Dynamics社)が製品定義契約を獲得して開発が本格化したことで開始された。その後、2002年から2003年にかけてイギリスとスウェーデン両国による共同開発プログラムとして正式に合意され、2008年まで設計・開発プロセスが継続された。運用開始(部隊配備)については、2008年12月に量産品の引き渡しが始まり、翌2009年にイギリス軍、スウェーデン軍、およびフィンランド軍において公式に運用が開始された。
Primary Operators (主な運用組織):イギリス:イギリス陸軍(歩兵連隊、第16空中強襲旅団戦闘団[16 Air Assault Brigade Combat Team]などで主力対戦車アセットとして配備)、イギリス海軍(臨検隊が不審船や武装船、装甲目標に対応するための臨時持ち込み・緊急即応火器として運用)、王立海兵隊(数千基規模の調達を行い広く現役運用中)
スウェーデン:スウェーデン国防軍(スウェーデン陸軍がRobot 57(RB 57)の制式名称で、全主力歩兵・機械化歩兵部隊、特殊作戦部隊[SOG]等に広く配備・現役運用)
フィンランド:フィンランド国防軍(フィンランド陸軍が102 RSLH NLAWの制式名称で、対戦車・歩兵部隊等の主要火力として現役運用)
ルクセンブルク:ルクセンブルク軍(ルクセンブルク陸軍の偵察中隊[Compagnie A、Compagnie D]などの装甲・巡回車両部隊や歩兵に配備・現役運用)
スイス:スイス軍(スイス陸軍が対戦車誘導兵器(Pz Abw GW NLAW)として、各歩兵旅団や擲弾兵部隊等で主力配備・運用中)
マレーシア:マレーシア陸軍(第10パラトルーパー旅団[10th Paratrooper Brigade]などの対戦車・特殊戦闘ユニットを中心に実戦配備・現役運用)
インドネシア:インドネシア陸軍(TNI-AD)(陸軍戦略予備部隊[Kostrad]や一部主力歩兵部隊において、2018年〜2020年にかけて受領した約500ユニットを主要な対戦車誘導弾として配備・実戦運用)
ウクライナ:ウクライナ武装部隊(ウクライナ陸軍、空挺軍、領土防衛隊、特殊作戦部隊[SSO]、および各種独立アゾフ旅団など。イギリス、スウェーデン等の第三国より軍事支援として供与された大量のNLAWを、前線でロシア軍戦車の迎撃・撃破用に主力実戦運用)
ロシア連邦:ロシア連邦軍、および親ロシア派武装組織(公式な調達国ではないが、ウクライナ紛争下の前線においてウクライナ軍が遺棄、または降伏時に接収されたNLAWを鹵獲品として回収し、一部の陸軍歩兵部隊がそのまま転用・対戦闘車両用として現役で実戦運用)
Type (種類):対戦車誘導弾(肩撃ち式使い捨て型対戦車ミサイル)
Caliber / Diameter (口径/ミサイル直径):ミサイル弾体(ボディ)直径: 115 mm (4.53 in)
弾頭(ウォーヘッド)部直径: 150 mm (5.9 in)
Guidance System (誘導方式):PLOS(Predicted Line Of Sight / 予測視線)誘導方式(射手が目標を2〜3秒間追尾・照準することで、内蔵の火器管制装置が目標の移動速度、重力、弾道を自動で測定・計算し、発射後はジャミングを回避して自動追従・飛翔する「撃ちっ放し(ファイヤアンドフォーゲット)」メカニズム)
Overall Length (全長/キャニスターサイズ):1,016 mm (40.0 in) ※使い捨て型ランチャー(保管容器兼用)の全長
Wingspan (翼幅):展開時: 410 mm
Weight (重量/総システム重量):ミサイル単体重量: 約 6.8 kg (15.0 lb)
総システム重量(ランチャーおよび即応弾含む): 12.5 kg (27.6 lb) ※工場密閉の使い捨て型のため、携行・射撃時の重量と同一
Flight Speed (飛翔速度):初速(ソフトローンチ射出時): 40 m/s (130 ft/s)
最大速度(飛翔中): 200 m/s (660 ft/s) (マッハ約 0.59 相当)
Effective Range (有効射程):最小射程 20 m から最大戦闘射程 800 m まで(固定目標への最大射程は 1,000 m 以上)
Warhead & Propulsion (弾頭/推進方式):弾頭: シングル成形炸薬(HEAT)弾頭(102 mm径のペネトレーター・約850 gの低感度炸薬を内蔵、RHA換算で 500 mm 以上の貫通力)。装甲の薄い天板を狙うトップアタック(OTA)用の近接信管、およびダイレクトアタック(DA)用の着発信管を採用
推進方式: 固体燃料ロケットモーター(発射時のソフトローンチ用ブースターと、射出後に点火する主推進用サステイナーモーターの2段推進構成)

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

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画像の引用元
  1. By Photo: Cpl Danny Houghton/UK Ministry of Defence 2021, OGL 3, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=116190857
  2. By Photo: MoD/MOD, OGL v1.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=26921399
  3. By Photo: Stuart Hill/MOD, OGL v1.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=54017909

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