AT4-CS / CS ER / CS AST / CS HP

AT4
アメリカ海兵隊第11海兵遠征部隊第5海兵連隊第1大隊C中隊

概要と開発の背景

AT4-CS(Confined Space)およびその発展型(CS ER、CS AST、CS HP)は、1990年代から2010年代にかけてスウェーデンのSaab Dynamics AB(旧FFV Ordnance/Saab Bofors Dynamics)によって開発された、84mm口径の使い捨て式携帯無反動砲システムである。1980年代に登場した標準型AT4は、屋外での優れた対装甲能力を備えていたものの、発射時に強力な後方爆風(バックブラスト)を放出する構造上、市街戦における建物内や密閉された陣地からの射撃が安全上不可能であった。冷戦後の安全保障環境の変化に伴い、都市部や障害物に囲まれた狭小空間での戦闘(市街戦・近接戦闘)が頻発するようになると、歩兵部隊が屋内に身を潜めたまま安全に射撃できる小型軽量な使い捨て火器の要求が急増した。このような現代戦の要求と従来型装備の運用限界を解決するニーズに応えるため、密閉空間射撃能力(CS機能)を備えた各種バリエーションの開発がスタートした。

構造と技術的特徴

構造上の最大の特徴は、発射時に筒後方へ海水ベースの流体緩衝材(カウンターマス)を噴射することで、過度な爆風と衝撃波の広がりを劇的に抑制するカウンターマス機構を採用している点にある。この仕組みにより、室積の小さな室内や密閉された防衛拠点からでも射撃時の安全性が確保されるようになった。発射筒にはグラスファイバー複合材料が使用され、光学照準器やレールシステムを一体化搭載している。各派生型には高度な技術的最適化が施されており、高貫通型の「CS HP(High Penetration)」は成形炸薬(HEAT)弾頭により約420mm〜500mmの鋼板貫通能力を発揮する。射程延伸型の「CS ER(Extended Range)」は推進機構と精度の改善により最大有効射程を従来の300mから600mへと延伸させた。対構造物型の「CS AST(Anti-Structure Tandem)」は二段式のタンデム弾頭を採用し、壁面を破砕して穴を開けたのち内部で遅延作動することで強固な建物の防護構造を無効化する画期的なメカニズムを備えている。

運用実績と評価

1990年代末のAT4-CS制式採用以降、アメリカ軍(M136A1として導入)をはじめ、フランス陸軍、イギリス陸軍、スウェーデン軍など世界各国の軍隊や特殊部隊で広く配備・運用されている。各種の野外作戦や都市戦において、建物内から安全に敵装甲車両や拠点へ火力を投射できる密閉空間対応性能や、1回使い切りの高い取扱信頼性が具体的に高く評価された。特に「CS ER」による遠距離目標への着弾精度向上や、「CS AST」による市街戦での障壁処理・進入路作製能力は、歩兵部隊の戦術的柔軟性と即応能力を飛躍的に向上させた。単なる対装甲兵器の枠を超え、各種任務に応じた弾頭バリエーションを展開することで、現代歩兵用ディスポーザブル火器のグローバルな標準装備としての地位を確立し、現在に至るまで第一線で運用が続けられている。

Official Name (正式名称)AT4-CS (Confined Space) Series [Variants: AT4CS ER (Extended Range), AT4CS AST (Anti-Structure Tandem), AT4CS HP (High Penetration)] / Pansarskott m/86
Country of Origin (開発国)スウェーデン
Manufacturer (製造メーカー)Saab Bofors Dynamics
Designed (設計年)1976年にスウェーデンで開発・設計が開始され、1981年から1982年にかけての試作テストや1985年の量産開始を経て、同1985年にスウェーデン軍で、翌1986年にはアメリカ軍で「M136」として公式に導入され運用が開始
Primary Operators (主な運用組織)アメリカ合衆国:アメリカ陸軍(一般歩兵・装甲部隊等)、アメリカ海兵隊、アメリカ海軍(海軍移動建設大隊「シービーズ(Seabees)」等)、アメリカ空軍(基地防空警備部隊等)、アメリカ特殊作戦コマンド(USSOCOM:各特殊部隊において、通常型「M136 AT4」および閉所発射型「M136A1 AT4-CS」を主力使い捨て対軽装甲火器として全軍で大規模運用中)
スウェーデン:スウェーデン陸軍(陸軍歩兵・機械化部隊をはじめとする統合軍において、米国仕様から前部フォールディンググリップを追加した自国仕様モデルを「Pansarskott m/86(Pskott m/86)」の制式名で主力運用中)
フランス:フランス陸軍(陸軍歩兵部隊・外人部隊「第2外人空挺連隊(2e REP)」等において通常型を運用中。さらに後継として、照準器マウントなどを統合した最新改良型「AT4 F2(次世代単発対戦車武器システムプログラム)」の大量導入・配備を進め運用中)
イギリス:イギリス陸軍(陸軍歩兵部隊および特殊部隊において、都市環境戦闘向けに最適化され、室内の狭い空間から安全に発射できる閉所発射型の「AT4-CS HP(イギリス軍制式名:L1A1 ILAW)」を主力運用中)
インド:インド陸軍、インド空軍(都市戦や複雑な閉所戦闘「MOBUA」での優位性確保を目的とした競争プログラムを経て2022年に公式選定され、タンデム構造弾頭を搭載した閉所発射型高機能バリアントである「AT4CS AST(アンチ・ストラクチャー)」を導入し現在も配備・運用中)
ウクライナ:ウクライナ陸軍、ウクライナ特殊作戦軍(ロシアによる侵攻に対抗するため、アメリカやスウェーデンをはじめとする欧米各国から計数万挺規模の直接的な軍事支援供給を受け、前線部隊の対装甲・対陣地用主力火器として通常型および「AT4-CS」各バリアントを大規模実戦運用中)
リトアニア:リトアニア陸軍(陸軍歩兵部隊およびリトアニア特殊作戦軍部隊において、対装甲アセットおよび陣地突破用火器として通常型および「AT4-CS」を公式配備・運用中)
ポーランド:ポーランド陸軍、ポーランド特殊軍(陸軍の主要歩兵ユニットおよび特殊部隊「GROM」「JWK」等において、単発携行型対戦車火器として通常型および「AT4-CS」を公式配備・運用中)
カナダ:カナダ陸軍(陸軍歩兵部隊において、個人の携行用対軽装甲火器として「AT4(M136)」を制式導入し現役運用中)
オランダ:オランダ王立陸軍(陸軍歩兵部隊・特殊作戦部隊において、主力単発携行型対軽装甲・対陣地武器として通常型および閉所発射型「AT4-CS」を配備・運用中)
アイルランド:アイルランド陸軍(陸軍歩兵部隊の選抜歩兵ユニットにおいて、主力携行型対戦車兵器の補完アセットとして通常型を公式に配備・運用中)
デンマーク:デンマーク陸軍(陸軍歩兵部隊および機械化歩兵部隊において、戦術携行火器として通常型を「PVV M/93」の制式名で配備・運用中)
ブラジル:ブラジル陸軍、ブラジル海兵隊(陸軍歩兵部隊および海兵隊ユニットにおいて、軽装甲車および敵陣地破壊用の主力ディスポーザブル火器として通常型を公式に調達・運用中)
マレーシア:マレーシア陸軍(陸軍歩兵部隊および第10空挺旅団などの精鋭部隊において、戦術携行型対戦車火器として公式に配備・運用中)
インドネシア:インドネシア陸軍(陸軍特戦司令部「コパスス(Kopassus)」などのエリート特殊部隊および戦略予備軍の主要歩兵ユニットにおいて、携行対装甲火器として公式運用中)
台湾(中華民国):中華民国陸軍、中華民国海軍陸戦隊(陸軍歩兵部隊および海兵隊において、迫り来る敵装甲車両や上陸舟艇、陣地排除用として通常型を「AT4」として制式調達し、防衛戦力の一角として広く配備・運用中)
アルゼンチン:アルゼンチン陸軍、アルゼンチン海兵隊(主要な携行型対戦車アセットの補完として通常型を公式調達・運用中)
チリ:チリ陸軍(歩兵部隊の対軽装甲・防塞突破用火器として公式に導入・運用中)
コロンビア:コロンビア陸軍(反政府武装勢力や対装甲ターゲットに対抗するため、通常型を公式に配備・運用中)
クロアチア:クロアチア陸軍(独立後の軍近代化の過程において、標準的な使い捨て対戦車火器として公式に導入・運用中)
エストニア:エストニア陸軍(バルト三国の防衛ネットワークの一環として、リトアニア同様に通常型および「AT4-CS」を公式配備・運用中)
ラトビア:ラトビア陸軍(エストニア・リトアニアと同様、国境防衛および歩兵部隊の対装甲火器として通常型を制式運用中)
ギリシャ:ギリシャ海軍(海軍の特殊部隊「DYK」等において、沿岸防衛や特殊作戦用の携行火器として限定的に調達・運用中)
イラク:イラク治安部隊(対ISIL作戦等の軍事支援の枠組みにおいて、アメリカ軍などから提供された「M136 AT4」を対テロ部隊や陸軍部隊が実戦運用中)
レバノン:レバノン陸軍(軍事援助プログラムを通じてアメリカから調達された通常型を、正規軍の対軽装甲火器として公式運用中)
Type (種類)単発使い捨て式・対戦車/対陣地滑腔無反動砲
Caliber (口径)84 mm
Operating Principle (作動原理)Recoilless smoothbore system / Davis countershot principle (無反動式 / デビス式・カウンターマス方式)
※発射時に火薬ガスの圧力と相殺させるため、銃身後部から塩水などの緩衝材(カウンターマス)を飛散させることで、バックブラストを劇的に抑え、室内の狭い空間から安全に発射できる仕組み
Overall Length (全長)運搬時/発射準備時: 914 mm 〜 1,040 mm (約0.91 m 〜 1.04 m) ※単発使い捨てのオールインワン構造のため、運搬時と発射時で本体チューブ自体の伸縮はない(固定式)、射撃時に肩当てや照準器のみを展開
System Weight (システム重量)AT4CS HP (高貫通型): 約7.8 kg (17.2 lbs)
AT4CS AST (対陣地タンデム型): 約8.9 kg (19.6 lbs)
AT4CS ER (射程延長型): 約8.9 kg (19.6 lbs)
※工場出荷時に弾薬が最初からチューブ内に密閉・内蔵されているため、本体重量と即応弾を含めた総重量(システム重量)は上記となる
Muzzle Velocity (初速)AT4CS HP: 秒速 220 m (220 m/s)
AT4CS AST: 秒速 200 m (200 m/s)
AT4CS ER: 秒速 230 m (230 m/s) ※閉所発射を可能にするための減圧に伴い、通常型のAT4(秒速290m)に比べて初速がやや低く抑えられている
Armor Penetration (装甲貫通力)AT4CS HP: 500 mm 〜 600 mm超 RHA (均質圧延装甲換算)
AT4CS AST: 強化コンクリート壁や二重土嚢などの構造物を貫通・破壊(タンデム弾頭により、1層目を貫通した後に内部で主弾頭が爆発)
AT4CS ER: 350 mm超 RHA
Effective Range (有効射程)固定目標 (Point Target): 300 m(最新のAT4CS ERモデルでは、固定目標に対して最大600 mまで有効射程が向上)
移動目標 (Moving Target): 最大 200 m(弾道ドロップと風の影響を受けるため、標準サイトでの確実なエンゲージメントは150m〜200m以内が推奨されている)
面目標 (Area Target): 500 m 〜 1,000 m
Sight / Guidance (照準・誘導方式)Unguided (無誘導方式)
標準仕様として、本体上部に格納されているポップアップ式の「インテリジェント・レッドドットサイト(赤点照準器)」や折り畳み式アイアンサイトを装備
ピカティニー・レールマウントを介して、夜間用の各種光学・IRナイトビジョン、サーマルイメージング照準器(AN/PAS-13など)やレーザー距離計などの再利用可能な外部照準システムのワンタッチ装着に対応

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

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画像の引用元
  1. Sgt. Bryson K. Jones – http://www.defenselink.mil/homepagephotos/homepagephotos.aspx?month=200801 (description)http://www.defenselink.mil/dodcmsshare/homepagephoto%5C2008-01%5Chires_080118-M-1226J-001.jpg (image), パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3441838による
  2. By Adrien C.//French Army – The Armée de Terre’s Facebook page, Licence Ouverte, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=120557067
  3. By Ministério da Defesa – Transposição do Rio Santa Maria – RS, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=37361534
  4. By Sgt. William Tanner – https://www.dvidshub.net/image/2954245/173rd-airborne-brigade-demonstrates-interoperability-with-polish-counterparts, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=56245584
  5. By U.S. Army photo by Spc. Leonard Beckett – This image was released by the United States Army with the ID 230721-A-HV404-1025 (next).This tag does not indicate the copyright status of the attached work. A normal copyright tag is still required. See Commons:Licensing.العربية ∙ বাংলা ∙Bahasa Indonesia ∙Bahaso Jambi ∙Deutsch ∙ Deutsch (Sie-Form) ∙ English ∙ español ∙ euskara ∙ فارسی ∙ français ∙ italiano ∙ 日本語 ∙ 한국어 ∙ македонски ∙ മലയാളം ∙ Plattdüütsch ∙ Nederlands ∙ polski ∙ پښتو ∙ português ∙ русский ∙ slovenščina ∙ svenska ∙ Türkçe ∙ українська ∙ 简体中文 ∙ 繁體中文 ∙ +/−, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=154313471
  6. By U.S. Army photo by Spc. Eric Cabral – https://www.flickr.com/photos/soldiersmediacenter/4776529679/in/photostream/, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=15825122
  7. By Alejandro Peña – https://www.dvidshub.net/image/4400099/alaska-army-national-guard-hosts-best-warrior-region-vi-2018, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=157035517

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