U-2S Dragon Lady

U-2S Dragon Lady

概要と開発の背景

ロッキード U-2S ドラゴンレディ(Lockheed Martin U-2S Dragon Lady)は、1950年代半ばにアメリカの Lockheed Corporation(現 Lockheed Martin Corporation)の先進開発部門「Skunk Works」が開発し、1955年に初飛行した単発高高度戦略偵察機 U-2 シリーズの最新改修型である。開発の背景には、冷戦初期におけるソビエト連邦の核兵器開発や長距離爆撃機、ミサイル基地の急激な進展に対する強い警戒感と、敵本土深部を安全に偵察する手段の不在が存在した。従来の偵察機ではソ連の対空ミサイルや迎撃戦闘機に捕捉される危険性が高かったため、当時の地対空兵器が届かない高度70,000フィート(約21,000メートル)以上の超高高度から直接敵状況を光学撮影・情報収集できる専用機が要求された。1960年代の機体大型化型 U-2R を経て、1990年代に最新のターボファンエンジンへ換装された U-2S へと進化を遂げた。

構造と技術的特徴

構造上の最大の特徴は、大気密度が極めて薄い超高高度領域で十分な揚力を獲得するために設計された、グライダーを彷彿とさせる全幅約31.4メートルの大きなアスペクト比・直線的でスリムな主翼と超軽量構造にある。操縦士は気圧の低い高度で生存するため、宇宙飛行士と同等の与圧服(宇宙服)を着用して搭乗する。U-2S への進化における最大の技術的工夫は、旧来の Pratt & Whitney J75 ターボジェットから General Electric 製 F118-GE-101 ターボファンエンジンへの全面換装である。これにより、燃料効率と推力が大幅に改善され、無給油航続距離(約11,200km以上)と滞空能力が飛躍的に向上した。機首や胴体、翼下スーパーポッドには Raytheon 製 ASARS-2B/2A 合成開口レーダーや Collins Aerospace 製 SYERS-2C 多スペクトル光学センサー、L3Harris 製 ASIP 信号情報収集装置が統合されており、全天候下で精密なリアルタイム偵察を可能にしている。

運用実績と評価

1956年の初期配備および1990年代の U-2S 改修以降、アメリカ空軍(空戦コマンド[ACC]傘下の第9偵察航空団/カリフォルニア州ビール空軍基地等)および NASA(環境観測用 ER-2)において独占的に運用されている。冷戦期のキューバ危機におけるミサイル基地発見を筆頭に、湾岸戦争、コソボ紛争、アフガニスタン紛争、イラク戦争、ならびに東シナ海や朝鮮半島での警戒監視任務に投入された。高度20,000メートル以上の「コフィン・コーナー(失速速度と限界速度の差が極めて小さい限界飛行領域)」でのシビアな機体制御や、接地時に翼端を擦らないよう地上で追跡車(アシストカー)が併走する特殊な運用手順を伴いながらも、天候や衛星軌道に左右されず即座に高解像度データを収集できる戦術的優位性が高く評価されている。登場から70年近くが経過した現在も第一線の不可欠な高高度偵察アセットとして現役運用が続けられている。

Official Name (正式名称)U-2S Dragon Lady
Country of Origin (開発国)アメリカ合衆国
Manufacturer (製造メーカー)Lockheed Martin Aeronautics (ロッキード・マーティン ※旧 Lockheed Corporation)
Designed (設計年)原型となる初期設計はロッキード社のクラレンス・ケリー・ジョンソンによって1953年に作成され、1954年に開発承認、1955年に初飛行を経て、1956年に最初の公式な運用が開始された。その後、機体を大型化したU-2RやTR-1をベースに、ゼネラル・エレクトリック社製のF118-101エンジンへと換装する大規模な近代化改修・再設計が行われ、現在の仕様である「U-2S」としての最初の機体が1989年5月23日に初飛行を達成し、1990年代から順次運用が開始されている。
Primary Operators (主な運用組織)アメリカ合衆国:アメリカ空軍(空軍戦闘軍団(ACC)第25空軍に属するカリフォルニア州ビーラ空軍基地の「第9偵察航空団(9th Reconnaissance Wing)」が地球規模での運用を一手に担う。傘下の実戦部隊である「第99偵察飛行隊(99th Reconnaissance Squadron)」や在韓米軍の烏山空軍基地に拠点を置く「第5偵察飛行隊(5th Reconnaissance Squadron)」が直接機体を運用するほか、要員訓練を行う「第1偵察飛行隊(1st Reconnaissance Squadron)」が在籍。また、前線の展開拠点としてイギリスのRAFフェアフォードやキプロスのRAFアクロティリ等へ部隊をローテーション配備して現役運用を行っている)
Crew (乗員)1名 (単座型)
訓練・教育用の派生型である「TU-2S」の場合は2名
Dimensions (寸法):全長、全幅(翼幅)、全高L (全長): 19.2 m (63 ft)
W (全幅): 32.0 m (105 ft) (※資料により31.39 m / 103 ftとも記載される)
H (全高): 4.8 m (16 ft)
Empty / Max Takeoff Weight (自重 / 最大離陸重量)Empty (自重): 8,075 kg (17,800 lb) (機体構成・バッチデータ基準により16,000 lbとも記載される)
Max Takeoff Weight (最大離陸重量): 18,144 kg (40,000 lb)
Powerplant (エンジン):型式、推力型式: 1x General Electric F118-101 (非アフターバーナー型ターボファンエンジン)
推力: 1基あたり 17,000 lb (約 75.6 kN)
Max Speed (最大速度):マッハ表記、高度別の速度マッハ表記: 不明 (公式データにマッハ数での明確な最高速度規定値は非公開。高高度の希薄な大気圏における巡航設計値は「コフィン・コーナー」と呼ばれる極めて狭い速度域に制限される)
高度別の速度: 高高度巡航において 410 mph (約 660 km/h) 以上の速度を発揮可能。機体性能上の最大速度データとしては約 500 mph (約 805 km/h)
Combat Range (戦闘行動半径) / Ferry Range (航続距離)Combat Range (戦闘行動半径): 不明 (公式な戦闘行動半径データは非公開。無給油で10時間から12時間以上の連続オンステーション監視任務を遂行可能)
Ferry Range (航続距離): 7,000+ miles (6,090+ nautical miles / 約 11,265+ km) (内蔵燃料のみでの最大航続距離。別の基準に基づく航続データでは 4,600 milesとも記載される)
Service Ceiling (実用上昇限度)70,000+ ft (21,212+ m)
Hardpoints (ハードポイント):ミサイルや爆弾の搭載能力None
Fixed Armament (固定武装):機関砲の口径、弾数None

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

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画像の引用元
  1. By Tim Felce (Airwolfhound) – U2 – RAF Fairford 2005, CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=27818362

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