

概要と開発の背景
AN-M14 TH3 焼夷手榴弾(AN-M14 TH3 Incendiary Hand Grenade)は、第二次世界大戦中の1940年代にアメリカ陸軍化学科(Chemical Corps)によって開発され、アメリカ軍へ制式導入された部隊装備・各種重要機器の緊急無効化および処分用の焼夷手榴弾である。開発の背景には、最前線において自軍の兵器、大砲の閉鎖機、通信機器、車両エンジン、あるいは機密書類や資材が相手方に奪取されるリスクが生じた際、即座にこれらを物理的に溶融し無効化する専用装備が必要とされた事情が存在した。前身である M14 焼夷手榴弾などの初期型モデルでは、標準的なテルミット薬剤(アルミニウム粉末と酸化鉄)の反応速度や熱量保持に制限があり、厚い金属部材を貫通・溶融させる熱出力が不十分であった。アメリカ陸軍は、燃焼温度を飛躍的に向上させ、高温の溶融鉄を発生させて強固な金属パーツを確実に熱溶融・処理できる改修型焼夷アセットとして、テルミット(TH3)の調達と配備を決定した。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、シートメタル(薄鋼板)製の円筒形ケース内部に、テルミット(TH3)と呼ばれる特殊焼夷混合薬剤(アルミニウム粉末、酸化鉄、硝酸バリウム、バインダー等の混合物)を約757g(約26.7オンス)高密度充填し、M201A1 延火点火信管を統合している点にある。作動時には、安全ピンを抜き安全レバーが脱落することで延火信管が着火し、1.2〜2.0秒の遅延を経て内部の第1点火薬(マグネシウム・バリウム系化合物)に火が移動し、主薬剤である TH3 テルミット反応を起こす。この化学反応により最高約 2,200 ℃(約 4,000 ℉)に及ぶ極めて高温の化学熱が発生し、溶融した液体状の鉄を生成する。発生した熱と溶融鉄は自身の重みで金属部材を熱溶融させて食い込み、大気中の酸素を必要とせずに燃焼を継続するため、水中や無酸素環境下でも高い熱処理性能を発揮する設計思想を有する。
運用実績と評価
1940年代の制式化以降、AN-M14 TH3 はアメリカ陸軍、アメリカ海兵隊、アメリカ空軍、アメリカ海軍をはじめとするアメリカ軍全般、ならびにNATO加盟国などの同盟諸国で標準処分・無効化用具として広く導入された。実際の運用においては、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争、アフガニスタン紛争にいたるまで、撤退時における火砲の鎖栓部(閉鎖機)の熱溶接・処理、暗号機や通信機器の焼尽処分、軽装甲車両のエンジンを熱破壊して放棄・無効化する用途に投入された。極めて高い燃焼温度と水圧・風圧に影響されない化学反応熱により、機械装置を不可逆的に作動不能へと追い込む高い処分確実性が実証されている。長年にわたりアメリカ軍の廃棄処分規程における標準機材として位置づけられており、現在に至るまで第一線の特殊作業・緊急廃棄用具として運用が続けられている。
| Official Name (正式名称) | AN-M14 TH3 incendiary hand grenade (正式な補給体系上の名称は GRENADE, HAND: INCENDIARY, TH3, AN-M14) |
| Country of Origin (開発国) | アメリカ合衆国 |
| Manufacturer (製造メーカー) | Pine Bluff Arsenal(米軍の火工品および化学弾薬の主契約製造工廠。軍の政府仕様規格[MIL-DTL-12297J等]に基づいて最終組み立て・充填工程を管轄) |
| Designed (設計年) | AN-M14 TH3焼夷手榴弾は、当初「M9」として開発が進められて基本設計が完了したものの、型番の重複が発覚したため陸海軍共通のArmy-Navy命名システムに基づき名称が改められた経緯を持つが、その具体的な設計完了の年は公式データ上に明記されておらず不明。1943年9月24日にアメリカ軍の標準制式装備(Standard issue)として正式に採択されて同年に部隊運用が開始された。 |
| Primary Operators (主な運用組織) | アメリカ合衆国:アメリカ陸軍、アメリカ海兵隊(陸軍の各種歩兵・戦闘部隊、および海兵隊の公式兵器リスト[List of weapons of the United States Marine Corps]に基づき、主に自軍の機密通信機器、装甲車両、各種大砲などの重要な装備品が敵に鹵獲されるのを防ぐための、自壊・融解処分用の特殊戦術アセットとして調達・保有・運用中)、アメリカ空軍(基地警備隊(Security Forces)、爆発物処理部隊(EOD)、空軍特殊作戦コマンド[AFSOC:CCT、PJ、TACP等])、アメリカ海軍(海軍特殊戦コマンド[SEALs/SWCC]、EOD部隊、艦艇・航空部隊の機密機器取扱要員、NECC[海軍遠征戦闘コマンド]) |
| Type (種類) | 化学(焼夷)(Incendiary / Pyrotechnic) |
| Filler Type (炸薬・内蔵化学物質の種類) | サーメイト(Thermate-TH3)および 第1点火剤(First-Fire Mixture VII)(※Thermate-TH3はテルミットに硝酸バリウム、硫黄、結合剤を加えた軍用火工組成物) |
| Filler Weight (炸薬・薬量) | 26.5 oz (約 751.25 g)(※内蔵されているサーメイトTH3組成物質の純粋な重量) |
| Fuze Type (信管方式) | 延期信管(Pyrotechnic delay M201A1 igniting fuze) |
| Delay Time (遅延時間) | 1.2 – 2.0 seconds |
| Dimensions (外寸) | 全長(全高)145 mm (5.7 in) × 直径 64 mm (2.5 in) |
| Total Weight (総重量) | 32 oz (約 907.18 g) |
| Effective Radius (有効加害・効果半径) | 効果範囲:自律的な熱化学反応により、約 4,000°F(約 2,200°C)の極めて高い熱エネルギーを 30 〜 45 seconds 間放出し、接触した金属構造物を融解・破壊する |
| Deployment Method (投擲・運用方式) | 手動投擲(Hand-thrown) |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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画像の引用元
- Baranyi, B. A. (2020). Expended M14 TH3 Incendiary Hand Grenade [Photograph]. DVIDS. https://www.dvidshub.net/image/6192281/expended-m14-th3-incendiary-hand-grenade












