M83 TA smoke hand grenade

M83 TA smoke hand grenade
発煙および燃焼が終了した状態のM83 TA

概要と開発の背景

M83 TA(Terephthalic Acid)白煙発煙手榴弾は、1990年代にアメリカの Pine Bluff Arsenal や Day & Zimmermann 等の防衛機関・メーカーにおいて開発され、1990年代末よりアメリカ軍へ制式導入された部隊遮蔽・信号用の白煙発煙手榴弾である。開発の背景には、第二次世界大戦期より長年主力白煙手榴弾として運用されてきた AN/M8 発煙手榴弾における環境および人体への有害性課題が存在した。AN/M8 で使用されていたヘキサクロロエタン(HC: Hexachloroethane)系発煙組成物は、燃焼時に塩化水素や亜鉛化合物などの有害な化学物質を生成し、訓練時における隊員の呼吸器への影響や環境汚染のリスクが問題視されていた。アメリカ軍は、従来の AN/M8 と同等の濃密な白煙展開能力を保持しながら、毒性が極めて低く環境や人体に優しい有機酸化合物であるテレフタル酸(TA: Terephthalic Acid)をベースとした次世代白煙アセットとして本機の開発および調達を決定した。

構造と技術的特徴

構造上の最大の特徴は、薄いシートメタル(薄鋼板)で成形された円筒形ケース内部に、毒性を大幅に抑えたテレフタル酸(TA)主成分の発煙薬剤を約312g(約11オンス)充填し、M201A1 延火点火信管を統合している点にある。燃焼メカニズムには、塩素酸カリウムやショ糖などの燃焼剤を用いてテレフタル酸を加熱・昇華させ、大気中で急速に凝集させることで微細な微粒子による白煙を生成する方式を採用している。従来の HC 系発煙弾で問題となっていた化学物質の発生を回避しつつ、作動時には上部および底面のシールを破って 25 秒〜90 秒間にわたり高密度な白い煙を連続噴出させる。外形寸法や重量は既存の M18 カラー発煙手榴弾や AN/M8 と互換性を持たせた設計となっており、歩兵用ポーチへの収納性や投げやすさ(良好な手離れ感)を維持した設計思想を有する。

運用実績と評価

制式採用以降、M83 はアメリカ陸軍、アメリカ海兵隊、アメリカ空軍、アメリカ海軍をはじめとするアメリカ軍全般、ならびにNATO加盟国などの同盟諸国で標準白煙手榴弾および訓練用発煙具として幅広く導入された。実際の運用においては、演習や近接作戦における部隊移動時の視界遮蔽(スモークスクリーン)、相手方の視界遮断、味方位置や着陸帯(LZ)の指示、ならびに各種訓練ミッションに投じられている。旧型の AN/M8(HC)と比較して、閉所や演習場における隊員の呼吸器被害リスクや不快感を劇的に低減させた点が高く評価されており、長年課題であった安全性と環境適合性をクリアした標準装備として位置づけられた。高い点火信頼性と均一な発煙性能を証明し、現在もアメリカ軍および諸外国の第一線で主力白煙発煙手榴弾として運用が続けられている。

Official Name (正式名称)M83 TA smoke hand grenade (※補給体系上は M83 G982 TA Practice Smoke Grenade としても識別される)
Country of Origin (開発国)アメリカ合衆国
Manufacturer (製造メーカー)Pine Bluff Arsenal(※最終組み立ておよび弾薬充填工程[LAP]を担当。金属部品は Tool Masters Inc.、信管は Combined Systems Inc. および Day & Zimmermann が供給)
Designed (設計年)毒性の高い旧式のAN-M8 HC白煙手榴弾に代わる低毒性の環境配慮型トレーニング・遮蔽用資材として、当初はアメリカ陸軍のエッジウッド化学生物学センター(ECBC)等の火工品部門による研究成果をもとに1990年代初頭にかけて技術開発・基本設計が実施された。設計年は1990年代初頭であり、連邦物流情報システム(FLIS)にて正式な国家物品番号(NSN:1330-01-380-0287)が割り当てられて米軍の補給体系に組み込まれた。各部隊への支給および実際の部隊運用が開始されて公式な運用開始年は1993年である。
Primary Operators (主な運用組織)アメリカ合衆国:アメリカ陸軍、アメリカ海兵隊、アメリカ空軍、アメリカ海軍(JPEO A&Aの防衛調達ファクトに基づき、全軍の歩兵部隊や戦闘コンポーネントにおける小部隊用の目視遮蔽・スクリーニング、および訓練用アセットとして調達・運用)
Type (種類)発煙(Smoke)※低毒性の白煙・訓練および戦闘スクリーニング用
Filler Type (炸薬・内蔵化学物質の種類)テレフタル酸(Terephthalic acid[TA])発煙組成物質
Filler Weight (炸薬・薬量)11 oz (約 311.8 g)
Fuze Type (信管方式)延期信管(Pyrotechnic delay M201A1 igniting fuze)
Delay Time (遅延時間)1.0 – 2.3 seconds (FMデータ上は 1.2 – 2.0 seconds)
Dimensions (外寸)全長(全高)144.78 mm (5.7 in) × 直径 63.5 mm (2.5 in)
Total Weight (総重量)16 oz (約 453.6 g)
Effective Radius (有効加害・効果半径)煙の及ぶ範囲:1発あたり約 25 〜 70 seconds(JPEOデータ上は最大 50 〜 90 seconds)間、継続して遮蔽用の濃密な白煙幕を噴出
Deployment Method (投擲・運用方式)手動投擲(Hand-thrown)※一般的な兵士による平均投擲距離は約 40 m

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

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画像の引用元
  1. By Spc. Nelson Rodriguez – https://www.dvidshub.net/image/1361497/decisive-action-14-07, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=51814319

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