
概要と開発の背景
Mortier 120 mm Rayé Tracté Modèle F1(MO-120-RT-61 / MO-120-RT)は、1960年代から1970年代初頭にかけてフランスのThomson-Brandt(現:Thales Group傘下のTDA Armements)が開発し、1973年にフランス陸軍へ制式採用された重迫撃砲である。第二次世界大戦後の各種紛争を経て、歩兵部隊や砲兵部隊が運用していた従来の滑腔重迫撃砲(MO-120-AM50等)は、射程性能や集弾精度の向上、ならびに車両による迅速な牽引移動性能の確保が課題とされていた。また、105mm級の通常榴弾砲に匹敵する大きな威力を維持しつつ、より軽量で機動性に優れた歩兵・砲兵間接火力支援火器が求められた。これを受け、砲身内にライフル(条線)を刻む新発想と一体型走行装置(タイヤ)を統合し、長射程と優れた陣地転換能力を兼ね備えた新世代の120mm重迫撃砲として開発が進められた。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、迫撃砲としては珍しいライフルド・バレル(条線付き砲身)を採用している点と、砲身・脚・車輪付き架座が一体化した牽引式構造にある。一般的な迫撃砲が滑腔砲身から翼安定式の弾薬を発砲するのに対し、本砲は砲身内の条線により弾丸に回転を与えて飛翔させる。これにより、強風下でも高い弾道安定性と精密な集弾性能を誇り、通常弾で約8,150m、ロケット補助弾(RAP)を使用した場合には約13,000mという、野戦重砲級の長射程を実現した。砲体底部には大型ゴムタイヤ付きの移動用車輪が標準装備されており、中型装甲車や軽汎用車などの曳航具に直接結合して高速牽引が可能となっている。陣地展開時には車輪を支点として速やかに接地し、大型の円形底板を接地させることで射撃衝撃を全周に均等に分散させる仕組みが採られている。
運用実績と評価
1973年のフランス陸軍制式採用以降、その卓越した長射程と高い精度が認められ、アメリカ海兵隊(M327 EFSS)、オランダ陸軍、イタリア陸軍、ブラジル陸軍、日本(120mm迫撃砲 RTとしてライセンス生産)など、世界20カ国以上の軍事組織で主力重迫撃砲として導入された。実際の運用においては、湾岸戦争、バルカン半島での国連平和維持活動(UNPROFOR)、アフガニスタン紛争、マリでのサーバル作戦など、多数の国際実戦環境へ投入された。過酷な砂漠や山岳地帯においても、車両牽引による迅速な移動と高い即応火力を発揮し、軽歩兵部隊や空挺部隊に即座に強力な間接火力を提供できる火器として極めて高い信頼性を獲得した。近年では、ヘリコプターや輸送機による空輸適合性を活かした急速展開部隊の要として近代化改修が継続されており、誕生から半世紀を経た現代においても、世界の主要陸軍における牽引式重迫撃砲の世界的デファクトスタンダードとして定着している。
| Official Name (正式名称) | Mortier 120 mm Rayé Tracté Modèle F1 / MO-120-RT-61 |
| Country of Origin (開発国) | フランス |
| Manufacturer (製造メーカー) | homson-Brandt (現在は Thales Group / TDA Armements) |
| Designed (設計年) | 1950年代に設計が開始され、1961年にフランス軍への導入を機に正式な運用を開始 |
| Primary Operators (主な運用組織) | フランス:フランス陸軍(砲兵連隊、各歩兵連隊。最新の装輪装甲車VBMRに車載型派生品「2R2M(Griffon MEPAC)」を搭載して砲兵部隊へ配備開始) イタリア:イタリア陸軍(※ライセンス生産品を運用。また、フレッチャ歩兵戦闘車の車体に車載型派生品「2R2M」を組み込んだ自走迫撃砲型を運用) オランダ:オランダ王立陸軍(※「HB Rayé」の名称でホットチキス・ブラン社によるライセンス生産品を運用) ベルギー:ベルギー陸軍(※ライセンス生産品を運用。ロシア侵攻に際し、一部をウクライナへ供与) キプロス:キプロス国家守備隊(陸軍砲兵・支援部隊で運用) エストニア:エストニア陸軍 ウクライナ:ウクライナ陸軍、ウクライナ空中襲撃軍(※ロシアによる侵攻開始以降、ベルギー等からMO-120-RTが供与され実戦投入) 日本:陸上自衛隊(※豊和工業によるライセンス生産品「120mm迫撃砲 RT」として各普通科連隊の重迫撃砲中隊等に配備。また、派生品として重装軌車に搭載した「96式自走120mm迫撃砲」を第7師団等で運用。最新の共通戦術装輪車ファミリーとして車載型「2R2M」の導入も進行中) マレーシア:マレーシア陸軍(※車載型先進派生システム「2R2M」をACV-15(ACV-300)装甲車およびデフテックAV8装甲車に搭載して運用) パキスタン:パキスタン陸軍、および準軍事組織「フロンティア・コア」 バングラデシュ:バングラデシュ陸軍 トルコ:トルコ陸軍(※MKEK社によるライセンス生産品「HY-12」を運用。北キプロスへの駐留部隊等にも配備) オマーン:オマーン王立陸軍(※車載型派生システム「2R2M」をVAB(6×6)装甲車に搭載して運用) サウジアラビア:サウジアラビア国家警備隊(※牽引型のほか、M113装甲車に車載型派生システム「2R2M」を組み込んだ自走迫撃砲仕様を運用) クウェート:クウェート陸軍(砲兵部隊で運用) カタール:カタール陸軍(砲兵部隊・支援部隊で運用) ヨルダン:ヨルダン王国陸軍 レバノン:レバノン陸軍(フランスから導入) イスラエル:イスラエル国防軍 クルディスタン(イラク北部自治政府):準軍事組織「ペシュメルガ」(※フランスからの供与や旧イラク軍からの鹵獲品を運用) ブラジル:ブラジル陸軍(※ライセンス生産品「120mm M2 Raiado」を運用) メキシコ:メキシコ陸軍 コロンビア:コロンビア陸軍 ジブチ:ジブチ陸軍 チュニジア:チュニジア陸軍 アメリカ合衆国:アメリカ海兵隊(米軍仕様の派生型「M327 EFSS」として運用。2017年以降、徘徊型無人機Hero-120等の導入に伴い全門退役) カナダ:カナダ陸軍(※過去に公式な運用記録がある元運用組織) イラク:旧イラク陸軍(※過去の運用組織。湾岸戦争期などに運用、現在は退役) パナマ:パナマ国防軍(※過去の運用組織。1989年の米軍によるパナマ侵攻以前に運用、現在は組織改編に伴い退役) ルワンダ:ルワンダ陸軍(※過去に公式な運用記録がある元運用組織。1990年代に導入・運用記録あり) |
| Type (種類): | 重迫撃砲 (Heavy mortar)、牽引式迫撃砲 (Towed mortar) |
| Caliber (口径): | 120 mm |
| Operation / Mechanism (作動・推進方式): | 砲口装填式(Muzzle loading)/ ライフリング滑腔(Rifled)、墜発(自重落下)および撃発(トリガー紐・ランヤード)の選択式 |
| Barrel Length / Total Length (砲身長/全長): | 砲身長(Tube length):2,080 mm、全長:3,010 mm 全長(L):3,010 mm、最大幅(W):1,930 mm、全高(H):1,330 mm(射撃・牽引時の姿勢により変動) |
| Total Weight (総重量): | 戦闘時総重量:582 kg |
| Rate of Fire (発射速度): | 最大:毎分15発 〜 18発(短時間バースト時) / 持続:毎分6発 〜 10発 |
| Elevation & Traverse (射角・旋回角): | 仰角(Elevation):+30度 〜 +85度 / 左右旋回角(Traverse):計28度(左右各14度) |
| Effective Range (射程): | 最小射程約1,100 m / 最大射程8,140 m(通常弾)から約13,000 m(ロケット補助推進弾) |
| Ammunition & Feed (使用弾薬/装填方式): | 高爆発弾(HE)、発煙弾、照明弾、対装甲特殊弾、精密誘導砲弾 / 手動砲口装填(弾帯の突起を溝に合わせて装填) |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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画像の引用元
- By Ministerie van Defensie – https://magazines.defensie.nl/defensiekrant/2021/03/01_zwaar-geschut_03, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=99387221











