
概要と開発の背景
UVision Hero-120 は、2010年代にイスラエルの UVision Air Ltd. が開発した対装甲・遠距離精密打撃用の徘徊型兵器システム(Loitering Munition System)である。開発の背景には、従来の前線部隊が敵の重装甲目標や強固な陣地、非可視領域(BLOS:Beyond Line of Sight)に位置する高価値目標を無力化する際、上級司令部からの火力支援や航空支援に頼らざるを得ず、前線における即応性や自律的な視界外打撃能力が不十分であったという課題が存在した。さらに、従来の野戦砲兵や対戦車ミサイルでは弾着時の周辺被害を抑制することが難しいため、射手がリアルタイムで現場を観察・偵察し、必要に応じて攻撃を直前に中止・やり直し(アボート)できる人間介入型(Man-in-the-Loop)の精密直接火力が求められた。こうした要求に応えるため、歩兵による搬送や各種地上・水上プラットフォームからの発射に対応した中距離徘徊型無人機として本機が構築された。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、円筒状の発射キャニスター内に収納される折りたたみ式のX字型翼構造と、低騒音・低赤外線特性を実現する空気圧(ニューマチック)方式の射出メカニズムを採用している点にある。キャニスターから射出された後、X字型翼が自動展開し、胴体後部の電動モーターと2枚ブレードの推進用プロペラにより低視認性・低騒音で目標上空へ進出する。機首前部には2軸安定化ジンバルに収められた電子光学/赤外線(EO/IR)カメラが配備され、画像処理アルゴリズムやAI追尾支援機能を統合している。弾頭部には 4.5 kg(9.9 lb)の対戦車高爆薬(HEAT)や多目的弾頭を装着可能であり、装甲車両の弱点である上面(トップアタック)を狙う精密打撃を完遂する。また、目標接近時に周囲の状況変化を検知した際、射手の操作により中空で直ちに攻撃を中止し、再び徘徊・索敵モードへ戻るか、安全にパラシュート回収するメカニズムを備えている。
運用実績と評価
制式採用以降、Hero-120 は開発国であるイスラエル国防軍に導入されているほか、アメリカ海兵隊の「有機精密火力(OPF-M)」計画やアメリカ陸軍の調達プログラムにおいて、現地パートナーの Mistral Inc. や Rheinmetall 等と連携して制式選定・調達が進められている。実際の運用においては、アメリカ海兵隊の 8×8輪型装輪装甲車(LAV-M)、4×4 輪型 JLTV(統合軽戦術車両)、長距離無人水上艇(LRUSV)への多連装キャニスター発射機の統合試験および実戦展開が実施された。前線部隊が後方火力を待つことなく、最大 60 km 先の視界外領域に位置する動的・静的目標に対して独立して偵察・捕捉・無力化を実行できる戦術適合性が高く評価されている。ハンガリーをはじめとするNATO加盟導入国でも配備が進んでおり、対装甲前線火力を一新する多目的プラットフォームとして位置づけられている。
| Official Name (正式名称) | UVision Hero-120 |
| Country of Origin (開発国) | イスラエル |
| Manufacturer (製造メーカー) | UVision Air Ltd.(※欧州市場向けはドイツのRheinmetall社、米国市場向けはMistral社がライセンス生産・供給を提携) |
| Designed (設計年) | UVision Hero-120が属する徘徊型兵器「Hero」ファミリー全体の設計・開発は、イスラエルのUVision社が設立された2011年から開始されているが、中型バリアントであるHero-120単体としての具体的な設計完了および初公表の正確な年数はメーカー公式データに詳細な記載がなく不明である。また、本機の公式な実戦配備に向けた調達および部隊での本格的な運用開始年は、アメリカ海兵隊が有機精密火力搭載型(OPF-M)システム要件を満たすアセットとして正式に発注・導入を決定した2021年である。 |
| Primary Operators (主な運用組織) | アメリカ合衆国:アメリカ海兵隊(有機精密火力搭載型[OPF-M]プログラムの制式アセットとしてHero-120を選定。JLTV[統合軽戦術車両]、LAV-M[軽装甲迫撃砲車]、無人水上艇[LRUSV]等の各種プラットフォームへ統合し、前線遠征部隊における中距離精密打撃アセットとして本格運用中)、アメリカ陸軍(LASSO(Lethal Unmanned Systems)等の短〜中距離精密誘導兵器の調達枠組みにおいて採用品目に選定)、アメリカ特殊作戦軍(USSOCOM / 2024年6月に特殊部隊向けに最適化された対戦車・装甲目標破壊用カスタムバリアント「Hero-120SF(Special Forces)」を正式発注し、前線特殊作戦部隊において運用管理) イスラエル:イスラエル国防軍(IDF / 開発国として陸軍の地上戦闘部隊および市街地索敵・精密ストライク任務、特殊作戦における即応アセットとして直接実戦投入・隠蔽運用) ハンガリー:ハンガリー軍(2023年7月にRheinmetall社およびUVision社と3桁ミリオンユーロ規模の大型調達契約を正式締結。防衛近代化プログラムに基づき、Hero-120を含む徘徊型兵器ポートフォリオを地上前線部隊へ順次統合・運用訓練を開始) アルゼンチン:アルゼンチン陸軍(2022年12月にイスラエル政府との間で、陸軍の前線歩兵・戦術火力支援アセットとしてHero-120および小型のHero-30を調達する公式契約を締結し配備運用) チェコ:チェコ陸軍(現地パートナー企業RETIA社を介し、地上部隊における精密攻撃能力および遠隔戦術火力の一環としてHero-120システムを公式調達・運用管理) ドイツ:ドイツ連邦陸軍(Rheinmetall社が主導するNATO加盟国向け調達プログラムに基づき、陸軍前線部隊向けの最初の制式徘徊型兵器バッテリー構成アセットとして「FV-014」の識別符号で調達・実証配備を進行) |
| Crew (乗員) | 0名(使い捨て・回収選択型の自爆型徘徊兵器) |
| Dimensions (寸法):全長、全幅(翼幅)、全高 | L (全長):1.34 m (4.4 ft) W (全幅/翼幅):1.41 m (4.6 ft) ※十字型固定翼の翼幅(チップ・トゥ・チップ) H (全高):特有の十字型固定翼およびキャニスター収納構造を有す、センサー収納状態等の公式な本体垂直全高データはメーカー非公表 |
| Empty / Max Takeoff Weight (自重 / 最大離陸重量) | 自重(キャニスターやランチャーを除く機体重量):12.5 kg (27.6 lb) 最大離陸重量(総システム重量/キャニスターに収納された状態):14.5 kg 〜 18 kg (32 lb 〜 39.7 lb) ※ランチャーおよびバッテリー/弾頭のカスタム構成による |
| Powerplant (エンジン):型式、推力 | Electric Motor 推力(出力):低騒音・低熱線シグネチャー仕様の電動モーター1基によるプッシャー式(後方吸気・推進)プロペラ駆動。モーター個別の公式馬力や定格推力数値は非公開 |
| Max Speed (最大速度):マッハ表記、高度別の速度 | ダッシュ/突入最大速度 100 knots (約 185.2 km/h) ※マッハ表記換算で約 0.15 Mach。巡航飛行・徘徊速度 50 knots 〜 100 knots (約 92.6 km/h 〜 185.2 km/h) |
| Combat Range (戦闘行動半径) / Ferry Range (航続距離) | 航続距離(Max Data Link Range / 通信リンク最大運用限界半径):40 km 〜 60 km (24.8 miles 〜 37.2 miles) 以上 ※地上統制システム(GCS)および暗号化視線外(BLOS)データリンク仕様による。最大連続滞空(飛行)時間は 60分 |
| Service Ceiling (実用上昇限度) | 18,000 ft (5,500 m) ※通常のISRおよび索敵時における標準運用巡航高度(Typical mission altitude)は、対地高度(AGL)1,200 ft 〜 3,000 ft(360 m 〜 900 m) |
| Hardpoints (ハードポイント):ミサイルや爆弾の搭載能力 | None 機首・機体中央に4.5 kg(10 lb)の対戦車・対装甲・対人員多目的弾頭(高解像度ジンバル式EO/IRカメラ一体型仕様)を1基内蔵して自爆攻撃を行う |
| Fixed Armament (固定武装):機関砲の口径、弾数 | None |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
PR:関連商品

