
概要と開発の背景
SIG MPXは、2013年にアメリカのSIG Sauer Inc.によって発表された9x19mmパラベラム弾を使用する多用途型短機関銃(サブマシンガン)である。20世紀後半から世界各国の軍・警察・特殊部隊で標準装備として広く使われてきたHeckler & Koch(H&K)社の「MP5」などの旧世代サブマシンガンは、ローラーロッキング機構に起因するメンテナンスの複雑さや、各種光学機器・アクセサリー装着面での拡張性の不足が課題となっていた。また、現代の軍や法執行機関においては、主力小銃であるAR-15 / M4カービンと同一の操作系を持ち、過酷な環境下や限られた空間でも高い運用柔軟性を発揮するモジュール式サブマシンガンの更新ニーズが急速に高まっていた。こうした時代の要請に応えるため、最新アサルトライフルのメカニズムと高度な人間工学(エルゴノミクス)を融合させた新世代の小型火器として開発がスタートした。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、従来のサブマシンガンで一般的であったシンプルブローバック方式や反動利用方式ではなく、アサルトライフル等で多用される「ショートストローク・ガスピストン機構」と「ローテーティング・ボルト(回転ボルト閉鎖機構)」を9mm口径の小型機体としていち早く統合した点にある。密閉状態から発射される閉鎖ボルト構造を採用することで、射撃時の反動による不規則なブレやバレル振動を最小限に抑制し、連続射撃時における高い制御性と優れた集弾性能を両立させている。機体構造には軽量・高強度なアルミニウム合金や強化ポリマー材が使用され、マニュアルセフティ、マガジンキャッチ、ボルトリリース等の操作系はAR-15と共通のアンビ(左右両利き対応)構造で設計されている。さらに、専用工具を用いることで短時間でバレル長やハンドガードを変更できる優れたモジュール性を備え、M-LOK規格のハンドガードや上面ピカティニー・レイルによる高い光学機器拡張性を誇る。
運用実績と評価
2015年の本格出荷開始以降、アメリカの各種警察特殊部隊(SWAT)をはじめ、インド陸軍(特殊部隊)、インドネシア国家警察(88特別部隊)、シンガポール警察(特殊戦術部隊)など世界各国の防衛・警備組織で制式採用・導入されている。実際の野外演習や閉所戦闘(CQB)訓練においては、M4カービン等となじみの深い統一された操作手順により教育訓練コストを軽減できる点や、ガスピストン式作動に起因する消音器(サプレッサー)装着時の極めて優れた作動安定性と高い静粛性が高く評価された。特にサプレッサーを統合した一体型モデル「MPX-SD」や、よりコンパクトな「MPX K」、民生・競技向けの「MPX PCC」など多様な派生型が展開され、各種近距離での即応警戒や施設防衛に適した汎用装備として定着した。旧型機に代わる21世紀型サブマシンガンの標準モデルとして世界各地で確固たる立ち位置を築いている。
| Official Name (正式名称) | SIG MPX |
| Country of Origin (開発国) | アメリカ合衆国 / スイス |
| Manufacturer (製造メーカー) | SIG Sauer, Inc.(アメリカ現地法人) |
| Designed (設計年) | 2010年代前半にSIG Sauerによって開発され、2013年頃から法執行機関や軍・特殊部隊向けに運用が開始された短機関銃 |
| Primary Operators (主な運用組織) | アメリカ合衆国:アメリカ陸軍(契約司令部[ACC]における一括調達)、アメリカシークレットサービス(USSS:2019年にMPX-Kを採用)、各連邦・州法執行機関の特殊部隊(FBI、SWAT等) ポーランド:ポーランド軍特殊部隊「JW GROM(軍事ユニット2305)」(従来のHK MP5に代わる次世代短機関銃として2019年より制式導入・運用) マレーシア:マレーシア陸軍(第21特殊勤務群[GGK]所属の第11特殊勤務連隊[11 SSR]の戦闘救助班[CRT])、マレーシア国家警察(特別行動部隊[UTK]) インドネシア:インドネシア海軍(対テロ特殊作戦部隊[Denjaka])、インドネシア空軍(即応部隊コマンド[Kopasgat])、国家警察(対テロ特殊部隊[デタッチメント88]) 中華民国(台湾):中華民国陸軍(各種特殊部隊)、中華民国海軍(海兵隊特戦戦闘中隊[Special Service Company])、国家安全局、警政署(特殊部隊[維安特勤隊]) インド:国家安全保安局(NSG:内務省所属の対テロ特殊部隊。MP5からの更新として標準配備を進行)、オディシャ州警察など バングラデシュ:バングラデシュ陸軍(第1パラコマンド大隊[1st Para-Commando Battalion]) シンガポール:シンガポール陸軍(第1コマンドー大隊[1st Commando Battalion]) メキシコ:メキシコ海軍(海軍特殊作戦部隊[UNOPES]においてSIG MCX等と共に導入・運用) タイ:タイ王国警察(中央捜査局[CIB]、戦術特殊部隊等において国家規模で大量調達・運用) 香港:香港警察(特別任務連[SDU/フライング・タイガース]、反テロ特効隊[CTRU])、香港懲教署(緊急応変隊) ドミニカ共和国:国家警察(対テロ特別部隊[Comando Especial Antiterrorista]等におけるCQB装備) スイス:ジュネーブ州警察(州法執行機関の警備・特殊部隊) トリニダード・トバゴ:トリニダード・トバゴ警察サービス(国家警察[TTPS]) 日本:防衛省(防衛装備庁にて「試験用機関けん銃及び試験用9mm普通弾(MPX)」として調達実績あり。陸上自衛隊特殊作戦群および海上自衛隊特別警備隊(SBU)等での試験・評価目的とみられるが、一般部隊における制式採用・実戦運用の公表事実はない) |
| Type (種類) | 短機関銃 |
| Caliber (口径) | 9x19mm Parabellum(開発初期には.357SIGや.40S&Wへのコンバージョン仕様も発表) |
| Action (作動方式) | ガス圧作動(ショートストローク・ガスピストン / 回転ボルト閉鎖、クローズドボルト発射) |
| Overall Length (全長) | MPX K(現行標準モデル): 約 564 mm(ストック展開時)/ 約 348 mm(ストック折り畳み・縮小時) MPX(初期16インチ仕様等): バリエーションや装着するストックの種類により異なる |
| Barrel Length (銃身長) | MPX K: 114 mm(4.5インチ) 標準モデル: 203 mm(8インチ)、356 mm(14インチ)、406 mm(16インチ)など用途に応じた銃身が用意 |
| Weight (重量) | 約 2.1 kg(MPX K、弾倉を除く) |
| Rate of Fire (発射速度) | 850 rpm |
| Effective Range (有効射程) | 50 – 100 m |
| Feed System (給弾方式) | 20 , 30 or 35-round magazine |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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画像の引用元
- 作者 總統府 – [1],CC BY 2.0,https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=83135884




