
概要と開発の背景
Benelli M3(ベネリ M3 / M3 Super 90)は、1989年にイタリアのBenelli Armi S.p.A.によって開発された12ゲージ口径の多用途型散弾銃(ショットガン)である。1980年代当時、軍や警察などの法執行機関においては前級にあたる「M1 Super 90」をはじめとするセミオートマチック・ショットガンが広く普及していた。しかし、標準的な散弾やスラグ弾では優れた連続射撃性能を発揮する一方で、暴動鎮圧や警戒用途に用いられる低出力のゴム弾や催涙弾といった特殊弾薬(低威力弾薬)を使用した場合、発射反動が不十分となりセミオート機構が正常に排莢・給弾を行えない作動不良が生じることが課題とされていた。こうした現場の課題を解決するため、通常の部隊行動時には連射性に長けたセミオートマチック運用を行い、低出力弾薬や特殊用途弾薬を使用する際には手動で確実に排莢・装填を行うポンプアクション運用へと切り替えられる、高度な柔軟性を備えたデュアルモード型散弾銃の開発がスタートした。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、独自の「イナーシャ・ドリブン(慣性遅延)システム」によるセミオート機構と、伝統的なポンプアクション機構をワンタッチで選択できる独自の作動メカニズムを統合している点にある。フォアエンド(ハンドガード)の先端部に配置されたリング型切り替えレバーを操作するだけで、状況に応じた作動方式への瞬時切り替えが可能である。同時代のライバル機であるFranchi SPAS-12などがガス圧作動式を採用していたのに対し、本機は慣性遅延方式を採用しているため、ガスポートやピストンといった複雑な駆動パーツを必要としない。これにより機関部構造の大幅な簡略化と軽量化を実現しており、作動部の汚れにも強く優れたメンテナンス性と作動安定性を誇る。レシーバーには航空機グレードの軽量高強度アルミニウム合金が用いられ、ストックやハンドガードには耐久性・耐候性に長けた強化ポリマー材が採用されている。過酷な野外環境や塩害に晒される水上環境下であっても高い操作信頼性を維持する合理的な設計思想が体現されている。
運用実績と評価
1989年の製造開始以降、アメリカ国内の各種警察機関やSWAT部隊をはじめ、フランス陸軍、カナダ軍、ニュージーランド陸軍などの軍事組織、ならびに世界各国の警備機関において制式導入・運用されている。日本の海上自衛隊においても、ピストルグリップと折りたたみ式金属製ストックを備えた派生モデル「M3T」が導入され、各護衛艦の艦内保管火器や立入検査隊(臨検部隊)の近接警戒用装備として長年配備されている。実際の訓練や警戒・警備任務においては、使用する弾薬の威力を問わず作動方式を変更することで確実に動作する高い機能的信頼性と、軽量なボディによる取り回しの良さが具体的に高く評価された。固定ストック仕様の「M3 Super 90」、折りたたみストック仕様の「M3T」、ショートバレルモデルなど多様なバリエーションが展開され、後継のガス圧式モデルであるBenelli M4が登場した現代においても、切り替え機能を持つ多目的ショットガンの代表格として世界中で維持・運用が続けられている。
| Official Name (正式名称) | Benelli M3 (M3 Super 90) |
| Country of Origin (開発国) | イタリア |
| Manufacturer (製造メーカー) | Benelli |
| Designed (設計年) | 1980年代後半にBenelliによって開発され、1990年頃から各国軍・警察・特殊部隊で運用が開始されたコンバットショットガン |
| Primary Operators (主な運用組織) | アメリカ合衆国: アメリカ陸軍、アメリカ海軍(軍の主力はガス圧作動式の「M4 / M1014」であり、M3は非致死性弾薬の撃ち分けを行う一部の臨検部隊や基地警備隊、ならびに地方警察SWATにて限定運用) 日本: 海上自衛隊(各護衛艦の立入検査隊(MIT)、および艦艇の見張り・不審船警戒用火器として「M3T」を運用。陸上自衛隊・航空自衛隊での部隊配備はなし)、警察特殊急襲部隊(SAT)、海上保安庁 イタリア: イタリア陸軍、イタリア海軍(海軍陸戦隊「サン・マルコ旅団」、特殊部隊「GOI」)、イタリア空軍、国家憲兵隊(カラビニエリ)特殊部隊(GIS) イギリス: 地方警察特殊銃火器部隊 フランス: フランス陸軍(特殊作戦旅団)、フランス海軍(海軍コマンド)、国家警察対テロ特殊部隊(RAID)、国家憲兵隊特殊部隊(GIGN) ドイツ: ドイツ陸軍(陸軍特殊部隊司令部(KSK))、ドイツ連邦警察(GSG-9)、各州警察特殊出動大隊(SEK) カナダ: カナダ海軍(艦艇自衛・強行臨検(VBSS)部隊) オーストラリア: オーストラリア陸軍(特殊空挺連隊(SASR)など)、オーストラリア海軍(艦艇臨検部隊) ニュージーランド: ニュージーランド陸軍、ニュージーランド警察(特殊戦術グループ(STG)) ウクライナ: ウクライナ国防省情報総局(GUR)所属の特殊部隊、ウクライナ国家警察(特殊部隊「KORD」)、ウクライナ領土防衛軍 スペイン: スペイン陸軍、スペイン海軍(海兵隊特殊作戦部隊(UOE))、国家警察(GEO) ポルトガル: ポルトガル陸軍(特殊作戦コマンド)、ポルトガル海軍(海兵隊部隊)、国家治安警察(特別行動部隊(GOE)) ギリシャ: ヘレニック陸軍(特殊作戦部隊)、警察対テロ特殊部隊(EKAM) クロアチア: クロアチア陸軍、軍警察特殊部隊 チェコ: チェコ共和国軍(第601特殊作戦大隊、軍警察) エストニア: エストニア国防軍(特殊作戦部隊、国境警備部隊) リトアニア: リトアニア国防軍(特殊作戦部隊) アイルランド: アイルランド国防軍(陸軍レンジャー部隊(ARW))、政府警察(緊急対応部隊(ERU)) 大韓民国: 大韓民国海軍(海軍特殊戦旅団(ROKN UDT/SEAL))、海洋警察庁(海洋警察特攻隊(SSAT)) 中華民国(台湾): 中華民国海軍(海軍陸戦隊・特任部隊)、内政部警政署(維安特勤隊) シンガポール: シンガポール警察(特殊戦術部隊(STAR)、沿岸警備隊) マレーシア: マレーシア海軍(特殊部隊「PASKAL」)、マレーシア王立警察(特別行動部隊(UTK)、VAT69) インドネシア: インドネシア海軍(特殊潜水戦隊(Kopaska))、インドネシア陸軍(特殊部隊(Kopassus)) フィリピン: フィリピン海軍(特殊作戦グループ(NAVSOG))、フィリピン国家警察(特殊行動部隊(SAF)) タイ: タイ王立海軍(特殊戦コマンド(SEALs))、タイ王立警察(特殊作戦部隊) イスラエル: イスラエル国防軍(各種特殊部隊)、国境警察(ヤマム) サウジアラビア: サウジアラビア国家防衛隊、サウジアラビア海軍(特殊部隊) アラブ首長国連邦: アラブ首長国連邦陸軍(特殊部隊司令部) ブラジル: ブラジル陸軍(特殊作戦コマンド)、各州警察特殊作戦大隊(BOPE) アルゼンチン: アルゼンチン海軍(海兵隊部隊、戦術潜水員グループ)、連邦警察(GEOF) チリ: チリ海軍(海軍特殊戦コマンド)、チリ陸軍(特殊作戦旅団) コロンビア: コロンビア海軍(海兵隊特殊部隊)、国家警察 メキシコ: メキシコ海軍(海兵隊特殊作戦部隊(FES))、連邦警察(SWAT) 南アフリカ: 南アフリカ国防軍(特殊作戦旅団)、南アフリカ警察(特殊タスクフォース(STF)) |
| Type (種類) | セミオートマチックショットガン |
| Caliber (口径) | 12 Gauge |
| Action (作動方式) | イナーシャ・ドリブン式半自動 ⇔ ポンプアクション式をセレクターレバーで切り替え可能 |
| Overall Length (全長) | 標準固定銃床仕様: 約 1,040 mm M3T(折り畳み銃床仕様): 約 1,030 mm(ストック展開時)/ 約 780 mm(折り畳み時) |
| Barrel Length (銃身長) | 約 500 mm(19.75インチ仕様、用途により14インチから26インチまで選択可能) |
| Weight (重量) | 約 3.2 kg 〜 3.5 kg(バリエーション・銃身長により異なる、弾薬を除く) |
| Rate of Fire (発射速度) | セミオート時: 半自動 ポンプアクション時: 手動 |
| Effective Range (有効射程) | 約 40 m 〜 50 m(使用する弾薬:散弾・スラッグ弾やチョークの種類により前後) |
| Feed System (給弾方式) | 5 or 7-round internal tube magazine |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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画像の引用元
- By New Zealand Defence Force from Wellington, New Zealand – OH 06-0570-27, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=20382002

