M1130 commander’s vehicle

M1130 commander's vehicle

概要と開発の背景

M1130 Commander’s Vehicle(M1130 CV / ストライカー指揮車)は、2000年代初頭にアメリカのGeneral Dynamics Land Systems(GDELS)によって開発され、2002年よりアメリカ陸軍へ順次導入された8×8の装輪式移動指揮通信車両である。開発の背景には、アメリカ陸軍が進めた歩兵部隊の再編構想「ストライカー旅団戦闘団(SBCT)」における、高機動かつ高度にネットワーク化された戦術指揮アセットの配備ニーズが存在した。従来の旅団・大隊レベルの指揮所では、履帯式のM577指揮塗装甲車や非装甲・軽装甲のハンヴィー(HMMWV)指揮車型が運用されていた。しかし、M577は自走巡航速度や航続距離の面で高速移動する装輪部隊に随伴できず、ハンヴィー型は電子機器の積載量や防護力、車内作業空間の制限が大きな課題となっていた。これらを解決し、旅団および大隊の指揮官や幕僚部隊が最前線で作戦を直接指揮できる高防護・高機動の移動指揮所として開発がスタートした。

構造と技術的特徴

構造上の最大の特徴は、歩兵輸送型(M1126 ICV)共通の8×8装輪車台をベースとしながら、後部戦闘室を多機能戦術指揮所に刷新し、重厚な通信ネットワーク機器と独立給電システムを統合した点にある。車内には、戦術戦況をリアルタイムで共有するFBCB2(Force XXI Battle Command Brigade and Below)戦術デジタル通信システムや高周波・超短波無線機群(SINCGARSやAN/PRC-117等)が密度高く配置されている。これらの大量の電子機器をエンジン停止中の静音駐留時にも持続運用できるよう、車体後部側面には静音型の補助動力装置(APU)が標準装備されている。また、行軍中でも広域デジタル通信を維持するためのマルチアンテナアレイが車体上面に集中配置された。自衛兵装としてリモコン式兵器ステーション(M151 RWS)を備え、車内から安全に12.7mm M2重機関銃や40mm Mk 19自動擲弾銃を遠隔操作できる。車体には高硬度スチール構造装甲とスボールライナーが施され、防護力と過酷な環境下での安定した動作が確保されている。

運用実績と評価

2003年のイラク戦争(自由イラク作戦)やアフガニスタン紛争へ実戦投入されて以降、アメリカ陸軍のストライカー旅団戦闘団における各旅団司令部、大隊司令部、中隊本部の指揮車両として広く導入・運用された。実戦においては、車内から複数の無線回線とデジタル戦術ネットワークを介して各小隊や上級司令部、航空支援アセットと瞬時に通信・情報共有を行えるネットワーク中心戦(NCW)の基幹機能が高く評価された。前級のM577指揮車と比較して路上巡航速度や航続距離、空輸適応性が格段に進化し、ハンヴィー指揮型と比較して乗員防護能力と車内作業環境の快適性が具体的に実証された。過酷な非対称戦環境に対応するため、車体底面を二重V字形状にして地雷や爆風への耐性を大幅に強化した改修モデル「M1130 DVH(Double V-Hull)」や最新のDVH-A1仕様への改修が行われた。現在においても、ストライカー部隊の広域作戦指導と情報伝達を支える中核アセットとして現役運用が続けられている。

Official Name (正式名称)M1130 commander’s vehicle
Country of Origin (開発国)アメリカ合衆国 / カナダ
Manufacturer (製造メーカー)General Dynamics Land Systems (GDLS)
Designed (設計年)2000年にアメリカ陸軍の暫定装甲車両(IAV)計画として選定されてから2002年にかけて初期の設計・量産移行が行われ、最初のストライカー旅団戦闘チーム(SBCT)となった第2歩兵師団第3旅団等への引き渡しを経て、同旅団が2003年10月にイラク戦域へ展開したことで公式に運用を開始
Primary Operators (主な運用組織)アメリカ合衆国:アメリカ陸軍(開発国かつ最大の筆頭運用国。各ストライカー旅団戦闘チーム(SBCT)傘下の旅団司令部中隊(HHC)、各歩兵大隊・騎兵(偵察)大隊・砲兵大隊の指揮班に広く実戦配備。基本型の「M1130(CV)」に加えて、現在は耐地雷・IED防護性能を劇的に高めた二重V字ハル構造の派生品である「M1255(Double-V Hull:DVH-CV)」、および足回りと電子システムを大幅にアップデートした最新のデジタルネットワーク対応派生型「M1255A1(DVH-A1 CV)」を主力現役運用中)
北マケドニア:北マケドニア陸軍(NATO加盟に伴う防衛力近代化・米国政府からの公式FMS調達計画(計54両のストライカー導入)に基づき調達。主要な軽歩兵大隊・即応部隊戦闘群における戦術的な移動式連隊・大隊指揮ポスト、および戦場ネットワーク統制の中核アセットとして「M1130 commander’s vehicle(CV)」仕様を公式配備・運用中)
Crew / Capacity (乗員および兵員輸送数)2名 (操縦手、車長) + 兵員輸送数: 3名 〜 4名(総員 5名 〜 6名)
Combat Weight (戦闘重量)19,051 kg (19.05 t / 42,000 lbs)
Dimensions (寸法: 全長/全幅/全高)W (全幅): 2,957 mm (2.95 m) ※外装各種マウント含む
L (全長 / 砲身含まず車体長): 7,400 mm (7.40 m)
H (全高 / D指定の垂直高): 3,121 mm (3.12 m ※複数の戦術通信アンテナ・マスト類を除く、車長キューポラ部を含む高さ) / 車体ハル天面高:2,640 mm (2.64 m)
Armor (装甲の詳細: 複合装甲、ERA、APSの有無)High-hard steel structure hull with optional bolt-on ceramic armor, internal spall liners, and slat/cage armor options (高硬度鋼板溶接構造ハル + ボルト留め式セラミック増加装甲、内面防破ライナー、スラット装甲オプション、最新型はM1255二重V字ハル仕様)
※基本装甲と増加装甲の組み合わせにより、14.5mm重機関銃弾や152mm砲弾の空中炸裂破片に対する全周防御力を有する。複合装甲や爆発反応装甲(ERA)は装備していない。
Main Armament (主武装)1x Protector M151 Remote Weapon Station にいずれか 1基を選択装備
1x 12.7 mm M2HB heavy machine gun
1x 40 mm Mk 19 automatic grenade launcher
※車内からリモート操作で射撃を行う
Secondary Armament (副武装)4x M6 smoke grenade launchers (M6発煙弾発射機 ×4基 ※リモートウェポンシステムに標準統合)
Engine (エンジン出力 hp/kW)Caterpillar 3126 6-cylinder inline 4-cycle turbocharged liquid-cooled diesel engine (キャタピラー社製 3126 直列6気筒4サイクルターボチャージドディーゼル、出力: 350 hp / 260 kW ※後期の量産・A1改修型仕様には Caterpillar C7 エンジン(350 hp)を搭載)
Max Speed (最高速度: 整地/不整地)Paved (整地): 96 km/h 〜 100 km/h (運用制限値:96.5 km/h / 60 mph)
Unpaved (不整地): 約 40 km/h 〜 50 km/h
Operational Range (航続距離)500 km (310 miles)

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

PR:関連商品

画像の引用元
  1. By The U.S. Army – https://www.flickr.com/photos/35703177@N00/44549219524/, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=88090285

上部へスクロール