Lenco BearCat

Lenco BearCat
セルビア軍

概要と開発の背景

Lenco BearCat(レンコ ベアキャット)は、2001年にアメリカの Lenco Armored Vehicles(Lenco Industries)によって開発され、アメリカ各州の警察法執行機関および軍組織へ導入された4×4装輪式の戦術装甲レスキュー車両である。開発の背景には、1990年代末のアメリカ国内において、警察特殊部隊(SWAT)や軍セキュリティ部隊が運用していた旧式軍用払い下げ装甲車(Cadillac Gage Ranger / Peacekeeper等)の老朽化と高い維持コスト、ならびに大型すぎる車体による都市部での取り回しの悪さが深刻な課題となっていた事情が存在した。これらの問題を解決するため、Lenco社が先行して開発していた大型装甲車「B.E.A.R.」の設計ノウハウをベースに、小回りが利き高速度での現場急行が可能な軽量プラットフォームの構築が求められた。ロサンゼルス郡保安局(LASD)特務部隊等の実戦的意見を取り入れ、名称が「Ballistic Engineered Armored Response Counter Attack Truck」の頭文字に由来する、現場での迅速な要員防護と人命救助を最優先とした戦術装甲車として開発がスタートした。

構造と技術的特徴

構造上の最大の特徴は、Ford Motor Company 製の商用ヘビーデューティートラック(Ford F-550 Super Duty等)の堅牢な4×4シャシーおよびパワートレインを基盤とし、その上に高強度ミリタリーグレード鋼板で構成された高剛性モノコック装甲ボディを完全統合している点にある。市販トラックのドライブトレインを活用することで、部品入手性と優れた整備性、さらには時速130km/hを超える高い移動機動性を獲得している。車体防護性能は極めて高く、B7規格およびNIJ Level IVクラスに適合する多発着弾対応の防弾ガラスと装甲を備え、7.62mm徹甲弾や.50 caliber BMG弾の連続着弾に耐える構造と耐爆性床面を両立させている。車内は最大10〜12名の要員を効率よく収容できるオープンフロア設計であり、360度回転可能な防護シールド付きルーフタレット、側部ランニングボード(外部搭乗用ステップ)、車体各部のガンポート(射出孔)を標準装備する。不整地対応型の「G3」、高所アクセス用昇降装置「MARS」装着型、救急搬送型「MedCat」など、目的応じた柔軟なモジュール設計思想が導入されている。

運用実績と評価

2001年の完成・配備開始以降、アメリカ空軍(ICBM基地コンボイ防護部隊等)、アメリカ海兵隊 Security Force Regiment、アメリカ陸軍をはじめとする軍組織のほか、連邦捜査局(FBI)や全米500箇所以上の州・市警察SWATチームで広く制式採用・運用されている。海外においてもオーストラリア連邦警察(AFP)、オランダ海兵隊(DSI/NLMARSOF)、モロッコ、カナダ、ブラジルなど世界40か国以上の安全保障・法執行機関へ導入された。銃器を用いた立てこもり事態や要人保護、高リスクな捜索差押え任務において、本機体を安全な動く防護壁として現場へ接近させ、要員の安全確保や危険区域からの脱出救助を行うレスキュー車体として極めて高い評価を獲得した。実際の現場事例として、高威力のライフルから28発以上の着弾を直接受けた際にも車内への貫通を完全に阻止し、要員の安全を確実に維持した具体的な防護実績が実証されている。現代の対テロ作戦や人命救助活動を最前線で支える標準レスキュープラットフォームとして運用が続けられている。

Official Name (正式名称)Lenco BearCat
Country of Origin (開発国)アメリカ合衆国
Manufacturer (製造メーカー)Lenco Armored Vehicles (Lenco Industries, Inc.)
Designed (設計年)基本設計は2000年に着手され、ロサンゼルス郡保安局(LASD)の特別執行部隊(SEB)からのコンパクトかつ堅牢な装甲車という要求を反映する形で、2001年8月に最初のプロトタイプ(初代モデル)の開発・製造が完了
同2001年に市場へ正式導入されたことで公式な運用が開始
Primary Operators (主な運用組織)アメリカ合衆国:アメリカ空軍(空軍警備隊(Air Force Security Forces)および地球規模攻撃軍(Global Strike Command)にて大陸間弾道ミサイル(ICBM)サイロ防衛やコンボイ警備用に60両以上)、アメリカ陸軍(憲兵隊特別対応チーム(Military Police Corps Special Reaction Teams:フォートブラッグ等の各基地))、アメリカ海兵隊(海兵隊警備部隊連隊(Marine Corps Security Force Regiment))、およびアメリカ海軍(太平洋・大西洋の戦略兵器施設(Strategic Weapons Facilities)警備部隊)にて、EOD(BombCat)や救難(MedCat)などのメーカー純正派生バリアントを含め大規模に現役運用中
セルビア:セルビア軍(セルビア武装軍の憲兵隊(Military Police)において、不整地パトロールおよび戦術拠点防衛アセットとして公式現役運用中
モロッコ:モロッコ補助軍(軍事および警察の双方の性質を持つ準軍事組織であり、暴動鎮圧(Riot Control)、兵員輸送(Troop Transport)、通信(Communications)、コンボイ保護(Convoy Protection)、SWAT仕様からなる5つのメーカー純正派生バリアント計88両を公式現役運用中
オランダ:オランダ王立海兵隊(海兵隊特殊作戦部隊(NLMARSOF)のMスクアードロン)、およびオランダ王立国家憲兵(Koninklijke Marechaussee:準軍事組織)において、国内の複合対テロ作戦を担う特殊介入部隊(DSI)の作戦指揮下で公式現役運用中
Crew / Capacity (乗員および兵員輸送数)2名 (Driver、Commander) + 兵員輸送数:最大10名〜12名 (後部コンパートメントのベンチシートに完全装備の隊員を収容可能。なお、大型仕様の「B.E.A.R.」とは異なり、コンパクトな都市・不整地機動を想定した設計)
Combat Weight (戦闘重量)Gross Vehicle Weight Rating (GVWR):17,550 lbs (7,961 kg、標準防弾鋼板・装備満載時) / ペイロード(最大積載能力):約4,000 lbs (1,814 kg)
Dimensions (寸法: 全長/全幅/全高)W (全幅): 94.5 in (2.40 m、サイドミラーおよび外部装備を除く車体幅。一部データで最大120 in / 3.04 m とされるのはマウント構造等を含む最大展開値)
L (全長): 248 in (6.30 m、固定砲身なし、フロントのラムバー等のアタッチメントを除く)
D (全高): 106 in (2.70 m、ルーフハッチの折り畳み時。ルーフ上の回転タレットやオプションのElevated Tactics Systems展開時は最大144 in / 3.66 m)
Armor (装甲の詳細: 複合装甲、ERA、APSの有無)Mil-Spec steel armor construction (米軍規格の防弾鋼板構造)、0.5 in 〜 1.5 in (13 mm 〜 38 mm) 厚スチールプレート、NIJ規格 Type IV / Type IV+ 適合、高バリスティック・マルチヒット(複数発被弾)対応の .50 BMG-rated bulletproof glass(50口径重機関銃弾対応防弾ガラス)、および Blast-resistant flooring(耐爆・防破底面構造)を標準装備。
Main Armament (主武装)固定の主武装はなし
ルーフ部に Weapon mountable rotating roof hatch(360度回転式銃塔ハッチ)または有人タレットを標準装備。部隊の戦術要求や軍用仕様、あるいはリモートウェポンステーション(RWS)の統合により、以下のいずれかを選択してマウント可能
・12.7mm M2HB 重機関銃
・7.62mm M240 機関銃
・40mm Mk 19 自動グレネードランチャー
Secondary Armament (副武装)なし
固定の同軸機関銃等は持たないが、車体側面および後部に Multiple side gun ports(複数の自衛用ガンポート/銃眼)を標準装備しており、乗員が個人火器(M4カービン等)を突き出して内部から安全に射撃可能
Engine (エンジン出力 hp/kW)6.7L Ford Power Stroke Turbo-Diesel V8 Engine (6.7リットル V型8気筒コモンレール式ターボディーゼル。Ford F-550商用スーパーデューティシャーシ共通のカスタム流用) / 出力:440 hp (328 kW) @ 2,800 rpm (旧型モデルは約300 hp〜400 hp仕様)
Max Speed (最高速度: 整地/不整地)Paved (整地): 85 mph 〜 90 mph (約 137 km/h 〜 145 km/h、4×4オートマチックトランスミッションおよび安全制御による高速巡航能力)
Unpaved (不整地): 約 25 mph 〜 35 mph (約 40 km/h 〜 56 km/h、G3等の不整地特化オフロードサスペンションおよびランフラットタイヤ(Run Flat Tire Inserts)装着時の路面追従限界による)
Operational Range (航続距離)最大 約 350 miles 〜 400 miles (約 563 km 〜 643 km、ベースとなるFord F-550の燃料タンク容量および戦術アイドリング、空調(HVAC)稼働条件による)

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

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画像の引用元
  1. By Srđan Popović – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=132346197

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