L85A2 / SA80 A2

L85A2 / SA80 A2
イギリス海兵隊第42コマンド部隊リマ中隊の隊員

概要と開発の背景

L85A2(SA80 A2 Individual Weapon)は、2000年代初頭にイギリス国防省がドイツの Heckler & Koch 社に委託して従来型の全面改修を行い、2002年にイギリス軍へ正式導入されたブルパップ式アサルトライフルである。開発の背景には、1985年に制式採用された初期型 L85A1(SA80 A1)が引き起こした極めて深刻な動作不良と信頼性不全の課題が存在した。L85A1 は湾岸戦争をはじめとする砂漠地帯や寒冷地での作戦において、給弾不良、不発、排莢障害(ジャム)を多発させ、前線部隊から「極めて信頼性が低い」との不名誉な評価を受けていた。イギリス国防省は自国の Royal Small Arms Factory エンフィールド工場で製造された A1 の主要内部構造を根本から刷新するため、当時は同系列会社であった Heckler & Koch 社へ全般的な再設計と性能改善を依頼した。過酷な戦場環境下でも確実に作動する高い動作信頼性の獲得を目指し、従来の設計仕様を全面的に見直す改修プロジェクトとして本型が構築された。

構造と技術的特徴

構造上の最大の特徴は、全長の短縮と 518 mm のロングバレルを両立するブルパップ機構を継承しつつ、内部コンポーネントの約 30 % 以上を新規設計の精密パーツへと換装している点にある。作動方式にはショートストローク・ガスピストン機構と回転ボルト閉鎖システムを採用しているが、ボルトキャリアの改修、ボルト頭部およびエクストラクター(抽筒子)の強度向上、撃針の耐久強化、ならびにガスプラグとシリンダーの気密性見直しが徹底的に行われた。排莢口付近には空薬莢の引っかかりを防ぐ改良型コッキングハンドルとケースデフレクター(跳ね返り防止板)が新設され、排莢障害が劇的に減少した。さらに、従来の給弾トラブルの主因であったプレス製マガジンに代わり、Heckler & Koch 社製の高精度スチール製マガジンを標準採用したことで、過酷な砂利や砂塵が侵入する環境下においても円滑かつ安定した給弾・作動動作を実現している。

運用実績と評価

2002年の部隊配備開始以降、L85A2 はイギリス陸軍、イギリス海軍、イギリス空軍、およびイギリス海兵隊を含むイギリス軍全体の主力小銃として制式運用された。実際の運用においては、イラク戦争(TELIC 作戦)やアフガニスタン紛争(HERRICK 作戦)などの過酷な戦闘地域へ投入され、前級 A1 時代の不名誉な作動不良を完全に払拭する優れた動作耐久性と信頼性を実証した。特に、SUSAT や ACOG、Elcan SpecterOS などの光学照準器と 518 mm の長銃身による高い射撃精度、ならびに Daniel Defense 社製 RIS(レイル・インターフェイス・システム)ハンドガードを追加装着した改修型による拡張性が高く評価された。右利き専用の作動構造というブルパップ特有のレイアウト制約はあるものの、実戦での高い評価を通じてイギリス軍の信頼を回復し、後継である L85A3 への段階的改修に至るまで長期間にわたり基幹小銃としての確固たる地位を維持し運用が続けられた。

Official Name (正式名称)L85A2 / SA80 A2
Country of Origin (開発国)イギリス / ドイツ(基本設計・生産はイギリス、近代化改修設計はドイツ)
Manufacturer (製造メーカー)Heckler & Koch(元のL85A1本体はRoyal Small Arms FactoryやRoyal Ordnanceによって製造されたが、A2仕様への完全な再設計・部品の新規製造および近代化改修工程はHeckler & Koch社が一括して受託・実施)
Designed (設計年)L85A2(SA80 A2)アサルトライフルの近代化改修プログラムは、1997年にイギリス国防省が委託してHeckler & Koch社により改修設計が開始され、2000年から2002年にかけて本格的な生産・改修工程が行われた後、2001年末から実戦部隊への支給が開始されて2002年に正式に運用開始となった。
Primary Operators (主な運用組織)イギリス:イギリス陸軍、イギリス海軍、王立海兵隊、イギリス空軍(全主要戦闘部隊・後方支援部隊において12万挺以上が現役の標準制式アサルトライフルとして稼働・運行管理中)
ジャマイカ:ジャマイカ国防軍(主に第1、第2、第3ジャマイカ連隊などの主力歩兵部隊・要人警護ユニットにおいて、イギリスからの公式供与により標準制式小銃として現役運用中)
ネパール:ネパール軍(イギリス軍グルカ兵関連の訓練コンポーネントおよび特殊割当アセットとして限定運用・保有)
シエラレオネ:シエラレオネ共和国軍(英軍の軍事訓練ミッションに伴い、過去に公式供与されたアセットを国内部隊が引き続き現役保有・運用)
ジンバブエ:ジンバブエ軍(過去の防衛援助調達プログラムによる公式残存アセットを保有)
アフガニスタン:旧政府軍(国家保安局[NDS]や一部のコマンド部隊)が英軍から供与され運用していたL85A2を、現在の政権軍・武装組織(タリバン等)がそのまま接収し、鹵獲品として保有・運用
Type (種類)アサルトライフル(Assault rifle)
Caliber (口径)5.56x45mm NATO
Action (作動方式)ガス圧作動(ショートストロークピストン)、ターンボルト閉鎖(Gas-operated, rotating bolt)
Overall Length (全長)785 mm (30.9 in)(固定式ブルパップ構造のため、ストック展開時・折り畳み時の区分および機構はなし)
Barrel Length (銃身長)518 mm (20.4 in)
Weight (重量)約 3.82 kg(マガジンおよび光学照準器を含まない銃本体のみの空虚重量。なお、4倍率SUSAT光学照準器とフルロードした30連マガジンをすべて装着した全備重量は 4.98 kg となる)
Rate of Fire (発射速度)610 – 775 rpm
Effective Range (有効射程)400 m(アイアンサイト使用時) / 600 m(標準支給の光学照準器使用時)
Feed System (給弾方式)30-round STANAG magazine ※イギリス軍では主にMagpul社製のポリマー製EMAG等を標準装備として運用

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

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画像の引用元
  1. By Photo: LA(Phot) Gaz Faulkner/MOD, OGL v1.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=26925815

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