
概要と開発の背景
CRRC(Combat Rubber Raiding Craft / Combat Rubber Reconnaissance Craft)は、1980年代初頭にフランスの Zodiac Milpro 社が開発し、アメリカ海兵隊およびアメリカ海軍特殊戦コマンド(NAVSPECWARCOM)等へ導入された小型潜入・撤収用折りたたみ式ゴム製強襲インフレータブル舟艇である。開発の背景には、従来の木製・FRP製小型舟艇や大型インフレータブルボート(RHIB)では、潜水艦ハッチからの展開、空中投下、不整地海岸での密秘裏な運搬・隠蔽が困難であったという運用上の課題が存在した。アメリカ軍は、各種潜水艦の魚雷発射管やデッキ・シェルター(DDS)、ヘリコプター機内、あるいは輸送機からのパラシュート空中投下により短時間で展開でき、前線の特殊部隊や海兵隊偵察部隊が敵沿岸部へ静粛に潜入・撤収するための過酷な環境に耐える頑丈な折りたたみ舟艇の獲得を目指して開発・選定を行った。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、高強度ポリアミド織物にハイパロンおよびネオプレン合成ゴムをコーティングした耐久素材を使用し、メイン気室(5気室)に加えて船底部のインフレータブル・キール(1気室)と両側底部のスピードチューブ(2気室)を統合した「Futura ハル」構造を採用している点にある。このエアチューブ構造により、波浪追従性と方向安定性が保持され、高速旋回時においても卓越したグリップ力と予備浮力を発揮する。床面にはアルミニウム製フロアボードが敷設され、底部の水圧荷重を分散し艇体剛性を確保している。パワートレインには、水流噴射アタッチメント(ポンプジェット)を備えた 55 hp 級のアウトボードエンジン(Evinrude または Mercury Marine 製等の重質油/軍用燃料対応 NBOE エンジン)1 基を搭載する。プロペラ露出を排除したポンプジェットの採用により、水中での安全確保、水草や障害物の巻き込み防止、ならびに水中放射音の低減を達成している。
運用実績と評価
1980年代の制式採用以降、CRRC(Zodiac F470 / FC470)はアメリカ海兵隊の武装偵察部隊(Force Recon)や海兵遠征部隊(MEU)、アメリカ海軍特殊部隊(SEALs)、アメリカ陸軍特殊部隊(グリーンベレー)などで標準小型潜入舟艇として大量導入された。アメリカ軍のみならず、世界各国の同盟国・パートナー諸国の軍事機関や沿岸警備隊などの導入国においても制式採用されている。実際の運用においては、ペルシャ湾での海上阻止行動、各種演習での過酷なビーチ強襲・洋上回収作戦、潜水艦 DDS からの水中放出・回収、さらには MH-47 や CH-53 ヘリコプターからの水上投入(Duck-Drop / Cast Operation)へ投入された。排気を完了することで約 0.76 m × 1.50 m のコンパクトなサイズに折りたたんで収納できる省スペース性、空気を充填すれば最大 1,250 kg(隊員 10 名相当)の有用積載能力を発揮する実用性が実証されており、40 年以上にわたり特殊作戦支援の第一線で運用が継続されている。
| Official Name (正式名称) | CRRC(Combat Rubber Raiding Craft) / Combat Rubber Reconnaissance Craft / Zodiac |
| Country of Origin (開発国) | フランス / アメリカ合衆国(※フランスの基本設計をベースに、米国特殊作戦軍[USSOCOM]および米軍各軍のミリタリー要求仕様を満たすアセットとして共同開発・最適化された) |
| Manufacturer (製造メーカー) | Zodiac Milpro(※主力モデル「F470/FC470」等を製造)、Wing Inflatables(※米陸軍向けの主要プロバイダーとしてポリウレタン製「Pシリーズ」等を供給) |
| Designed (設計年) | 1960年代初頭に出された米海軍の特殊作戦用インフレータブル舟艇への開発要求仕様を起源とし、フランスのZodiac社(現Zodiac Milpro)の設計をベースに共同開発が進められ、現在の標準ベースモデルとなる「Zodiac F470」の仕様が確立されて正式に軍に採択された設計年は1970年代後半であり、その後部隊への実戦配備が本格化して公式な運用開始年となったのは1970年代後半から1980年代初頭にかけてである。 |
| Primary Operators (主な運用組織) | アメリカ合衆国:アメリカ海軍(海軍特殊戦グループ1・2[NSWC SPECWARGRU 1 & 2]、海軍特殊部隊[SEALs]、救難・潜水運用部隊、水中建設大隊[UCB]等)、アメリカ空軍(空軍特殊作戦コマンド[AFSOC]傘下の戦闘管制班[CCT])、アメリカ陸軍(特殊作戦コマンド傘下の特殊部隊グループ[グリーンベレー]、第75レンジャー連隊、レンジャースクール訓練部隊等)、アメリカ海兵隊(偵察大隊[Reconnaissance Battalions]等の水陸両用偵察部隊)(※米国内メーカーの Wing Inflatables 社が、独自派生品としてポリウレタン製のPシリーズ(P4.7等)を米軍向けに製造・供給) ニュージーランド:ニュージーランド国防軍(ニュージーランド陸軍の王立ニュージーランド工兵隊[Royal New Zealand Engineers]、およびニュージーランド海軍において、沿岸・内水域の高速偵察、潜入作戦、および多目的強襲アセットとしてFC470およびFC530を現役共同運用) フィリピン:フィリピン海軍(フィリピン海兵隊[Philippine Marine Corps]:米国の軍事援助および対外有償軍事販売ルートを介してZodiac社製等のミリタリー仕様CRRCを制式受領し、南部沿岸や河川域における偵察・対テロ強襲アセットとして現役運用) ルーマニア:ルーマニア海軍(ルーマニア海兵隊[Romanian marines]:黒海地域等におけるNATO共同作戦に基づき、米海軍・海兵隊との相互運用性を有する戦術強襲・偵察用CRRCアセットを現役部隊運用) |
| Displacement (排水量):基準排水量 / 満載排水量 | 基準排水量(空虚重量/ボート本体+アルミニウム床板等):約 115 kg 〜 161 kg (254 lbs 〜 355 lbs) ※フロア構造やバリアントにより異なる 満載排水量(最大積載時総重量/Combat Operational Weight):最大約 1,411 kg 〜 1,451 kg (3,115 lbs 〜 3,200 lbs) ※空虚重量に最大ペイロード(約1,250kg)および船外機、燃料タンク(SL-3ブラダー等)を合算した運用上の上限総重量 |
| Dimensions (寸法):全長、最大幅、喫水 | W (最大幅/全幅):1.90 m (6 ft 3 in) ※米陸軍向けWing製P4.7型は 1.98 m (6 ft 6 in)、EOD等着用のF580型は 2.48 m (8 ft 2 in) D (喫水):満載巡航時 約 0.40 m (1 ft 4 in) / 浅海・微速走航時 約 0.20 m (8 in) L (全長):4.70 m (15 ft 5 in) ※EOD等運用バリアントのF580型は 5.85 m (19 ft 2 in) |
| Propulsion (機関): | Outboard Motor (2-Stroke Multi-Fuel / Non-Gasoline Burning Outboard Engine: NBOE) 出力:40 PS 〜 55 PS / 最大許容 65 PS(※Evinrude製55馬力NBOE、またはRaider Outboards製40馬力ミリタリー仕様多燃料対応船外機等を1基マウント。プロペラのない「シャラウド付きインペラ構造のポンプジェット推進システム」を標準採用。PS馬力換算で40〜65馬力) |
| Speed (速力): | 最大スプリント速力 26 kt 〜 30+ kt (約 48 km/h 〜 55 km/h 以上) ※無風平水時、搭載人員・積載負荷状況による |
| Range (航続距離): | 20ノット巡航時に 約 15 nm 〜 35 nm (約 28 km 〜 65 km) ※標準装備される6ガロンまたは18ガロン(SL-3燃料ブラダー)の燃料容量およびスロットル開度に依存し、満載全力疾走時の連続稼働時間は約1〜2時間 |
| Complement (乗員数): | 1名 〜 2名(操縦要員[Coxswain]および航法・前方監視員等)、最適構成で6名〜8名、最大で完全装備の特殊部隊作戦隊員(SEALs、グリーンベレー、海兵隊Recon等)を10名まで搭乗・搬送可能 |
| Sensors and Processing Systems (センサー・レーダー): | None 作戦時は乗員が携行するハンディGPS、磁気コンパス、AN/PRC-117G/AN/PRC-152等の戦術無線機、または暗視ゴーグル[NVG]に依存 |
| Armament (兵装): | None 作戦要員が携行するM4A1カービン、M240 7.62mm機関銃、またはMk48軽機関銃等の個人・部隊用火器を艇のチューブ上や特設マウントから射撃・運用する形態をとる |
| Aircraft Carried (艦載機)、 Carrying capacity(積載能力): | 大型ヘリコプター[MH-47等]の後部ランプからの直接水上スライド投下[ヘリドロップ]、およびC-130輸送機等からのパラシュート空中投下[MCADS]によるデプロイが可能 最大積載容量(Maximum Payload): 1,250 kg (2,756 lbs) |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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画像の引用元
- By U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Adam R. Cole – This image was released by the United States Navy with the ID 060611-N-4124C-010 (next).This tag does not indicate the copyright status of the attached work. A normal copyright tag is still required. See Commons:Licensing.العربية ∙ বাংলা ∙Bahaso Jambi ∙Deutsch ∙ Deutsch (Sie-Form) ∙ English ∙ español ∙ euskara ∙ فارسی ∙ français ∙ italiano ∙ 日本語 ∙ 한국어 ∙ македонски ∙ മലയാളം ∙ Plattdüütsch ∙ Nederlands ∙ polski ∙ پښتو ∙ português ∙ русский ∙ slovenščina ∙ svenska ∙ Türkçe ∙ українська ∙ 简体中文 ∙ 繁體中文 ∙ +/−, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=8244591

