





概要と開発の背景
Ridgback PPV(Protected Patrol Vehicle / Ridgeback)は、2000年代後半にイギリス陸軍が導入した4×4輪駆動の耐地雷・伏撃防護車(MRAP)および装甲巡回車である。アメリカの Force Protection Inc.(現 General Dynamics Land Systems)が開発した Cougar 4×4 をベース車体とし、イギリスの NP Aerospace(現 Morgan Advanced Materials)が自国軍の要求仕様に合わせた各種電子機器・防護装甲の統合および改修作業を担当した。開発の背景には、アフガニスタン作戦(Operation Herrick)において、先行して導入された6×6輪駆動の大型装甲車 Mastiff(マスティフ)が優れた爆風防護性能を示した一方で、その巨大な車体サイズ(全長約7.9m、車幅約3.2m)ゆえに狭隘な市街地、細い路地、果樹園、強度の低い橋梁における機動性に制約が生じていた状況が存在する。この課題に対応するため、イギリス国防省は緊急作戦要求(UOR)に基づき、Mastiff と同等の強力な耐地雷・爆風防護能力を維持しつつ、小回りの効く小型・軽量な 4×4 輪駆動仕様の「Ridgback」の調達を決定した。2008年に配備が決定され、2009年夏よりアフガニスタン戦線へ配備された。
構造と技術的特徴
Ridgback の構造における最大の特徴は、大型の兄弟車である Mastiff と同様の地雷や即席爆発装置(IED)対策であるV字型ハル(V-hull)構造を、コンパクトな 4×4 輪駆動の車体に凝縮している点にある。この構造により、車体底部で炸裂した地雷の爆風を側方へと外側に逃がし、車内への衝撃を分散させる設計思想が貫かれている。パワートレインには、330馬力を出力する Caterpillar 製 C7 直列6気筒ターボディーゼルエンジンと Allison 製 3500 SP 6速自動変速機が採用されており、小型化された車体と相まって最高速度約90km/h(舗装路では約107km/h)の機動力と高い不整地走破性を誇る。NP Aerospace による改修では、イギリス軍規格の Bowman 戦術デジタル通信システム、対IED電子戦ジャマー(ECM)、衝撃吸収シート、暗視・熱照準カメラ、ならびに追加の複合装甲パネルや成形炸薬弾(RPG)の脅威を低減させるスラット装甲(バーアーマー)が車体周りに装着された。基本乗員2〜3名に加え、後部兵員室には最大6名の兵員を安全に収容できる。上部砲塔には 7.62mm L7A2 汎用機関銃、12.7mm L1A1 重機関銃、40mm 自動擲弾発射器、あるいは遠隔操作兵器ステーション(RWS / Enforcer RCWS)の選択搭載が可能である。
運用実績と評価
Ridgback はイギリス陸軍および関係部隊に制式採用され、計170両が導入された。本車は運用の柔軟性を高めるため、部隊輸送型(Troop Carrier)、武装ステーション型(Protected Weapons Station)、装甲救急車型(Ambulance)、および移動指揮所型(Command Post)の4つのバリエーションが展開された。2009年夏のアフガニスタン作戦(Operation Herrick)での初投入以降、大型の Mastiff では立ち入りが困難であった市街地や集落内部、複雑な地形での機動哨戒、車列警護、および連絡任務において極めて高い実用性を発揮した。過酷な実戦環境下での爆風攻撃に対し、強固なV字ハルと爆風緩衝構造の連携により乗員の安全を保護し、最前線の部隊から厚い信頼を獲得した。アフガニスタンからの部隊撤退後は、陸軍の構造改革(Army 2020)に合わせて順次再整備や用途変更が行われ、将来の機動展開部隊を支える保護装甲アセットとして運用が継続された。2022年以降は軍事支援パッケージの一環としてウクライナ軍へ供与され、前線における高防護の人員輸送および機動支援アセットとして実戦で運用されている。
| Official Name (正式名称) | Ridgeback PPV (Protected Patrol Vehicle) / Cougar 4×4 (UK Variant) |
| Country of Origin (開発国) | アメリカ合衆国 / イギリス (イギリス軍向け改修仕様) |
| Manufacturer (製造メーカー) | Force Protection Inc (現 General Dynamics Land Systems–Force Protection) / NP Aerospace (統合・装甲パッケージ担当) |
| Designed (設計年) | 設計年は2008年(イギリス国防省による緊急作戦要求(UOR)に基づく発注・改修設計年)であり、運用開始年は2009年(イギリス陸軍における実戦配備・アフガニスタン展開年)である。 |
| Primary Operators (主な運用組織) | イギリス:イギリス陸軍(各歩兵大隊、王立機械化騎兵部隊、王立砲兵連隊、イギリス空軍連隊(RAF Regiment)等において軽装甲巡察車(PPV)として配備・運用) ウクライナ:ウクライナ陸軍(イギリス政府からの軍事支援により供与され、前線部隊において輸送・歩兵巡察・爆風防護車両として運用) |
| Crew / Capacity (乗員および兵員輸送数) | 2名 (Driver, Commander) + 兵員輸送数: 4名 (計6名) |
| Combat Weight (戦闘重量) | 約 15,000 kg – 17,200 kg (15.0 – 17.2 tonnes / 16.5 – 19.0 short tons / 33,000 – 38,000 lb) |
| Dimensions (寸法: 全長/全幅/全高) | L (全長): 5.91 m (233 in / 19.4 ft) [※車体全長(固定火器の突出し部含まず)] W (全幅): 2.74 m (108 in / 9.0 ft) [※サイドミラーおよびスラット装甲展開前の車体幅] / スラット装甲展開時: 3.20 m (126 in / 10.5 ft) D (全高): 2.64 m (104 in / 8.7 ft) [※ルーフ上部マウント・武装未搭載時の車体高] |
| Armor (装甲の詳細: 複合装甲、ERA、APSの有無) | Plasan Composite Appliqué Armor (イスラエル Plasan 社製複合装甲パネル) V-shaped Armoured Hull (地雷・IED爆風分散用V字型底面構造) Slat Armor / Bar Armor (RPG対抗用スラット装甲) |
| Main Armament (主武装) | 1x 7.62 mm L7 GPMG (General Purpose Machine Gun) または 1x 12.7 mm M2HB Heavy Machine Gun または 40 mm L134A1 Automatic Grenade Launcher (AGL) 1基 (手動マウントまたは Enforcer Remote Weapon Station (RWS) に搭載) |
| Secondary Armament (副武装) | 2x Smoke Grenade Dischargers (煙幕発射機): 3連装発射機 (計6口径) |
| Engine (エンジン出力 hp/kW) | Caterpillar C7 Heavy Duty 7.2-litre 6-cylinder Turbocharged Diesel Engine 出力: 246 kW (330 hp / 330 bhp) [※トランスミッションは Allison 3500 SP 5速全自動変速機] |
| Max Speed (最高速度: 整地/不整地) | Paved (整地): 約 90 km/h – 105 km/h (56 mph – 65 mph) |
| Operational Range (航続距離) | Paved (整地): 約 960 km (600 mi) |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
PR:関連商品
画像の引用元
- By Photo: Andrew Linnett/MOD, OGL v1.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=26913407
- By Photo: Sgt Wes Calder RLC/MOD, OGL v1.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=26914936
- Photo: Corporal Rebecca Brown, RLC / UK Ministry of Defence (Filename: AHQCPL4-OFFICIAL-20240306-027-061.jpg / Crown Copyright 2024 / Open Government Licence)
- Photo: Andrew Linnett / UK Ministry of Defence (Filename: 45150026.jpg / Crown Copyright / Open Government Licence)
- By Photo: Cpl Dan Bardsley RLC/MOD, OGL v1.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=26914506
- By Photo: Cpl Gary Kendall RLC/MOD, OGL v1.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=26914423












