







概要と開発の背景
Mastiff PPV(Protected Patrol Vehicle)は、2000年代半ばにイギリス陸軍が導入した6×6輪駆動の耐地雷・伏撃防護車(MRAP)および重装甲歩兵移動車両である。アメリカの Force Protection Inc.(現 General Dynamics Land Systems)が開発した大型装甲車 Cougar 6×6 をベース車体とし、イギリスの NP Aerospace(現 Morgan Advanced Materials)が自国軍の要求仕様に合わせたシステム統合・電子機器および追加装甲パッケージの改修作業を担当した。開発の背景には、イラク作戦(Operation Telic)およびアフガニスタン作戦(Operation Herrick)において、非装甲あるいは軽装甲の Snatch Land Rover などの既存巡回車両が、即席爆発装置(IED)や地雷攻撃による重大な脅威に直面した経緯が存在する。従来型の軽量車両では爆風や破片から乗員を保護することが困難であったため、イギリス国防省は緊急作戦要求(UOR)を発令し、非正規戦や地雷原に対応しうる強固な装甲巡回車両の調達を開始した。2006年に初期型(Mk 1)の納入が開始され、前線地域へと順次投入された。
構造と技術的特徴
Mastiff PPVの構造における象徴的な機構は、車体底面に導入されたV字型ハル(V-hull)構造である。この設計により、下部で発生した地雷や仕掛け爆弾の爆風を側方へと逃がし、車内への不意の衝撃を分散させる設計思想が反映されている。パワートレインには、330馬力を出力する Caterpillar 製 C7 直列6気筒ターボディーゼルエンジンと Allison 製 6速自動変速機が採用されており、総重量20トンを超える車体を最高速度約90km/hまで加速させる走行性能を有する。基本車体に対し、NP Aerospace が開発した追加の複合装甲パネル(Dyneemaパネル等)や、成形炸薬弾(RPG)の脅威を低減させるスラット装甲(ケージアーマー)が車体周囲に装着されている。車内には Bowman 戦術デジタル無線、対IED電子戦ジャマー(ECM)、熱照準器を備えた操縦手用状況把握システム(situational awareness system)、ならびに衝撃を和らげる爆風緩衝シートが標準装備されている。乗員2名に加え、Mk 2およびMk 3規格では最大8名の兵員を安全に収容可能な広い車内空間が確保されている。上部砲塔には 7.62mm L7A2 汎用機関銃、12.7mm L1A1 重機関銃、40mm 自動擲弾発射機、あるいは遠隔操作兵器ステーション(RWS)を選択して搭載可能である。
運用実績と評価
Mastiff PPVは、イギリス陸軍およびイギリス空軍連隊(RAF Regiment)に制式採用され、各型合わせて約470両が調達された。2006年12月のイラク・バスラへの配備を皮切りに、アフガニスタンのヘルマンド州など最前線における危険度の高い長距離パトロール、車列警護、補給輸送、ならびに人員輸送任務へ集中的に投入された。過酷な不整地や危険地域における実戦運用では、強固なV字ハルと追加装甲の連携により、強烈な爆風攻撃から乗員の生命を保護する高い生存性を発揮した。現地からのフィードバックに基づき、耐荷重能力を高めた強化型車軸や懸架装置を備える Mk 2、さらに防護力を引き上げた Mk 3 へと継続的な近代化改修が行われた。本車を基盤とした派生型として、4×4仕様で市街地機動に優れる Ridgback(リッジバック)や、6×6後方補給型の Wolfhound(ウルフハウンド)が展開され、イギリス軍の装甲巡回車ファミリーの中核を形成した。中東からの部隊撤退後も、国連平和維持活動(MINUSMA)やNATOの東欧警戒任務などに投入された。2022年以降は軍事支援パッケージの一環としてウクライナ軍へ供与され、前線における高防護の人員輸送および後方支援アセットとして実戦で運用されている。
| Official Name (正式名称) | Mastiff PPV (Medium Protected Patrol Vehicles) / Cougar HE (UK Variant) |
| Country of Origin (開発国) | アメリカ合衆国 / イギリス (イギリス軍向け改修仕様) |
| Manufacturer (製造メーカー) | Force Protection Inc (現 General Dynamics Land Systems–Force Protection) / NP Aerospace (統合・装甲パッケージ担当) |
| Designed (設計年) | 設計年は2005年–2006年(緊急作戦要求に基づきイギリス軍向け仕様への開発・改修契約が締結・実施された年)であり、運用開始年は2006年(イラクおよびアフガニスタンへの実戦配備開始年)である。 |
| Primary Operators (主な運用組織) | イギリス:イギリス陸軍(各歩兵大隊、王立輸送軍団(RLC)等において重装甲保護巡察車両(PPV)として配備・運用) 、イギリス空軍(イギリス空軍連隊(RAF Regiment)にて運用) ウクライナ:ウクライナ陸軍(イギリス政府からの軍事支援により供与され、前線での兵員輸送および爆風防護車両として運用) |
| Crew / Capacity (乗員および兵員輸送数) | 2名 (Driver, Commander) + 兵員輸送数: 8名 (計10名) |
| Combat Weight (戦闘重量) | 約 22,500 kg – 23,500 kg (22.5 – 23.5 tonnes / 24.8 – 25.9 short tons / 49,600 – 51,800 lb) |
| Dimensions (寸法: 全長/全幅/全高) | L (全長): 7.82 m (308 in / 25.7 ft) [※車体全長(固定火器の突出し部含まず)] W (全幅): 2.74 m (108 in / 9.0 ft) [※サイドミラーおよびスラット装甲展開前の車体幅] / スラット装甲展開時: 3.20 m (126 in / 10.5 ft) D (全高): 2.64 m (104 in / 8.7 ft) [※ルーフ上部マウント・武装未搭載時の車体高] |
| Armor (装甲の詳細: 複合装甲、ERA、APSの有無) | Plasan Composite Appliqué Armor (イスラエル Plasan 社製複合装甲パネル) V-shaped Armoured Hull (地雷・IED爆風分散用V字型底面構造) Slat Armor / Bar Armor (RPG対抗用スラット装甲) |
| Main Armament (主武装) | 1x 7.62 mm L7 GPMG (General Purpose Machine Gun) または 1x 12.7 mm M2HB Heavy Machine Gun または 40 mm L134A1 Automatic Grenade Launcher (AGL) 1基 (手動マウントまたは Enforcer Remote Weapon Station (RWS) に搭載) |
| Secondary Armament (副武装) | 2x Smoke Grenade Dischargers (煙幕発射機): 3連装発射機 (計6口径) |
| Engine (エンジン出力 hp/kW) | Caterpillar C7 Heavy Duty 7.2-litre 6-cylinder Turbocharged Diesel Engine 出力: 246 kW (330 hp / 330 bhp) [※トランスミッションは Allison 3500 SP 5速全自動変速機] |
| Max Speed (最高速度: 整地/不整地) | Paved (整地): 約 90 km/h (56 mph) |
| Operational Range (航続距離) | Paved (整地): 約 960 km (600 mi) |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
PR:関連商品
画像の引用元
- By Photo: Graeme Main/MOD, OGL v1.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=74020387
- By АрміяInform – https://armyinform.com.ua/2022/06/17/brytanskyj-mastiff-u-stepah-ukrayiny-abo-yak-nashi-morpihy-opanovuyut-zakordonnu-tehniku/?fbclid=IwAR2omZ-WLIPCIPdpMzcGdjIn0NcRCH4fk9CY42uKkvXxpDX6-wITkCJ2Ud8, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=121009277
- U.S. / UK Crown Copyright / Allied Joint Force Command Brunssum Photo via MOD. Public Domain / Released.
- By Photo: Corporal Steve Blake RLC/MOD, OGL v1.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=37962985
- Photo: Corporal Rebecca Brown, RLC / UK MOD © Crown copyright 2024 (Under Open Government License)
- Photo: Corporal Nanda Atherton, RLC / ©MoD Crown Copyright 2023 (Under MOD Crown Copyright News / Editorial Licence)
- Photo: Stuart Hill / © Crown copyright (Under Open Government License)
- Photo: Steve Dock / © Crown copyright (Under Open Government License)












