Coyote TSV (Tactical Support Vehicle) Light / Supacat HMTV 600

Coyote TSV (Tactical Support Vehicle) Light / Supacat HMTV 600
第1女王近衛竜騎兵による訓練の様子

概要と開発の背景

Coyote TSV(コヨーテTSV)は、2000年代後半にイギリスの防衛企業であるSupacat(SC Group)が開発した6×6輪駆動の軽装甲戦術支援車(Tactical Support Vehicle)である。同社が設計した高機動輸送車シリーズ「HMTV 600(High Mobility Transporter 600)」シャーシをベースとし、4×4仕様の長距離偵察・戦闘車「Jackal 2(HMT 400)」の拡張・派生型として開発された。開発が開始された背景には、アフガニスタン作戦(Operation Herrick)において、最前線の過酷な不整地で長距離哨戒や機動打撃を行う歩兵部隊や装甲偵察部隊に対し、弾薬、燃料、水、重資機材を迅速かつ安全に輸送する高機動支援アセットが不可欠となった経緯が存在する。当時運用されていた従来の非装甲および軽装甲の輸送トラックでは、即席爆発装置(IED)や地雷の脅威が多発する前線地域への物資補給を安全に遂行することが極めて難しかった。この課題に対処するため、イギリス国防省(MoD)は緊急作戦要求(UOR)に基づき、SupacatおよびBabcock Land Defenceと提携し、Jackalと同等の機動性能と防護力、および約3トンの高い積載能力を兼ね備えた6×6仕様の戦術支援車としてCoyoteを調達・導入した。

構造と技術的特徴

Coyote TSVの構造における最大の特徴は、Jackalと共通のコンポーネントを多数保持しつつ、車軸を1軸追加して6×6輪駆動化したHMTV 600シャーシを採用し、車体後部に大容量の貨物積載スペースを確立した点にある。サスペンションには、Supacatが独自開発した全輪可変高独立エアサスペンション(空気圧式サスペンション)システムが組み込まれており、地上高を変化させることで岩場や砂漠などの極めて過酷な不整地における高い走破性と走行安定性を確保している。パワートレインには、Cummins製の6.7リットルISBeターボディーゼルエンジンとAllison製5速自動変速機が採用されており、車両総重量約10.5トンの車体を路上最高速度約120km/hで駆動させる性能を有する。車体構造は視界と周囲状況の把握を最優先としたオープン・トップ型を踏襲しており、搭乗員に優れた状況把握能力(Situational Awareness)を提供する。防護性能面では、Jankel Armouring Ltd.が手がけた装甲パッケージと爆風緩衝シートが配置され、地雷や爆風脅威に対する乗員保護構造を備えている。上部砲塔リングには12.7mm M2HB重機関銃や40mm自動擲弾発射機(GMG)、7.62mm L7A2汎用機関銃が設置可能である。

運用実績と評価

Coyote TSVはイギリス陸軍に制式採用され、150両以上が調達・配備された。主にアフガニスタン紛争(ヘリック作戦)におけるヘルマンド州などの激戦地域において、Jackalを運用する機動偵察部隊への直接的な前線補給追従支援、車列警護、長距離物資輸送、および要員搬送任務に集中的に投入された。過酷な実戦運用では、主要道路を避けた道なき砂漠や急峻な地形をJackalと一体になって高速で展開できる卓越した走破性と、約3トンの物資を運搬可能な輸送能力が高く評価された。また、Jackal 2とエンジン、トランスミッション、サスペンション、操作系などの構成パーツを広範囲に共通化させたことで、最前線での現地整備やパーツ供給といった兵站(ロジスティクス)上の負担を大幅に軽減することに成功した。中東からの部隊撤退後も、中型戦術支援車Huskyや重戦術支援車Wolfhoundとともにイギリス軍の戦術支援車(TSV)ファミリーの一角を担い、陸軍の機動展開部隊において長距離自立運用を支える主要な戦術輸送アセットとして運用が継続されている。

Official Name (正式名称)Coyote TSV (Tactical Support Vehicle) Light / Supacat HMTV 600 (High Mobility Transporter 600)
Country of Origin (開発国)イギリス
Manufacturer (製造メーカー)Supacat (現 SC Group / 設計・開発・主契約者) / Babcock Marine (Devonport / 共同量産・製造担当)
Designed (設計年)設計年は2008年–2009年(イギリス国防省による緊急作戦要求(UOR)に基づく発注およびJackal 2からの拡大型としての設計開発年)であり、運用開始年は2009年–2010年(イギリス陸軍における実戦配備およびアフガニスタン展開始め)である
Primary Operators (主な運用組織)イギリス:イギリス陸軍(各歩兵大隊の機動支援中隊、機甲・騎兵部隊、王立砲兵連隊、イギリス空軍連隊(RAF Regiment)等において軽戦術支援車両(TSV Light)として配備・運用)、イギリス海軍(Jackal部隊の長距離展開を支える重火器・物資・弾薬輸送用途で運用)
Crew / Capacity (乗員および兵員輸送数)4名 – 5名 (Driver, Commander, Gunner, Loader / Passenger) [※Jackal 2 より搭乗人数が 1名増加]
Combat Weight (戦闘重量)約 10,300 kg – 10,500 kg (10.3 – 10.5 tonnes / 11.35 – 11.57 short tons / 22,700 – 23,150 lb) [※最大積載量 (Payload): 約 1,500 kg – 3,900 kg]
Dimensions (寸法: 全長/全幅/全高)L (全長): 7.04 m (277 in / 23.1 ft) [※6×6 シャシ車体全長。固定火器の突出し部含まず]
W (全幅): 2.00 m (78.7 in / 6.6 ft) [※サイドミラーおよび追加オプション展開前の車体幅]
D (全高): 1.89 m (74.4 in / 6.2 ft) [※可変エアサスペンション最低高設定時。ルーフ上部マウント・武装未搭載時] / 武装マウント部格納時: 2.00 m (78.7 in / 6.6 ft)
Armor (装甲の詳細: 複合装甲、ERA、APSの有無)Plasan Composite Armor Kits / Appliqué Armor (イスラエル Plasan 社製複合装甲モジュール)
Blast-protected Chassis / Mine-blast Armor (地雷および即席爆発装置 (IED) に対抗する底面・シャーシ強度の防護構造)
Main Armament (主武装)1x 12.7 mm M2HB Heavy Machine Gun または1x 40 mm Heckler & Koch GMG (Grenade Machine Gun) を主旋回ガンリングに搭載
Secondary Armament (副武装)1x 7.62 mm L7 GPMG (General Purpose Machine Gun) ※助手席・車長用フロントマウントに搭載
Engine (エンジン出力 hp/kW)Cummins ISBe 5.9-litre 6-cylinder Turbocharged Diesel Engine
出力: 138 kW (185 hp / 185 bhp) [※トランスミッションは Allison 2500 5速全自動変速機、可変車高調整式エアサスペンションを装着]
Max Speed (最高速度: 整地/不整地)Paved (整地): 約 120 km/h – 129 km/h (75 mph – 80 mph)
Unpaved (不整地): 約 89 km/h (55 mph)
Operational Range (航続距離)Paved (整地): 約 800 km (500 mi) [※補助燃料タンク装着時最大: 約 3,000 km]

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

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画像の引用元
  1. By Photo: Andrew Linnett/MOD, OGL v1.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=26913811
  2. By Photo: Andrew Linnett/MOD, OGL v1.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=26913776
  3. By Photo: Andrew Linnett/MOD, OGL v1.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=26913819

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