
概要と開発の背景
M1133 Medical Evacuation Vehicle(M1133 MEV / ストライカー野外救急車)およびその改修型であるM1254A1 MEVVA1は、2000年代初頭にアメリカのGeneral Dynamics Land Systems(GDELS)によって開発され、2003年よりアメリカ陸軍へ導入された8×8の装輪式野戦救急装甲車である。開発の背景には、アメリカ陸軍が進めた中型高機動部隊構想「ストライカー旅団戦闘団(SBCT)」において、最前線の機動部隊に随伴しつつ、負傷した兵士を安全かつ迅速に後送・応急救護する高防護衛生アセットの配備ニーズが存在した。従来の歩兵部隊では、履帯式のM113A3 AMEV装甲救急車や非装甲・軽装甲のM1035 /M1114 HMMWV(ハンヴィー)救急型が運用されていた。しかし、M113は路上速力や自走航続距離の面で高速移動する装輪部隊に追従できず、ハンヴィー救急型は防護力や車内処置スペースの狭さが課題となっていた。これらを解決し、8×8ストライカー共通プラットフォームによる高い機動性と防護性能を備え、移動しながら高度な応急医療処置を継続できる車載衛生プラットフォームとして開発がスタートした。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、歩兵輸送型(M1126 ICV)の8×8プラットフォームをベースに、車体後部の上方ルーフ(屋根)を大幅にかさ上げ(ハイルーフ化)し、衛生兵が立位に近い姿勢で応急治療を行える広大なキャビン空間を確保した設計にある。車内には担架4つ、または歩行可能な傷病者6名を収容可能な可変ラックシステムが配備され、電動アシスト付きの担架搬入機構(Hydraulic Litter Lift System)により迅速な収容が可能である。さらに、心電図モニター、吸引器、酸素供給装置、医療機器用電源、液温調整機能付き輸液保温庫などの高度な応急医療機器が標準統合されている。ジュネーヴ条約に基づき自衛用兵装は搭載されないか制限される一方、車体には高硬度スチール装甲とケブラー製スボールライナーが導入されている。最新改修型であるM1254A1 MEVVA1では、車体底面を二重V字形状(DVH-A1)へと刷新し、対地雷・対爆風防護能力を飛躍的に強化するとともに、450馬力のCaterpillar C7エンジン、910アンペア大容量オルタネーター、55,000lb対応強化サスペンションが統合され、医療機器への安定給電と走破性能の向上を両立している。
運用実績と評価
2003年の部隊配備以降、アメリカ陸軍のストライカー旅団戦闘団(SBCT)所属の大隊衛生小隊や医療中隊に配備・運用されている。イラク戦争やアフガニスタン紛争へ実戦投入され、最前線での負傷者即時収容と後方医療機関への高速度輸送において極めて高い有効性が証明された。前級のM113 AMEVと比較して路上巡航速度や航続距離、空輸適応性が格段に向上し、ハンヴィー救急型と比較して脅威下での高い乗員・傷病者防護力と快適な治療空間が評価された。非対称戦での地雷や即席爆発装置(IED)の脅威増大に対し、二重V字底車台(DVH-A1)を備えたM1254A1 MEVVA1への近代化改修が行われ、生存性と給電能力が飛躍的に高められた。現在においても、ストライカー旅団戦闘団における「ゴールデン・アワー(救命のための初期60分)」を支える中核衛生アセットとして現役運用が続けられている。
| Official Name (正式名称) | M1133 medical evacuation vehicle / M1254A1 MEVVA1 |
| Country of Origin (開発国) | アメリカ合衆国 / カナダ |
| Manufacturer (製造メーカー) | General Dynamics Land Systems (GDLS) |
| Designed (設計年) | M1133 MEV: 2000年にアメリカ陸軍の暫定装甲車両(IAV)計画として選定されてから2002年にかけて後部車体を高くする専用設計と量産移行が行われ、最初のストライカー旅団戦闘チーム(SBCT)となった第2歩兵師団第3旅団等への引き渡しを経て、同旅団が2003年10月にイラク戦域へ展開、実戦運用を開始したことで2003年に公式に運用を開始 M1254A1 MEVVA1: アメリカ陸軍のストライカー近代化プログラム(エンジニアリング変更提案:ECP)に基づき2012年から約6年をかけて二重V字型車体底面の導入や新型450馬力パワーパック、医療用生命維持機材の統合設計が行われ、2018年9月に実戦部隊による最終的な全規模運用試験をクリアしたことで量産が承認され、翌2019年から2020年にかけて最初のストライカー旅団戦闘チームへ引き渡され配備されたことで公式に運用を開始 |
| Primary Operators (主な運用組織) | アメリカ合衆国:アメリカ陸軍(開発国かつ筆頭運用国。各ストライカー旅団戦闘チーム(SBCT)傘下の各歩兵大隊・大隊救護所(BAS)や衛生中隊に広く実戦配備。通常型の「M1133(MEV)」に加えて、現在は耐地雷・IED防護性能を高めた二重V字型車体底面構造の派生品である「M1254(Double-V Hull:DVH-MEV)」、および最新の近代化アップデート型「M1254A1(DVH-A1 MEV)」を主力現役運用中) |
| Crew / Capacity (乗員および兵員輸送数) | 3名 (操縦手、車長兼医療専門員、衛生兵) + 兵員輸送数(負傷者収容数): 4名 〜 6名 ※車内後部の医療コンパートメントに、担架(ストレッチャー)患者4名、または歩行可能な負傷患者6名を同時に収容・搬送可能 |
| Combat Weight (戦闘重量) | M1133 MEV:18,842 kg (18.84 t / 41,540 lbs) ※基本仕様での数値。防護用のスラット(ケージ)装甲や医療・空調機材をフル装備した作戦時の最大総重量(GVW)は約 19,500 kg 前後 M1254A1 MEVVA1:28,576 kg (28.58 t / 63,000 lbs) ※最新の二重V字型車体底面(DVH)構造、足回りの強化、高天井型医療キャビン、および追加装甲マウントをすべて含む最大総重量 |
| Dimensions (寸法: 全長/全幅/全高) | M1133 MEV: W (全幅): 2,840 mm (2.84 m) ※外装各種マウントおよびサイドミラーを除く車体幅 L (全長 / 砲身含まず車体長): 7,313 mm (7.31 m ※車体バンパー等の突起部含む) H (全高 / D指定の垂直高): 2,900 mm (2.90 m ※医療用空間確保のため、歩兵輸送型などの車体天面高2,640mmより254mm高く設計されている。アンテナ類を除く) M1254A1 MEVVA1: W (全幅): 3,406 mm (3.40 m ※サイドミラー・各種外装マウント部含む) / 基本車体幅:2,720 mm (2.72 m) L (全長 / 砲身含まず車体長): 7,381 mm (7.38 m ※車体バンパー等の突起部含む) H (全高 / D指定の垂直高): 3,154 mm (3.15 m ※医療用空間確保のため、他仕様より車体天面が高く設計されている。アンテナ等を除く垂直高) / 車体天面高:2,894 mm (2.89 m) |
| Armor (装甲の詳細: 複合装甲、ERA、APSの有無) | M1133 MEV: High-hard steel structure hull with optional bolt-on ceramic armor and internal spall liners (高硬度鋼板溶接構造車体 + ボルト留め式セラミック増加装甲、内面防破ライナー、スラット装甲オプション、最新型はM1254二重V字型車体底面仕様) ※基本装甲と増加装甲により14.5mm重機関銃弾や152mm砲弾の空中炸裂破片に対する全周防御力を有する。複合装甲や爆発反応装甲(ERA)は装備していない。 M1254A1 MEVVA1: High-hard steel structure hull with Double-V Hull (DVH) design, optional bolt-on ceramic armor, and internal spall liners (高硬度鋼板溶接構造に加え、地雷・IEDの爆風を外側へ逃がす特殊な二重V字型車体底面(DVH)構造を標準採用。さらにボルト留め式セラミック増加装甲、内面防破ライナー、スラット/ケージ装甲オプションを統合) ※14.5mm重機関銃弾や152mm砲弾の空中炸裂破片、および地雷に対して極めて高い防御力を有する。M1133 MEVと同じく複合装甲や爆発反応装甲(ERA)は装備していない。 |
| Main Armament (主武装) | なし ※ジュネーヴ条約に基づく非武装の医療車両であるため、機関銃や自動グレネードランチャーなどの攻撃・自衛用主武装は一切搭載しない |
| Secondary Armament (副武装) | 4x M6 smoke grenade launchers ※隠蔽時の煙幕展開用として装備 |
| Engine (エンジン出力 hp/kW) | M1133 MEV: Caterpillar 3126 6-cylinder inline 4-cycle turbocharged liquid-cooled diesel engine (キャタピラー社製 3126 直列6気筒4サイクルターボチャージドディーゼル、出力: 350 hp / 260 kW ※2,500 rpm時 ※後期の量産・A1改修型仕様には Caterpillar C7 エンジン(350 hp)を搭載) M1254A1 MEVVA1: Caterpillar C7 6-cylinder inline 4-cycle turbocharged liquid-cooled diesel engine (キャタピラー社製 C7 直列6気筒4サイクルターボチャージドディーゼル。出力: 450 hp (336 kW) ※重量増加に対応するため、従来の350馬力から450馬力へ完全強化され、各種医療・空調機材を安定稼働させるための910アンペア大容量オルタネーターを備えた最新パワーパック仕様) |
| Max Speed (最高速度: 整地/不整地) | Paved (整地): 96 km/h 〜 100 km/h (運用制限値:96.5 km/h / 60 mph) Unpaved (不整地): 約 40 km/h 〜 50 km/h |
| Operational Range (航続距離) | M1133 MEV:530 km (330 miles) M1254A1 MEVVA1:483 km (300 miles) ※車体底面の重装甲化および高出力パワーパックへの刷新に伴い、従来の530kmから483kmへ変更 |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
PR:関連商品
画像の引用元
画像の引用元
- By Sgt. William Tanner – https://www.dvidshub.net/image/1787175, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=39083583










