Pandur EVO (6×6)

Pandur EVO
オーストリア陸軍

概要と開発の背景

Pandur EVO(パンドゥール エボ / Pandur Evolution 6×6)は、2010年代半ばよりオーストリアのGeneral Dynamics European Land Systems – Steyr(GDELS-Steyr)によって開発が進められ、2018年に正式公表された多目的6×6装輪装甲車である。開発の背景には、オーストリア陸軍をはじめとする欧州諸国で1990年代から運用されてきた初期型Pandur I(6×6)の老朽化と、現代戦における脅威環境の激変が存在した。従来の軽量装甲車は、近年の非対称戦や局地紛争で猛威を振るう即席爆発装置(IED)や対戦車地雷、さらには高度化する弾道脅威に対して防護性能が著しく不足していた。また、不斉戦環境においても高い機動力と戦術空輸適合性を保ちつつ、乗員の安全確保と各種最新ミッションモジュールの統合を両立させる更新ニーズが高まった。これを受け、Pandur Iが持っていた高い路上速力やC-130輸送機での空輸容易性を維持しながら、防護力とエンジン出力を飛躍的に引き上げた次世代型装輪アセットとして開発がスタートした。

構造と技術的特徴

構造上の最大の特徴は、大型8×8装甲車用として実績のあった高出力パワートレインを6×6のコンパクトな車体に統合し、高度な対地雷・対爆風防護構造を組み込んだ設計思想にある。エンジンにはCummins社製の8.9L直列6気筒ターボディーゼル(出力455馬力)とZF社製6速自動変速機を採用し、全備重量が前級の約13.5トンから約18.5〜19.5トンへと増加したにもかかわらず、最高速度110km/hの高い走破性と機動力を確保している。車体下部には爆風を分散させるV字型構造が取り入れられており、床面から浮かせた懸吊式シート(デカップルシート)やモジュール式追加装甲の採用により、地雷やIEDの爆風衝撃から乗員の安全を保持する。さらに、中央タイヤ内圧調整装置(CTIS)やABSを標準装備するほか、12.7mm重機関銃を備えた遠隔操作式兵器ステーション(RCWS)から、30mm機関砲を搭載した近距離対空砲塔(Skyranger 30)、120mm自動迫撃砲システムに至るまで、多様な大型兵器モジュールを迅速に固定・統合できる高い汎用性を備えている。

運用実績と評価

2018年の正式公表以降、自国オーストリア陸軍(Austrian Armed Forces)において基幹装輪装甲車として制式採用され、2019年より部隊配備が本格化した。オーストリア陸軍では初期発注の34両を皮切りに順次調達が拡大し、2024年2月には歩兵輸送型(MTPz)に加え、自走対空砲型(Flakpanzer)、120mm迫撃砲型(schwere Granatwerfer)、電子戦・電波妨害型、救急輸送型、工兵支援型などを含む計225両の大型追加調達契約が締結された。実地訓練や国際展開演習においては、C-130輸送機による迅速なロールオン・ロールオフ機能と、過酷な山岳地帯や舗装路での高い走破性、優れた防護性能が証明された。大型の8×8装甲車と比較して軽量かつコンパクトで空輸性に優れ、前級のPandur Iと比較して防護性能と出力、システム統合力が大幅に進化している点が具体的に高く評価されている。現在も南西欧州やNATO域内の機動防空・即応展開態勢における主力6×6装輪アセットとして配備・運用が拡充されている。

Official Name (正式名称)Pandur EVO (6×6)
Country of Origin (開発国)オーストリア
Manufacturer (製造メーカー)GDELS-Steyr (General Dynamics European Land Systems – Steyr)
Designed (設計年)初代パンドゥールIの運用実績をもとに2010年代前半から設計・開発が本格化し、2016年にシリーズ生産(量産)への移行準備が完了、その後2018年に最初の量産車がオーストリア陸軍へ納入されたことで公式に運用を開始
Primary Operators (主な運用組織)オーストリア:オーストリア陸軍(開発国かつ筆頭運用国。「国防計画(Development Plan 2032)」に基づき、すでに受領完了または引き渡し中の第1〜第3バッチ計100両に加えて、さらに225両の追加調達契約を公式締結。第3歩兵旅団傘下の機械化・歩兵大隊等において、標準の装甲兵員輸送(APC)型、救急車仕様のほか、最新の120mm迫撃砲搭載型、対空機関砲システム「スカイレンジャー30(Skyranger 30)」を統合した機動防空(M-SHORAD)型、電子戦(EW)仕様など計12種類の多様な任務派生型を大規模に現役配備・運用中)
アメリカ合衆国:アメリカ陸軍特殊作戦コマンド(USASOC / 特殊作戦軍 USSOCOM傘下:第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊(通称:デルタフォース / Delta Force)等の最高機密 Tier 1部隊において、20年以上運用されてきたパンドゥールIベースの旧型装甲地上機動システム(AGMS)を更新するため、総額5,585万ドルの調達契約を通じてパンドゥール・エボリューション 6×6をベースにアップアーマー(追加装甲)等のカスタムを施した次世代の「AGMS Heavy Platform Vehicle(装甲地上機動システム・重プラットフォーム車両)」を公式に導入・最前線で現役運用中)
Crew / Capacity (乗員および兵員輸送数)3名 (操縦手、車長、砲手) + 兵員輸送数: 8名(総員 11名)
※基本の装甲兵員輸送(APC)型における標準数値
Combat Weight (戦闘重量)18,500 kg 〜 19,000 kg (18.5 t 〜 19.0 t ※最大許容総重量は 19.5 t)
Dimensions (寸法: 全長/全幅/全高)W (全幅): 2,600 mm (2.60 m)
L (全長 / 砲身含まず車体長): 6,700 mm (6.70 m)
H (全高 / D指定の垂直高): 2,200 mm (2.20 m ※車下・車体天面までの高さ。搭載するリモートウェポンシステムや対空タレットの種類によって、装備時の全高は異なる)
Armor (装甲の詳細: 複合装甲、ERA、APSの有無)Modular steel armor with V-shaped hull and add-on armor options (V字型ハル構造溶接鋼鉄装甲 + モジュール式増加装甲、防破ライナー、地雷防護シート)
※IED(即席爆発装置)や地雷の爆風を逃がすV字型車体底面(ハル)構造を初めから統合し、STANAG 4569規格レベル3以上の非常に高い耐地雷・対弾防護性能を誇る。複合装甲や爆発反応装甲(ERA)は装備していない。
Main Armament (主武装)バリアントおよび運用組織により多様な装備がある
装甲兵員輸送型 (APC): 1x 12.7mmリモートウェポンシステム(WS4 STANDARD 等)※主砲は持たない
機動防空型 (M-SHORAD): 1x 30mmリボルバー機関砲(ラインメタル製 Skyranger 30 タレット)
自走迫撃砲型: 1x 120mm重迫撃砲システム
Secondary Armament (副武装)1x 7.62mm同軸機関銃(スカイレンジャー仕様など)、多連装発煙弾発射機
Engine (エンジン出力 hp/kW)Cummins 6-cylinder inline turbocharged liquid-cooled diesel engine (カミンズ製 直列6気筒ターボチャージド水冷ディーゼル、出力: 455 hp / 335 kW)
Max Speed (最高速度: 整地/不整地)Paved (整地): 110 km/h 〜 118 km/h
Unpaved (不整地): 約 40 km/h 〜 50 km/h
Operational Range (航続距離)650 km 〜 700 km

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

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画像の引用元
  1. Par Bundesheer — https://www.flickr.com/photos/bundesheer/53322259925/, CC BY-SA 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=145751619
  2. By Fabien Tremoulinas – Own work, CC0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=148631071

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