
概要と開発の背景
にちなん(AGS-5105)は、1990年代末(平成8年度計画)に日本の防衛庁(現・防衛省)および三菱重工業株式会社(下関造船所)によって開発・建造され、1999年(平成11年)より海上自衛隊へ導入された海洋観測艦(AGS)である。海上自衛隊では、昭和40年代から運用されていた旧式の海洋観測艦「あかし(42AGS)」の老朽化と除籍に伴う更新対応が急務となっていた。また、周辺海域における潜水艦作戦および対潜戦(ASW)の効率化に向け、海底地形や水温構造、海洋音響特性といった高精度な海中環境データを連続的に収集・解析する専門艦艇の強化が強く求められた。これを受け、従来の観測艦から船体を大型化・高機能化させ、最新の観測器材と静粛な推進能力を備えた新世代の海洋観測プラットフォーム(計画時名称: 平成8年度計画海洋観測艦5105号艦)として開発がスタートした。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、先代の「ふたみ型」の艦型(艦首バウ・シーブ等)を継承しつつ、基準排水量3,350トン(満載4,500トン)へと船体を拡大し、自衛隊の海洋観測艦として初となるバルバス・バウ(球状艦首)や減揺装置を統合した点にある。静粛性を極限まで高めるため、推進機関にはディーゼルエンジン3基と推進用電動機2基を組み合わせたディーゼル・エレクトリック方式を採用し、海中への動作音波の放出を最小限に抑えている。さらに、潮流や風浪のある環境下での微細な操艦・定置保持を可能とするため、艦首に2基、艦尾に1基のサイドスラスター(計3基)を集中装備した。海洋観測アセットとして、自衛隊で初となる「マルチビーム音響測深装置」を艦底に配置し、広大な海底地形の精密な3次元マッピングが可能となったほか、耐圧深度1,000m級のアメリカ製無人潜水装置(ROV)や、機材投降・回収用のガントリー・クレーンおよびA型フレーム・クレーンを備える設計思想が具現化されている。
運用実績と評価
1999年3月に就役して以降、海上自衛隊の海洋業務群(後の海洋業務・対潜支援群隷下の第1海洋観測隊、ならびに作戦情報群)に所属し、横須賀基地を定係港として制式運用されている。制式採用以降、日本周辺海域から西太平洋に至る広大な海域において、海底地形の計測、水温・塩分濃度・地磁気測定、および音響伝播特性の収集任務に従事してきた。実際の運用においては、サイドスラスターとディーゼル・エレクトリック推進がもたらす卓越した静粛性と位置保持性能、ならびにマルチビーム測深器とROVによる高度なデータ収集・機材回収能力が高く評価された。収集された海洋環境データは、自衛隊の潜水艦運用や対潜哨戒網の最適化における不可欠な情報基盤として極めて高い実効性を証明した。本型で確立された観測システムや静音船体技術は、後継の海洋観測艦「しょうなん(AGS-5106)」の設計基盤となり、現代の海上自衛隊における海中防衛網を支援する主要アセットとして極めて重要な立ち位置を占めている。
| Official Name (正式名称) | にちなん (海洋観測艦) / JS Nichinan |
| Country of Origin (開発国) | 日本 |
| Manufacturer (製造メーカー) | 三菱重工業 下関造船所 |
| Designed (設計年) | 平成8年度(1996年度)計画において基本設計・予算化が行われ、1999年3月24日に竣工・就役して運用を開始した艦艇 |
| Primary Operators (主な運用組織) | 日本: 海上自衛隊 情報作戦集団隷下 作戦情報群 第1海洋業務隊 |
| Displacement (排水量):基準排水量 / 満載排水量 | 基準排水量 3,300 t(※一部の造船資料等では3,350 tの表記あり) / 満載排水量 4,500 t |
| Dimensions (寸法):全長、最大幅、喫水 | 全長 111.0 m × 最大幅(W) 17.0 m × 深さ(H) 9.0 m × 喫水(D) 4.5 m |
| Propulsion (機関): | ディーゼル・エレクトリック推進(電気推進)/ 三菱 S16U-MPTA ディーゼル機関 3基、推進電動機 2基2軸駆動、総出力:8,600 PS |
| Speed (速力): | 18 kt |
| Range (航続距離): | 非公開 |
| Complement (乗員数): | 約80 – 90名 |
| Sensors and Processing Systems (センサー・レーダー): | 航海用レーダー(OPS-20等)、マルチビーム音響測深装置、海洋観測装置一式、音響観測装置一式、無人潜水装置(ROV:アメリカ製、作業深度400m・耐圧深度1,000m、マニピュレータ2基装備) |
| Armament (兵装): | なし |
| Aircraft Carried (艦載機)、 Carrying capacity(積載能力): | 搭載機数:固有の有人艦載ヘリ・無人航空機は0機(航空機運用能力なし) ヘリコプター運用能力:なし(飛行甲板、発着艦能力は非装備) 車両・貨物運搬能力:一般的な車両や貨物の輸送を目的とした設計ではない。ただし、海洋観測用および作業用として「11m観測作業艇」を左舷ダビットに1艇、作業用トラックや回収資材を扱うための「バウ・ガントリークレーン(艦首)」および「A型フレームクレーン(艦尾)」を装備。 |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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画像の引用元
- By Kaijō Jieitai (海上自衛隊 / Japan Maritime Self-Defense Force) – http://www.mod.go.jp/msdf/formal/gallery/ships/ags/nichinan/5105.html, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=59351287









