SBX-1 (Sea-based X-band)

SBX-1 (Sea-based X-band)

概要と開発の背景

シーベーストXバンドレーダー(SBX-1)は、2000年代初頭にアメリカ合衆国国防総省のミサイル防衛局(MDA: Missile Defense Agency)を中心に開発された、海洋上を移動可能な弾道ミサイル防衛用のレーダープラットフォームである。ベースとなった船体は、元々ロシアの海洋石油掘削向けにロシアのSevmash造船所で建造が進められていたCS-50デザインの半潜水型リグであり、これをアメリカ側が買収してミサイル防衛用に大幅な再設計と改修を行った歴史的経緯を持つ。開発の背景には、2000年代にかけて高まった長距離弾道ミサイル脅威への対応と、地球の曲面による地上設置型レーダーの視界限界(水平線による遮蔽)を克服する必要性があった。従来の固定式地上レーダーでは、太平洋上の広大な空域で発生するミサイルの挙動を早期かつ正確に追尾することに構造上の制約が存在していた。この問題を解決するため、広大な海洋上を自力で航行・移動できる半潜水型プラットフォームとして再構築され、システム統合をBoeing社、レーダー製造をRaytheon社、船体改修作業をKeppel FELS社(設計はMoss Maritime社)などが担当して誕生した。

構造と技術的特徴

SBX-1を象徴する最大の特徴は、荒海での高い安定性を誇る双胴型の半潜水型(セミサブマーシブル)船体の上に、巨大なXバンド・フェーズドアレイ・レーダーを搭載している点にある。元々厳しい海洋環境での石油掘削を想定して起工された堅牢なCS-50構造を流用した船体上部には、重量約1,800トンに達するレーダーアンテナが配置され、その外側は強風や海水・塩害などの過酷な環境から内部構造を保護するため、直径約31メートルの白く巨大なドーム状カバー(レドーム)で覆われている。このレドームは柔軟性のある特殊合成繊維で作られており、内部のエア圧力を高めることで球体形状を維持する仕組みを採用している。技術的工夫の核となるXバンド(8〜12GHz帯)の短い波長を利用したアクティブ・フェーズドアレイ・レーダーは極めて高い分解能を持ち、数千キロメートル離れた宇宙空間に存在する非常に小さな物体まで精確に検出・識別できる能力を誇る。これにより、飛翔する弾道ミサイル本体とおとり(デコイ)や分離されたブースターの破片を明確に判別(ディスクリミネーション)することが可能である。また、自航用のディーゼル・エレクトリック推進装置とダイナミック・ポジショニング・システムを備え、目標海域へ単独航行での正確な展開能力を実現している。

運用実績と評価

制式導入後、SBX-1はアメリカ海軍の軍力輸送司令部(Military Sealift Command)やミサイル防衛局の管理下で運用が開始され、アラスカ州のアダック島を事実上の母港としつつ、ハワイ州の真珠湾などを拠点として太平洋上の広域で活動を展開してきた。主な運用として、太平洋上で実施される高精度な迎撃試験(FTGシリーズなど)におけるデータ収集や標的の精密追尾を担当したほか、北朝鮮による弾道ミサイル発射実験の兆候が強まった際には、事前の警戒監視任務として太平洋上の指定海域へ度々派遣・展開された。実際の運用評価においては、Xバンド特有の非常に狭いビーム照射角に起因する捜索範囲の制約や、大型半潜水船体の維持・運用に多額のコストを要する点が指摘されることもある。しかし、元はロシア向け石油掘削用として建造されていた構造物を高度な防衛装備へ転用したユニークな背景を持ちつつも、大気圏外を飛翔する目標の超高度な精密識別能力と、脅威の発生に応じて最適な海域へ移動できる運用上の柔軟性は他装備で代替が困難であり、アメリカ本土防衛に向けた広域警戒監視ネットワークの重要な一角として高く評価されている。

Official Name (正式名称)SBX-1 (Sea-based X-band)
Country of Origin (開発国)ロシア / アメリカ合衆国
Manufacturer (製造メーカー)Vigor Marine (改装)
Designed (設計年)2000年代初頭にアメリカミサイル防衛局とBoeingによって海上配備型弾道ミサイル防衛レーダーとして設計・改装が進められ、ロシア向け石油掘削用半潜水式プラットフォームをベースに建造された、2006年に運用開始
Primary Operators (主な運用組織)アメリカ合衆国:アメリカミサイル防衛局(アメリカ海軍支援下で運用:Sea-Based X-Band Radar)
Displacement (排水量):基準排水量 / 満載排水量50,000 tons
Dimensions (寸法):全長、最大幅、喫水L: 116m / W: 73m (Semi-sub)
Propulsion (機関):Diesel-Electric thrusters
Speed (速力):9 knots
Range (航続距離):不明
Complement (乗員数):約80名
Sensors and Processing Systems (センサー・レーダー):Massive X-band Radar (BMD)
Armament (兵装):なし
Aircraft Carried (艦載機)、
Carrying capacity(積載能力):
なし

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

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画像の引用元
  1. By US gov – http://www.msc.navy.mil/inventory/ships.asp?ship=213, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1169631

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