
概要と開発の背景
L86A2 LSW(Light Support Weapon)は、1980年代半ばにイギリスの Royal Small Arms Factory(エンフィールド)で開発された SA80 ファミリーの分隊支援火器 L86A1 をベースに、2000年代初頭に Heckler & Koch 社の手で全面的に内部改修が施され、2002年よりイギリス軍へ配備されたブルパップ式軽機関銃・マークスマンライフルである。開発の背景には、第二次世界大戦後から長年運用されていた 7.62mm 口径のブレン軽機関銃(L4A1 等)や L7A1 GPMG を置き換え、標準小銃 L85 と主要コンポーネントおよび 5.56×45mm NATO 弾薬を完全共通化させた軽量な分隊支援火器を獲得するという小銃体系統合構想(SA80 計画)が存在した。しかし初期型の L86A1 は、作動不良の多発と 30 発マガジン給弾による持続火力の限界という課題を抱えていた。イギリス国防省は SA80 A2 アップグレード計画の一環として Heckler & Koch 社へ改修を委託し、作動信頼性を飛躍的に高めた改修モデルとして本銃が再構築された。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、小銃型 L85A2 と同じブルパップレイアウトおよびメカニズムを踏襲しつつ、646 mm(約 25.4 インチ)のロング・ヘビーバレルとバイポッド(二脚)、ならびにレシーバー下部後方のサポーティング・リアグリップを統合している点にある。長銃身化と肉厚バレル構造により、小銃型を超える高い初速(約 970 m/s)と長距離における射撃精度、および連続射撃時の熱耐久性を獲得している。作動方式にはショートストローク・ガスピストン方式と回転ボルト閉鎖機構を採用し、Heckler & Koch 社によってボルトキャリア、抽出子(エジェクター)、コッキングハンドル、ならびにスチール製マガジンの強度と精度が全面見直しされた。排莢障害や給弾不良が劇的に低減され、バイポッドを展開した伏射姿勢において、SUSAT や ELCAN LDS などの光学照準器と組み合わせることで精確な射撃を行える設計思想を有する。
運用実績と評価
2002年の導入以降、L86A2 はイギリス陸軍の歩兵分隊、王立海兵隊(Royal Marines)、およびイギリス空軍連隊(RAF Regiment)などへ分隊支援火器として集中配備された。実際の運用においては、イラク戦争やアフガニスタン紛争などの実戦環境へ投入され、初期型 L86A1 時代の作動不全を払拭した高い信頼性と、ロングバレルによる卓越した長距離着弾精度が高く評価された。しかし、ベルト給弾機構を持たない 30 発マガジン給弾方式であったため、濃密な持続火力を展開する用途においては後に導入された FN MINIMI(L110A2/A3)に分隊支援火器の座を譲ることとなった。一方で、その卓越した命中精度と射程を活かし、歩兵分隊における部隊精鋭射手向けライフル(DMR: Designated Marksman Rifle)として運用目的が再定義され、L129A1 シャープシューターライフルが導入されるまでの間、中距離精密射撃アセットとして第一線で作戦行動を支え続けた。
| Official Name (正式名称) | L86A2 LSW (Light Support Weapon) |
| Country of Origin (開発国) | イギリス |
| Manufacturer (製造メーカー) | Heckler & Koch(初期型L86A1の製造はRoyal Small Arms FactoryおよびBAE Systems社、A2への改修・製造はHeckler & Koch社が担当) |
| Designed (設計年) | L86A2のベースとなったSA80ファミリー(初期型のL86A1等)の原形設計は1970年代から1980年代にかけて行われたが、改修型である「L86A2」としての設計・大規模改修契約は2000年にHeckler & Koch社によって開始され、2000年から2002年にかけて仕様策定およびアップグレード改修が実施された。イギリス軍におけるL86A2としての公式な部隊運用開始年は、最初の改修バッチが前線部隊に引き渡され、実戦配備が開始された2002年である。 |
| Primary Operators (主な運用組織) | イギリス:イギリス陸軍、王立海兵隊、イギリス空軍(RAF連隊)(※2018年から2019年にかけて、選抜射手ライフルL129A1等への完全移行に伴い、主力戦闘部隊の第一線装備から完全に退役・運用終了[Phased out / Withdrawn]となっており、現在は一部の訓練組織[Cadet Forces等]での限定的な射撃教育用を除き、正規の作戦部隊における現役運用は確認されていない) |
| Type (種類) | 分隊支援火器(Light Support Weapon / 軽機関銃、後に選抜射手ライフル[DMR]としても運用) |
| Caliber (口径) | 5.56x45mm NATO |
| Action (作動方式) | ガス圧作動方式(ショートストローク・ガスピストン式)、ローテーティングボルト閉鎖 |
| Overall Length (全長) | 900 mm |
| Barrel Length (銃身長) | 646 mm |
| Weight (重量) | 6.58 kg(光学照準器SUSATおよび空のマガジンを含む重量。照準器・マガジン等を除いた本体のみの空重量は約 5.42 kg) |
| Rate of Fire (発射速度) | 約 610 – 775 rpm |
| Effective Range (有効射程) | 約 800 m – 1,000 m(分隊支援および選抜射手運用時の有効射程) |
| Feed System (給弾方式) | 30-round detachable STANAG magazine |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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画像の引用元
- By U.S. Army photo by Kaye Richey – This tag does not indicate the copyright status of the attached work. A normal copyright tag is still required. See Commons:Licensing., Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=102252767












