




概要と開発の背景
くろべ(ATS-4202)は、1980年代後半(昭和61年度計画)に日本の防衛庁(現・防衛省)および日本鋼管株式会社(現:ジャパン マリンユナイテッド株式会社鶴見工場)によって開発・建造され、1989年(平成元年)より海上自衛隊へ導入された第2世代の対空訓練支援艦(ATS)である。海上自衛隊では1960年代より海自初の訓練支援艦「あづま(ATS-4201)」を運用してきたが、冷戦末期における航空脅威や対艦ミサイル技術の著しい進歩に伴い、護衛艦部隊の対空射撃訓練・ミサイル防衛訓練の頻度と高度化が急増した。あづま1隻のみでは全自衛艦の訓練スケジュールに対応しきれなくなったことに加え、あづまが運用する無人標的機の旧式化や対潜兵装を兼ね備えた多目的仕様による訓練支援機能の分散が課題となった。これを受け、対潜兵装を排して最新の高速無人標的機の射出・多重管制機能に特化させた、第2世代の対空訓練支援専用アセット(計画時名称:昭和61年度計画訓練支援艦4202号艦)として開発がスタートした。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、前級あづまで装備されていた対潜魚雷やソナーなどの対潜兵装・補給設備を完全に廃し、訓練支援機能へ集約・特化した平甲板型船体を備える点にある。上甲板中央部にはジェット推進の高速無人標的機「BQM-34AJ ファイアビー」4機、第3甲板格納庫には「BQM-74E チャカIII」4機(計8機)を標準整備・収納する。艦上構造物トップには、目標の精密追尾・誘導を行う4面固定式のフェーズドアレイレーダー(標的機多重管制装置)を自衛隊艦艇としていち早く配置し、最大4機の標的機を同時に管制・追尾する高度な空輸・管制メカニズムを確立した。前甲板には標的機の自力回収や水上目標射撃を兼ねたOto Melara社製62口径76mm単装速射砲1基を備える。また、推進機関には富士ディーゼル社製「8MG28HX」ディーゼルエンジン4基を搭載し、並列に配置された特徴的な2本煙突から排気される設計思想が具現化されている。
運用実績と評価
1989年3月に就役して以降、自衛艦隊直轄から護衛艦隊隷下の第1海上訓練支援隊(呉基地)へと配備され、海上自衛隊の単一組織で一貫して制式運用されている。就役後の1990年9月には、海上自衛隊の艦艇として初となる女性自衛官が乗組員として配置された歴史的実績を持つ。実際の部隊運用においては、年間を通じて全国の護衛艦部隊に対する対空ミサイル発射訓練や艦砲射撃訓練の標的機運用・射撃評価に従事し、護衛艦の防空能力維持・向上において極めて高い貢献度と実効性を具体的に証明した。2011年の東日本大震災においては災害派遣任務にも投入された。本型で確立された4面フェーズドアレイレーダーと高速標的機多重管制システムは、後継の改良型訓練支援艦「てんりゅう(ATS-4203)」の設計基盤となった。長年にわたり護衛艦隊の対空防衛錬度を支え続けた主要アセットとして、防衛力整備計画に基づく2020年代後半の除籍・世代交代に至るまで重要な立ち位置を占めている。
| Official Name (正式名称) | くろべ (訓練支援艦) / JS Kurobe |
| Country of Origin (開発国) | 日本 |
| Manufacturer (製造メーカー) | 日本鋼管 鶴見製作所(のちのJFEエンジニアリング、現:ジャパン マリンユナイテッド) |
| Designed (設計年) | 昭和61年度(1986年度)計画(61ATS)において計画・設計され、1989年3月23日に竣工して運用を開始(就役)した艦艇 |
| Primary Operators (主な運用組織) | 日本: 海上自衛隊(水上艦隊隷下 第1水上訓練支援隊) |
| Displacement (排水量):基準排水量 / 満載排水量 | 基準排水量 2,200 t / 満載排水量 約2,550 t |
| Dimensions (寸法):全長、最大幅、喫水 | 全長 101 m × 最大幅(W) 16.5 m × 深さ(H) 8.5 m × 喫水(D) 4.0 m |
| Propulsion (機関): | ディーゼル推進、富士ディーゼル8MG28HXディーゼルエンジン4基2軸推進(2サイクルディーゼル機関、総出力:9,100 PS) |
| Speed (速力): | 20 kt(約37 km/h) |
| Range (航続距離): | 非公開 |
| Complement (乗員数): | 約155人(※就役・設計時の公式定員数。現在の実運用数は約140人〜143人前後となる場合がある) |
| Sensors and Processing Systems (センサー・レーダー): | 対空射撃訓練支援装置一式(塔型マストに設置された国産のフェーズドアレイレーダーにより標的機を管制)、ミサイル評価装置一式、対水上捜索レーダー:OPS-28 |
| Armament (兵装): | 艦砲:62口径76mm単装速射砲 ×1基 |
| Aircraft Carried (艦載機)、 Carrying capacity(積載能力): | 搭載機数:無人標的機(BQM-34AJ高速標的機ファイアー・ビー、およびBQM-74E無人標的機チャカIII)を各4機、計8機積載 ヘリコプター運用能力:艦後部に標的機発射甲板兼ヘリコプター発着甲板を備え、有人ヘリコプターの発着艦および給油能力を有する(固有の有人艦載ヘリは0機) 車両・貨物運搬能力:非装備(一般的な貨物や車両の積載・輸送能力は持たない) |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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画像の引用元
- By Hunini – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=35615515
- By 海上自衛隊, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=90553791
- By 堀本正文 – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=19617262
- By Tamatukuri Kei, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=48465529
- By たつりき, CC BY 2.1 jp, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=44248489




