
概要と開発の背景
しょうなん(AGS-5105)は、2000年代末(平成19年度計画)に日本の防衛省および三井造船株式会社(現:三菱重工業玉野艦船工場)によって開発・建造され、2010年(平成22年)より海上自衛隊へ導入された最新鋭の海洋観測艦(AGS)である。海上自衛隊では、1970年代より運用されていた旧式の海洋観測艦「ふたみ(51AGS)」の老朽化に伴う除籍と、その代替アセットの整備が急務となっていた。日本周辺海域における他国潜水艦の活発化や海中防衛網の強化に応えるため、水温・塩分濃度・海底地形・音響伝播特性といった高精度な海中環境データを連続的に収集・分析する観測艦の維持が不可欠であった。しかし、防衛予算の圧縮という厳しい時代背景の下、前級「にちなん(08AGS)」の高い観測能力を維持しつつ、大幅な建造コスト削減と運用効率化を両立させた新世代の海洋観測プラットフォーム(計画時名称: 平成19年度計画海洋観測艦5106号艦)として開発がスタートした。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、前級にちなん(基準排水量3,350トン)の設計を踏襲しつつ2,950トンへと適正化し、自衛艦として初となる全面的「商船構造」の導入により大幅な建造コストダウン(にちなんの約328億円に対し約188億円)を達成した点にある。外形デザインにおいては、従来の海洋観測艦の象徴であった艦首バウ・シーブや大型ガントリー・クレーンを廃し、艦首にブルワークを配した長船首楼型船体を採用した。推進機関には優れた静粛性を備えるディーゼル・エレクトリック方式(発電用ディーゼル3基+推進用電動機2基)を採用し、大型水上自衛艦として初となる全周旋回可能なポッド式アジマス・プロペラ(360度旋回推進器)とバウスラスターを組み合わせることで、卓越した定位置保持性能と高い小回り操縦メカニズムを獲得している。艦尾には大型のA型フレーム・クレーン、右舷側には観測作業管制室を配し、マルチビーム音響測深儀や各種観測アセットの円滑な展開・回収を実現している。
運用実績と評価
2010年3月に就役して以降、海上自衛隊の自衛艦隊直轄海洋業務群(現:海洋業務・対潜支援群隷下の第1海洋観測隊)に配備され、横須賀基地を定係港として一貫して制式運用されている。制式採用以降、日本周辺海域から太平洋・東シナ海・日本海に至る広大な重要海域へ展開し、対潜戦(ASW)や潜水艦運用に必要な海中環境データの連続的収集および海底地形マッピング任務に従事している。実際の運用においては、商船構造の採用による大幅なコスト削減を果たしながらも、アジマス・プロペラがもたらす高い位置保持能力と静粛性能が具体的かつ高く評価された。また、周辺国海軍の艦艇動向に対する警戒監視任務においても機動力と各種センサを活かした監視実績を残している。前級にちなんと並び、海上自衛隊における海中防衛インフラの質的・維持的基盤を低コストで支える主要な海洋観測アセットとして極めて重要な立ち位置を占めている。
| Official Name (正式名称) | しょうなん (海洋観測艦) / JS Shōnan |
| Country of Origin (開発国) | 日本 |
| Manufacturer (製造メーカー) | 三井造船 玉野事業所 |
| Designed (設計年) | 平成19年度(2007年度)計画において設計・予算化が行われ、2010年3月17日に竣工・就役して運用を開始 |
| Primary Operators (主な運用組織) | 日本: 海上自衛隊 情報作戦集団隷下 作戦情報群 第1海洋業務隊 |
| Displacement (排水量):基準排水量 / 満載排水量 | 基準排水量 2,950 t / 満載排水量 4,150 t |
| Dimensions (寸法):全長、最大幅、喫水 | 全長 103.0 m × 最大幅(W) 16.4 m × 深さ(H) 8.7 m × 喫水(D) 4.5 m |
| Propulsion (機関): | ディーゼル・エレクトリック推進(電気推進)/ ディーゼル機関 3基、推進電動機 2基2軸駆動、アジポッド(旋回式ポッド型プロペラ)およびバウスラスター装備、総出力:4,800 PS |
| Speed (速力): | 16 kt |
| Range (航続距離): | 非公開 |
| Complement (乗員数): | 約80名 |
| Sensors and Processing Systems (センサー・レーダー): | 航海用レーダー(OPS-20等)、各種海洋観測装置一式(マルチビーム音響測深装置、水温・塩分・音速計測装置など) |
| Armament (兵装): | なし |
| Aircraft Carried (艦載機)、 Carrying capacity(積載能力): | 搭載機数:固有の有人艦載ヘリ・無人航空機は0機(航空機運用能力なし) ヘリコプター運用能力:なし(飛行甲板、発着艦能力は非装備) 車両・貨物運搬能力:一般的な車両や貨物の輸送を目的とした設計ではない。ただし、左舷に11m作業艇、右舷に複合型作業艇を各1艇ずつ装備。観測資材や機器の揚降用に、艦尾にA型フレームクレーン等の各種クレーン装置を備える。 |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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