
概要と開発の背景
L115A3 および改良型の L115A4 は、2000年代半ばにイギリスの火器メーカーである Accuracy International Ltd. が開発した AWM(Arctic Warfare Magnum)ボルトアクション狙撃銃をベースに、イギリス軍が制式配備した8.59mm口径(.338 Lapua Magnum)の長距離精密狙撃システムである。導入の背景には、それまで主力であった 7.62×51mm NATO 弾仕様の L96A1 狙撃銃が抱えていた、遠距離における風の影響やエネルギー保持力の限界という課題が存在した。中東などの広大な作戦地域において、1,000 m を超える長距離の標的へ正確に弾丸を到達させ、相手方の火力を長射程外から無効化する能力が急務となった。イギリス国防省は「狙撃システム改善計画(SSIP: Sniper System Improvement Programme)」を立ち上げ、初期型の L115A1 を大幅に更新する形で2007年に本機を選定し、2008年より第一線部隊への本格配備を開始した。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、高剛性のアルミニウム製シャーシフレームに高精度な 686 mm のステンレス鋼製フルーテッド(溝付き)バレルと手動ボルトアクション機構を組み込み、強力な .338 Lapua Magnum 弾の激しい反動に耐えうる堅牢性を確立している点にある。作動方式には60度の浅いボルトハンドル回転角を持つボルトアクションを採用し、素早く確実な次弾装填を可能にしている。銃床部には携帯性を高める折りたたみ式ストック(AWM-F 規格)を導入し、射手の体格や構えに合わせて高さ調整が可能なチークピース、精密射撃時の姿勢を支えるリアモノポッド(後部一脚)および前部バイポッドを備える。照準系統には高倍率の Schmidt & Bender 社製 5-25×56 PM II 光学照準器を標準統合し、その前部には STIC(Sniper Thermal Imaging Capability)熱画像照準器を配置できるマウント構造や、射撃音と銃口火花を低減する専用サプレッサー(消音器)の装着機構を有する。
運用実績と評価
2008年の配備開始以降、L115A3 および最新改修型の L115A4 はイギリス陸軍の歩兵大隊・偵察部隊、王立海兵隊(Royal Marines)、およびイギリス空軍連隊(RAF Regiment)に標準配備された。実際の運用においては、アフガニスタン紛争(ヘルマンド州での作戦等)やイラクにおける長距離偵察・監視・精鋭射撃ミッションへ投入された。2009年11月には、王室騎兵連隊(Household Cavalry)のクレイグ・ハリソン(Craig Harrison)軍曹が、アフガニスタンのムーサ・カラ南部において 2,475 m(2,707 ヤード)という当時の世界最長狙撃記録を達成し、本システムの卓越した長距離着弾精度と弾頭威力を世界に実証した。シャーシ構造やアクセサリーマウントの配置を一部改修した L115A4 への近代化を経て、現代のイギリス軍における最長距離精密射撃アセットの絶対的基幹として第一線で運用が継続されている。
| Official Name (正式名称) | L115A3 / L115A4 |
| Country of Origin (開発国) | イギリス |
| Manufacturer (製造メーカー) | Accuracy International |
| Designed (設計年) | L115A3の設計年は、イギリス国防省(MOD)の狙撃銃システム向上計画(SSIP)に基づきAWMをベースに大幅な改良・仕様策定が行われた2007年であり、部隊への実戦配備および公式な運用開始年は、アフガニスタンの第16空中強襲旅団をはじめとする前線部隊へ最初のバッチが投入された2008年(5月)である。その発展型であるL115A4については、米国の銃器見本市「SHOT Show」等で開発・発表された記録が確認できるものの、公式な設計年および具体的な運用開始年は不明 |
| Primary Operators (主な運用組織) | イギリス:イギリス陸軍、王立海兵隊、イギリス空軍(制式名L115A3および改良型のL115A4 Long Range Rifleとして、各歩兵部隊の狙撃班や各種特殊部隊[イギリス陸軍SAS、イギリス海軍SBS、SFSG等]において長距離狙撃用主力火器として運用) ウクライナ:ウクライナ軍(2022年のロシア侵攻以降、イギリス政府による防衛援助パッケージや海外からの公式な軍事寄贈アセットの一部として、イギリス軍仕様の砂漠用タン・カラーのストックや消音器を備えたL115A3が前線部隊や国際軍団の精鋭狙撃手に引き渡され、実戦運用されていることが各種写真や映像データから確認されている) |
| Type (種類) | ボルトアクション式狙撃銃(Bolt-action sniper rifle) |
| Caliber (口径) | 8.59mm(.338 Lapua Magnum) |
| Action (作動方式) | ボルトアクション(Bolt-action) |
| Overall Length (全長) | ストック展開時(展開長):約 1,230 – 1,300 mm(消音器非装着時の数値。イギリス陸軍公式データでは 1,300 mm) ストック折り畳み時:折り畳みにより全長が約 225 mm 短縮されるが、L115A3/A4に消音器やマウントを装着した状態の公式な折り畳み時寸法は不明 |
| Barrel Length (銃身長) | 686 mm(27 inches) |
| Weight (重量) | 約 6.8 kg(イギリス陸軍公式によるスコープ・アクセサリ等を含まない空重量。各種オプション[S&B 5-25×56スコープ、消音器、バイポッド、モノポッド等]装着の戦闘重量は約 7.2 – 8.0 kg) |
| Rate of Fire (発射速度) | ボルトアクション(Bolt-action) |
| Effective Range (有効射程) | 1,100 m 以上(イギリス軍公式による標準点目標値) / 最大有効射程 約 1,500 m 以上(※訓練された精鋭狙撃手による運用時) |
| Feed System (給弾方式) | 5-round detachable box magazine |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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画像の引用元
- By Photo: Cpl Daniel Wiepen/MOD, OGL v1.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=36193875







