M141 BDM (Bunker Defeat Munition)

M141 BDM
アフガニスタン国陸軍兵士(アメリカ軍との合同訓練の模様、アフガニスタン国陸軍での運用は無し)

概要と開発の背景

M141 BDM(Bunker Defeat Munition)は、1990年代半ばにアメリカのTalley Defense Systems(現:Nammo Talley Inc.)によって開発が進められ、1999年にアメリカ陸軍へ制式導入された単発使い捨て型の歩兵用対構造物ロケット火器システムである。開発段階では「SMAW-D(Shoulder-launched Multipurpose Assault Weapon-Disposable)」と呼ばれていた。本兵器の開発背景には、市街地戦闘や野戦において敵が潜伏・構築するコンクリート製バンカー、土嚢陣地、レンガ壁、軽装甲車両などを迅速に無効化できる軽量かつ即座に投棄可能な構造物打撃火器に対するアメリカ陸軍の強い需要が存在した。従来、アメリカ海兵隊などで運用されていたSMAW(Mk 153)は再装填可能なシステムであったが、陸軍の歩兵分隊にとっては重量が嵩む上、使用後の発射筒保持が機動性の阻害要因となっていた。これを受け、再装填機能を省いて操作を大幅に簡易化し、歩兵自らが手軽に携行できる使い捨て兵器として開発がスタートした。

構造と技術的特徴

構造上の最大の特徴は、耐候性に優れたガラス繊維強化プラスチック(FRP)で作られた可伸縮式(望遠鏡式)の発射筒と、二重動作モードを備えた83mm HEDP(二重目的高能率)弾頭を採用している点にある。携行時には発射筒が短縮配置されており、射撃直前に前後へ引き伸ばして展開・固定する機構を持つ。搭載されているHEDP弾頭の信管には、着射対象の材質や硬度をミリ秒単位で自動判別するスマートデュアルモード機能が組み込まれている。コンクリートや装甲板などの硬質目標に対しては着地と同時に即時作動して貫徹力を発揮し、土嚢や木造・レンガ構造物などの軟質目標に対しては薄い外壁を貫通して内部へ侵入した後に遅延作動して爆破する設計が採られている。前級のM72 LAWやAT4などの対戦車兵器と比較して、非装甲・半硬質構造物に対する破壊力と壁面への開口部形成能力が飛躍的に向上しており、照準具には単純な折りたたみ式メカニカルサイトと暗視装置用ピカティニー・マウントが装備されている。

運用実績と評価

1999年の制式導入以降、アメリカ陸軍の歩兵部隊や第75レンジャー連隊などの特殊部隊に配備されたほか、ウクライナ陸軍をはじめとする同盟国へも大量に供与・運用されている。2000年代のアフガニスタン紛争やイラク戦争において実戦投入され、洞窟陣地、土壁の強固な住居構造、市街地のビル陣地に対する直撃打撃で高い有効性と即応性が証明された。射撃後は空になった発射筒を現場にそのまま破棄できる使い捨て構造(Disposable)であるため、歩兵の即座の離脱および機動力の確保に寄与する点が現場で高く評価された。ウクライナ紛争においてもアメリカ軍の安全保障支援パッケージとして多数が配備され、野外陣地や建造物内に配置された火器の無効化に具体的に運用された。現在においても、歩兵分隊が携行して構造物や特設陣地を迅速に打撃できる自走型近接火器として、アメリカ軍および各国軍で重要な立ち位置を占めている。

Official Name (正式名称)M141 BDM (Bunker Defeat Munition)
Country of Origin (開発国)アメリカ合衆国
Manufacturer (製造メーカー)McDonnell Douglas (設計・初期開発)、Talley Defense Systems (のちに買収され、現在はノルウェー資本傘下の Nammo Defense Systems / Nammo Talley, Inc. が製造・契約主体)
Designed (設計年)アメリカ陸軍の要請を受けたマクドネル・ダグラス社(現ナム・ディフェンス・システムズ社)により、1991年から1994年にかけて開発・設計が行われ、1996年の比較評価コンペティションで制式選定された後、1999年に最初のロットがアメリカ陸軍に納品されたことで公式に導入され運用が開始
Primary Operators (主な運用組織)アメリカ合衆国:アメリカ陸軍(一般歩兵部隊、第82空挺師団などの精鋭空挺部隊において、分隊レベルの主力ディスポーザブル対陣地火器として正式採用・現役運用中。なお、ベースとなった再装填式の親モデルである「Mk 153 SMAW」およびその近代化型「Mk 153 Mod 2」は、主にアメリカ海兵隊の強襲・戦闘工兵部隊で運用中)
ウクライナ:ウクライナ陸軍、ウクライナ空中襲撃軍、ウクライナ特殊作戦軍(ロシアによる侵攻に対抗するため、2022年の開戦直前の前哨期からアメリカ政府による直接的な緊急軍事支援パッケージの一環として大規模に受領。前線の歩兵・特殊部隊等において敵の掩体壕や装甲車両を撃破するための主力アセットとして大規模実戦運用中)
イスラエル:イスラエル国防軍(IDF:陸軍歩兵部隊・特殊部隊において運用中。ガザ地区などにおける大規模な都市型市街戦や地下トンネル・強固な陣地構造物の掃討作戦に対応するため、アメリカ軍より緊急補給の形で計1,800挺以上の「M141 BDM」が公式に引き渡され、実戦運用されている事実が確認されている)
Type (種類)単発使い捨て式・肩掛け型対陣地ロケットランチャー
Caliber (口径)83 mm
Operating Principle (作動原理)Rocket propulsion / Free-flight unguided rocket system (ロケット推進 / 自由飛行式無誘導ロケットシステム)
※発射ガスを後方に排出(バックブラスト)して反動を相殺しつつ、ロケットモーターの推進力で直射飛行
Overall Length (全長)運搬時 (Closed/Carry configuration): 812 mm (約81.2 cm) 発射準備時 (Extended/Ready-to-fire configuration): 1,372 mm (約137.2 cm)※アウターチューブを後方へ引き伸ばす「伸縮式(テレスコピック構造)」を採用
System Weight (システム重量)7.12 kg (約15.7 lbs)
※使い捨て構造のため、弾頭(1.08 kgのHEDPロケット弾)を内部に同梱した状態の総重量(システム重量)
Muzzle Velocity (初速)秒速 217 m 〜 220 m (217 m/s 〜 220 m/s)
Armor Penetration (装甲貫通力)AT4CS HP: 500 mm 〜 600 mm超 RHA (均質圧延装甲換算)
AT4CS AST: 強化コンクリート壁や二重土嚢などの構造物を貫通・破壊(タンデム弾頭により、1層目を貫通した後に内部で主弾頭が爆発)
AT4CS ER: 350 mm超 RHA
Effective Range (有効射程)固定目標 (Fixed Target): 250 m 〜 300 m(最大有効射程は 500 m)
移動目標 (Moving Target): 最大 300 m
最小阻止・安全射程: 15 m (これ未満の距離では信管が安全作動するため起爆しない)
Sight / Guidance (照準・誘導方式)Unguided (無誘導方式)
本体側面に100m〜500m刻み(50mインクリメント)で調整可能な「折り畳み式アイアンサイト(オープンサイト)」を標準装備
夜間暗視装置やレーザー照準器、光学照準器をワンタッチで固定できる専用の「レールマウント(インテグラル・マウント)」が配置されており、各種光学器具(AN/PEQや各種ナイトビジョンなど)の搭載に対応

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

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画像の引用元
  1. By Spc. Kimberly Trumbull – https://www.dvidshub.net/image/590585/ana-range-training, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=53650507

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