
概要と開発の背景
こんごう型護衛艦は、1980年代末から1990年代初頭にかけて日本の防衛庁(現・防衛省)および三菱重工業株式会社、石川島播磨重工業株式会社(現:株式会社IHI)によって開発・建造され、1993年(平成5年)より海上自衛隊へ導入された日本初のイージスシステム搭載ミサイル護衛艦(DDG)である。冷戦末期の昭和50年代から60年代にかけて、周辺国海軍航空隊による対艦ミサイルの超低空大量発射(飽和攻撃)の脅威が極めて深刻化していた。従来のターター・システムを搭載する「たちかぜ型護衛艦」などの旧式防空アセットでは、同時に飛来する多数の目標を処理・追尾することが構造上不可能であった。これを受け、護衛隊群の広域防空網を根幹から刷新し、米国以外で初となるイージス武器システム(AWS)の導入計画が始動した。米国のLockheed Martin(当時RCA社等)が開発した統合システムと日本の高度な艦艇建造技術を統合する形で、次世代の艦隊防空中枢艦として開発がスタートした。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、艦橋構造物の4面に固定配置された八角形の「AN/SPY-1D」多機能フェイズドアレイレーダーと、艦首・艦尾に組み込まれた垂直発射装置(Mk 41 VLS)による卓越した多目標同時処理メカニズムにある。米海軍のアーレイ・バーク型駆逐艦(フライトI)の基本設計をベースとしつつ、護衛隊群の旗艦としての指揮運用空間(CICや司令部設備)を拡張するため、艦橋を高くした平甲板型の独自船体構造と長大な直立マストを採用している。旧来の旋回式ミサイル発射機(単装/連装)と比較して、VLS(計90セル)の導入により発射間隔の短縮と全方位即応性が劇的に向上した。主砲には毎分40発の発射速度を誇るイタリアOto Melara社製の54口径127mm単装速射砲を採用し、近接防空火器(CIWS)およびハープーン対艦ミサイルと連携する。主機関には石川島播磨重工業がライセンス生産したGeneral Electric製「LM2500」ガスタービン4基(COGAG方式)を搭載し、高静音性と30ノット以上の高速巡航能力を獲得している。
運用実績と評価
1993年3月に1番艦「こんごう」が就役して以降、計4隻(こんごう、きりしま、みょうこう、ちょうかい)が順次配備され、海上自衛隊の4つの護衛隊群に各1隻ずつ基幹防空艦として制式運用されている。実際の運用においては、1990年代末以降の北朝鮮による弾道ミサイル発射事案への警戒監視において中核的な役割を果たした。2000年代後半には全艦へミサイル防衛(BMD)改修が施され、迎撃ミサイル「SM-3 Block IA」の射撃能力を獲得した。ハワイ沖での弾道ミサイル迎撃試験(JFTM)において大気圏外での直接衝突・迎撃に成功し、高度な弾道ミサイル防衛能力を具体的に証明した。本型の優れた基本設計と運用実績は、後続の「あたご型」や「まや型」といった近代化イージス護衛艦の直接的なベースとなり、日本の二層防空体制の上層(弾道ミサイル迎撃)および広域艦隊防空を支える最高峰のアセットとして、就役から30年以上が経過した現代も統合防空ミサイル防衛(IAMD)の最前線で運用が続けられている。
| Official Name (正式名称) | こんごう型護衛艦 / Kongō-class destroyer |
| Country of Origin (開発国) | 日本(米国のアーレイ・バーク級駆逐艦をベースに国内設計) |
| Manufacturer (製造メーカー) | 三菱重工業 長崎造船所、石川島播磨重工業(現:IHI)東京第1工場 |
| Designed (設計年) | 1980年代後半から海上自衛隊初のイージス艦として米国のアーレイ・バーク級駆逐艦をベースに設計が進められ、1990年に1番艦の建造を開始 1993年に1番艦「こんごう」が就役し、1998年までに同型艦4隻すべてが就役したことで、弾道ミサイル防衛や広域防空能力の中核を担う本格的な運用が開始されたミサイル護衛艦 |
| Primary Operators (主な運用組織) | 日本: 海上自衛隊(自衛艦隊 護衛艦隊:第1護衛隊群第5護衛隊に1番艦「こんごう (DDG-173 )」、第2護衛隊群第6護衛隊に2番艦「きりしま (DDG-174)」、第3護衛隊群第7護衛隊に3番艦「みょうこう (DDG-175)」、第4護衛隊群第8護衛隊に4番艦「ちょうかい (DDG-176)」をそれぞれ配備・運用) |
| Displacement (排水量):基準排水量 / 満載排水量 | 基準排水量:7,250 t / 満載排水量:9,480 t(※近年のBMD能力付与等の改修により、現在の満載排水量は約9,900 tに迫る) |
| Dimensions (寸法):全長、最大幅、喫水 | L: 161 m(全長) × W: 21.0 m(最大幅) × D: 6.2 m(喫水) |
| Propulsion (機関): | COGAG(コンバインド・ガス・ガスタービン・アンド・ガスタービン)方式、4x 石川島播磨重工業(現IHI)LM2500 ガスタービン、2軸推進、出力:100,000 hp |
| Speed (速力): | 30 kt(約 56 km/h) |
| Range (航続距離): | 約 4,500 nm(20 kt 巡航時) |
| Complement (乗員数): | 約 300 名 |
| Sensors and Processing Systems (センサー・レーダー): | AWS(イージス武器システム):ベースライン4またはベースライン5(各艦の改修状況による。弾道ミサイル防衛能力(BMD5.0/SPY-1D(V)等)へ順次アップデート済) SPY-1D 多機能レーダー(Sバンド、4面固定フェーズドアレイ) OPS-28D 対水上レーダー OQS-102 艦首バウ・ソナー OQR-2 曳航ソナー(TACTAS) 3x Mk.99 ミサイル射撃統制装置(SPG-62イルミネーター) |
| Armament (兵装): | Mk.41 VLS(垂直発射システム):90セル(艦首:29セル、艦尾:61セル。SM-2対空ミサイル、SM-3弾道ミサイル迎撃弾、垂直発射魚雷(VLA)アスロックを装填) 1x 54口径127mm単装速射砲(イタリア・OTOメラーラ社製コンパット砲) 2x 20mm CIWS(高性能20mm機関砲) 2x HOS-302 3連装短魚雷発射管(Mk.46または97式魚雷) 2x 4連装ハープーン(または90式)SSM(対艦誘導弾)発射筒 |
| Aircraft Carried (艦載機)、 Carrying capacity(積載能力): | 艦載機:0機(定数としての常時艦載機およびヘリコプター格納庫は非装備。ただし、後部甲板に広大な「ヘリコプター甲板(飛行甲板)」と機体への燃料補給・始動用設備を備えており、SH-60K等の哨戒ヘリコプター1機の着艦・展開・臨時運用能力を有する) 車両・貨物運搬能力:専用の貨物・車両格納エリアは非装備。ミサイル護衛艦(防空・BMD要員および各種自艦用サプライ)としての標準的な物資積載能力に留まる。 |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
PR:関連商品
画像の引用元
- By Kaijō Jieitai (海上自衛隊 / Japan Maritime Self-Defense Force) – The Ministry of Defense of Japan, (日本防衛省)https://www.mod.go.jp/msdf/formal/gallery/ships/dd/izumo/183.html, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=91866482








