
概要と開発の背景
練習艦「かしま(TV-3508)」は、1990年代前半(平成4年度計画)に日本の防衛庁(現・防衛省)および日立造船株式会社(舞鶴工場)によって開発・建造され、1995年(平成7年)より海上自衛隊へ導入された自衛隊初の専用設計練習艦「かとり(TV-3501)」の後継艦である。海上自衛隊では昭和40年代から運用されていた「かとり」が老朽化に伴い更新時期を迎えていたことに加え、初任幹部自衛官の教育環境の近代化や国際親善・外交任務におけるプレゼンス向上が強く求められていた。特に、女性自衛官の乗艦拡大への適応や、多様化する現代洋上戦闘に対応する実習シミュレータ機能の統合、ならびに諸外国を訪問する国際交流の拠点としての公式儀礼機能の飛躍的な拡充が課題とされていた。これを受け、先代かとりで培われた運用ノウハウを結集し、実習効率と国際コミュニケーション能力を極限まで高めた単型クラスの練習艦体(計画時名称: 4,000トン型練習艦)として開発がスタートした。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、前級かとり(基準排水量3,350トン)から4,050トンへと艦体を拡大し、前部から中部にかけて乾舷(船体側面)を高く取った長船首楼型船体を備えつつ、教育実習と公式儀礼に特化したメカニズムを構築した点にある。艦内には幹部候補生約170名を収容可能な大講堂やシミュレータ実習室、女性専用居住区が初期設計から整えられ、艦橋やCIC(戦闘情報センター)、機関制御室も大勢の実習員が同時に観測・学習できるよう広いスペースが確保されている。推進機関には蒸気タービンからCODOG(ガスタービン・ディーゼル複合)方式へと変更され、Rolls-Royce plcが開発し川崎重工業がライセンス生産する「Spey SM1C」ガスタービン2基と三菱重工業製ディーゼル2基を統合することで、25ノットの高速巡航性能と高い省燃費性を両立させた。兵装は前甲板のOto Melara社製62口径76mm単装速射砲1基と3連装短魚雷発射管2基のみに抑制し、対空・対艦ミサイル運用はCIC内の高度なシミュレータで代替している。また、礼砲台や特別公室、13m将官艇を備える設計思想が具現化されている。
運用実績と評価
1995年1月に就役して以降、同型艦を持たない練習艦隊の専用旗艦(TV-3508)として制式配備され、呉基地を定係港として長年にわたり運用されている。制式採用以降、毎年実施される遠洋練習航海(遠航)の主軸として、北米・欧州・アジア・南米など世界各地の寄港地へ幹部候補生を輸送し、国際的な視野の養成と多国間親善外交に従事している。実際の運用においては、諸外国の国家元首や軍高官を迎える特別公室の充実した造りや将官艇によるハイレベルな外交儀礼能力が高く評価された。また、オランダ坂と呼ばれる傾斜でつながる後部訓練甲板兼ヘリコプター発着スペースや、天幕を展開したレセプション会場機能、ならびに近年導入されたStarlink(スターリンク)衛星通信システムによる近代的環境が高く評価されている。30年近くにわたり数多くの初任幹部を育成し、日本の海上防衛技術と平和外交の実効性を世界へ提示する要として唯一無二の立ち位置を維持している。
| Official Name (正式名称) | かしま / JS Kashima |
| Country of Origin (開発国) | 日本 |
| Manufacturer (製造メーカー) | 日立造船 舞鶴工場 |
| Designed (設計年) | 中期防衛力整備計画に基づく平成4年度(1992年度)計画において基本設計および予算化が行われ、1993年4月20日に日立造船舞鶴工場にて起工された後、1995年1月26日に竣工・就役したことで本格的な運用が開始された艦艇 |
| Primary Operators (主な運用組織) | 日本: 海上自衛隊(防衛大臣直轄部隊 練習艦隊:練習艦隊司令部直轄に練習艦「かしま」を配備・運用中) |
| Displacement (排水量):基準排水量 / 満載排水量 | 基準排水量:4,050 t / 満載排水量:非公開 |
| Dimensions (寸法):全長、最大幅、喫水 | 143 m × 幅(最大幅):18 m × 喫水:4.6 m(深さ:12.3 m) |
| Propulsion (機関): | ガスタービン・ディーゼル複合機関(CODOG方式)、ガスタービン2基、ディーゼル2基、2軸推進、総出力:27,000 PS |
| Speed (速力): | 25 kt(約 46 km/h) |
| Range (航続距離): | 非公開 |
| Complement (乗員数): | 約 360 人(実習幹部等を含む総定員) |
| Sensors and Processing Systems (センサー・レーダー): | OPS-14 対空捜索レーダー OPS-18 対水上捜索レーダー 航海用レーダー 81式射撃指揮装置2型(FCS-2) |
| Armament (兵装): | 艦砲:1x 62口径76mm単装速射砲 魚雷:2x 68式3連装短魚雷発射管(水上発射管) その他:礼砲 2門(艦橋構造物付近に固定。※型式・口径などの具体的数値は公式要目上で非指定・非公開) |
| Aircraft Carried (艦載機)、 Carrying capacity(積載能力): | 搭載機数:定数としての常時艦載機は0機。ただし、艦尾側にヘリコプターが発着艦可能な訓練甲板(飛行甲板)を備え、ヘリコプターの運用能力機能を有している。 車両・貨物運搬能力:非装備(実習幹部用の講堂、居住区、将官艇・作業艇、訓練資機材以外の車両運搬用甲板や貨物倉庫等の積載能力は持たない)。 |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
PR:関連商品
画像の引用元
- By 海上自衛隊, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=89151823



