
概要と開発の背景
E-6B Mercuryは、1980年代にアメリカ合衆国のThe Boeing Companyが開発し、アメリカ海軍に制式採用された大型の空中指揮管制・戦略通信中継機である。冷戦末期のアメリカ海軍では、弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)との戦略通信を支援するTACAMO(Take Charge And Move Out)任務を担っていたEC-130Qプロペラ機の老朽化が進み、機体規模や速度、飛行高度、航続距離の面で性能向上が急務となっていた。これに伴い、最高指揮権限(NCA)からの指令を洋上の潜水艦部隊へ確実かつ迅速に伝達するため、信頼性の高い旅客機Boeing 707-320の機体をベースとしたジェット通信中継機「E-6A」の開発がスタートした。1987年に初飛行を果たし1989年から運用が開始された後、アメリカ空軍のEC-135Cが担っていたルッキング・グラス(Looking Glass)空中指揮所任務を統合・機能強化するため、1990年代後半よりアビオニクスや作戦区域を改修した「E-6B」へのアップグレードが実施された。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、Boeing 707-320の耐久性の高いエアフレームを基礎としながら、海中深く潜航する潜水艦と通信するための超長波(VLF)デュアル曳航ワイヤーアンテナシステム(長短2本の空中アンテナを機体後部から展開する機構)を装備している点にある。パワートレインには高効率なCFM International製CFM56-2A-2ターボファンエンジンを4基搭載し、長時間におよぶ空中哨戒と優れた静粛性を確保している。機体には核爆発時に発生する強力な電磁パルス(EMP)から電子機器を守るシールド構造や強化ライナーが組み込まれている。また、E-6Bへの改修においてBoeing 737 Next Generationと同等の先進的なデジタル・グラスコックピットが導入されたほか、陸上発射型大陸間弾道ミサイル(ICBM)を機上から遠隔制御・指示できる空中発射制御システム(ALCS)を搭載している。さらに、アメリカ空軍のKC-135やKC-46等から空中給油を受けるためのフライングブーム受油リセプタクルを機首上部に備え、長時間の連続作戦を維持できる技術的工夫が施されている。
運用実績と評価
1998年のE-6B運用開始および2003年の全機改修完了以降、アメリカ海軍の戦略通信飛行隊に配備され、アメリカ戦略軍(USSTRATCOM)の指示下で運用されている。アメリカ海軍の潜水艦部隊だけでなく、陸上ICBM部隊や戦略爆撃機部隊を束ねる有事の空中指揮所(ABNCP)として常時警戒態勢を維持し、冷戦後から現代に至るまでアメリカにおける核抑止統合ネットワークの確実なバックボーンとして高い評価を獲得した。特に、VLFアンテナを用いた確実な通信中継能力とALCSによる柔軟な指揮統制能力は、地上の通信インフラが機能不全に陥った際のバックアップ機能として極めて重要視されている。現在では後継機となるE-130Jへの移行計画が進められているものの、長年にわたり世界最高水準の戦略指揮・通信プラットフォームとして強固な地位を維持している。
| Official Name (正式名称) | E-6B Mercury |
| Country of Origin (開発国) | アメリカ合衆国 |
| Manufacturer (製造メーカー) | Boeing |
| Designed (設計年) | 1980年代前半にBoeingによって設計・開発が進められ、原型のE-6Aは1989年にアメリカ海軍で運用が開始 その後、指揮統制能力を強化したE-6B仕様へ1990年代後半に改修・更新された |
| Primary Operators (主な運用組織) | アメリカ合衆国:アメリカ海軍(艦隊航空偵察飛行隊〔VQ〕:VQ-3 “Ironmen”、VQ-4 “Shadows”) |
| Crew (乗員) | 12 – 22名 |
| Dimensions (寸法):全長、全幅(翼幅)、全高 | L: 46.6m / W: 45.2m / H: 12.9m |
| Empty / Max Takeoff Weight (自重 / 最大離陸重量) | 78,378 kg / 154,675 kg |
| Powerplant (エンジン):型式、推力 | 4x CFM F108-CF-100 (24,000 lbf each) |
| Max Speed (最大速度):マッハ表記、高度別の速度 | Mach 0.86 / 981 km/h |
| Combat Range (戦闘行動半径) / Ferry Range (航続距離) | 11,760 km |
| Service Ceiling (実用上昇限度) | 40,000 ft(12.192 km) |
| Hardpoints (ハードポイント):ミサイルや爆弾の搭載能力 | なし |
| Fixed Armament (固定武装):機関砲の口径、弾数 | なし |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
PR:関連商品
画像の引用元
- By USAF Greg L. Davis – dvidshub.net, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=118926223

