
概要と開発の背景
Stryker M-SHORAD(Maneuver Short-Range Air Defense)は、2010年代末にアメリカのLeonardo DRSおよびGeneral Dynamics Land Systems(GDELS)を中心に開発され、2021年よりアメリカ陸軍へ導入された8×8の装輪式自走近距離防空システムである。開発の背景には、冷戦後の対テロ戦主導から大国間競合へ移行する中で、前線部隊に対する無人航空機(ドローン)や低空侵入する回転翼機、固定翼機などの多角的な空中脅威が急増した事実がある。従来のアメリカ陸軍の近距離防空は、非装甲・軽装甲車両を足回りとするM1097 AN/TWQ-1 Avenger防空システムや携帯式防空ミサイルに依存していた。しかし、従来システムは機甲部隊やストライカー部隊の路上速力や不整地走破性に随伴できず、防護力や全天候センサー能力の不足が課題となっていた。これらを刷新し、ストライカー8×8装輪プラットフォームの高い機動力と防護性能を保ちつつ、機動部隊へ密着して多層防空を提供する緊急アセットとして開発がスタートした。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、耐地雷・耐爆風性能を高めた8×8のStryker A1 DVH(二重V字底)シャーシをベースに、Moog社製の可変統合兵装プラットフォーム「RIwP(Reconfigurable Integrated-weapons Platform)」リモート砲塔を搭載し、多層防御メカニズムを構築した点にある。砲塔には30mm XM914 Bushmaster II チェーンガン(可変信管エアバースト弾対応)と同軸7.62mm M240C機関銃を備えるほか、車体左右のランチャーに4連装FIM-92 Stinger防空ミサイルと、2連装AGM-114L Longbow Hellfireミサイルを分載統合している。索敵・追尾システムには、車体周縁に配置されたRADA(現 Leonardo DRS)製AN/MHR AESA(アクティブ電子走査アレイ)レーダー4基と高精度熱源暗視・光学センサーが採用されている。これにより360度全周囲の空中標的を同時に探知・識別し、小型ドローンから低空飛行する航空機、さらに地上の装甲目標に至るまで状況に応じた最適な兵装で即座に対処する高い柔軟性を獲得している。
運用実績と評価
2021年に第4防空砲兵連隊第5大隊(欧州駐留米陸軍)へ初期部隊が配備されて以降、アメリカ陸軍の防空砲兵部隊において主力自走防空システムとして制式化された。2022年には名誉勲章受章者に因み「SGT STOUT(サージェント・スタウト)」と正式命名された。欧州や太平洋地域における各種演習においては、従来のM1097 AN/TWQ-1 Avengerや前世代のM6 Linebackerと比較して大幅に向上した車体防護性能と、時速96km以上の速力でストライカー部隊に完全追従する機動性が評価された。AESAレーダーと30mmエアバースト弾の組み合わせによる小型ドローン群の即時無効化能力や、ミサイルによる遠距離目標への対処性能が実証されている。また、指向性エネルギー兵器(50kW級レーザー)を車上統合したDE M-SHORADなどの次世代改修型も開発・検証が進められている。現在においても、アメリカ陸軍の前線即応展開態勢と機動空域防衛を支える中核防空アセットとして運用が拡充されている。
| Official Name (正式名称) | Stryker M-SHORAD |
| Country of Origin (開発国) | アメリカ合衆国 / カナダ |
| Manufacturer (製造メーカー) | 車体ベース(シャーシ):General Dynamics Land Systems (GDLS) 砲塔および対空兵器システム:Moog / Leonardo DRS (※Leonardo DRS社がミッション統合、Moog社がRiWP無人砲塔を供給) |
| Designed (設計年) | アメリカ陸軍が既存のハンヴィーベースの防空アセットに代わる緊急要求(IM-SHORADプログラム)を2018年に公式に立ち上げたことで本格的な開発設計が始まり、短期間での開発・試験を経て2021年4月に最初の先行試作車4両がドイツ駐留の第4防空高射砲兵連隊第5大隊へ実戦引き渡しされて部隊運用を開始 |
| Primary Operators (主な運用組織) | アメリカ合衆国:アメリカ陸軍(主に在欧米陸軍および各ストライカー旅団戦闘チーム(SBCT)に随伴する「防空高射砲兵(ADA:Air Defense Artillery)大隊」に主力現役実戦配備。最初に量産実車を受領したドイツ駐留の「第4防空高射砲兵連隊 第5大隊(5th Battalion, 4th Air Defense Artillery Regiment / 5-4 ADA)」を筆頭に、ワシントン州JBLM駐屯の第7歩兵師団傘下、および各現役SBCT直属の防空大隊にて集中的に部隊運用中。さらに2027年以降に向け、フロリダ州およびオハイオ州の陸軍国家警備隊(ARNG)防空部隊への将来的な追加配備枠も正式に決定されており、現在は高出力50kWレーザーを統合した派生型である「DE M-SHORAD(Increment 2)」の部隊実証試験運用も並行して進めている) |
| Crew / Capacity (乗員および兵員輸送数) | 3名 (操縦手、車長、対空砲手) ※高度な自動化対空砲塔(RiWP)を採用しているため、車内完全遮蔽下からリモートで3名運用を行う、兵員輸送能力(APC機能)はなし |
| Combat Weight (戦闘重量) | 28,576 kg (28.58 t / 63,000 lbs) ※最新の二重V字型車体底面(DVH-A1)シャーシ、各種対空レーダー、ミサイル、およびレーザー測距儀を含む武器システム一式を満載した状態の最大総重量 |
| Dimensions (寸法: 全長/全幅/全高) | W: 3,406 mm (3.40 m ※サイドミラー・外装レーダーマウント部含む) L: 7,381 mm (7.38 m ※車体バンパー等の突起部含む車体長) D: 3,420 mm (3.42 m ※ムーグ社製RiWP無人砲塔の最天面、および4面に配置されたMHR(多任務半球レーダー)のアンテナ基部を含む垂直高) / 基本車体幅:2,720 mm (2.72 m) |
| Armor (装甲の詳細: 複合装甲、ERA、APSの有無) | High-hard steel structure hull with Double-V Hull (DVH) design, optional bolt-on ceramic armor, and internal spall liners (高硬度鋼板溶接構造に加え、地雷やIEDの垂直爆風を完全に外側へ受け流す「二重V字型車体底面(DVH-A1)」構造を標準採用。ボルト留め式セラミック増加装甲、内面防破ライナー、無人砲塔部への防弾装甲を統合) ※14.5mm重機関銃弾、152mm砲弾の空中炸裂破片、および地雷に対して非常に高い防御力を有する。 |
| Main Armament (主武装) | 1x 30 mm XM914E1 Bushmaster Chain Gun ※アパッチ攻撃ヘリコプター等に搭載されているM230の軽量車載改修型(M230LF)。低空の対空目標やUAV(ドローン)に対して、近接信管付き榴弾(30×113mmB弾)を精密射撃可能。 |
| Secondary Armament (副武装) | 1x 7.62 mm M240B machine gun (30mm砲と同軸装備) 1x SVUL (Stinger Vehicle Universal Launcher) (4連装スティンガー対空ミサイル・ポッド ×1基:計4発のFIM-92 Stingerを搭載) 1x AGM-114 Longbow Hellfire twin launcher (計2発のAGM-114Lを搭載。対空および地上目標への精密誘導に対応) 4x M6 smoke grenade launchers (M6発煙弾発射機 ×4基 ※無人砲塔に統合装備) |
| Engine (エンジン出力 hp/kW) | Caterpillar C7 6-cylinder inline 4-cycle turbocharged liquid-cooled diesel engine (キャタピラー社製 C7 直列6気筒4サイクルターボチャージドディーゼル。 出力: 450 hp (336 kW) ※重量増加に対応するため採用された最新パワーパック。4面のRADA製3次元レーダーや無人対空砲塔、環境空調システムを完全同時安定稼働させるための910アンペア大容量オルタネーターを備える) |
| Max Speed (最高速度: 整地/不整地) | Paved (整地): 96 km/h (運用制限値) Unpaved (不整地): 約 40 km/h 〜 50 km/h |
| Operational Range (航続距離) | 483 km (300 miles) ※車体底面の重装甲化、重武装対空砲塔の搭載、および高出力パワーパック(450馬力)への刷新に伴う共通仕様の標準航続距離 |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
PR:関連商品
画像の引用元
- By KCpl. Minhoh Choi – https://www.dvidshub.net/image/9566639/stryker-crossing-wet-gap-freedom-shield-26, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=186128165



